第一回Tsuku-場:イブニングレクチャー「ポジティブ心理学とキャリア開発」開催(1/30)のお知らせ

10月にオープニングイベントを開催した筑波大学大学院カウンセリングコース・キャリア・プロジェクト(通称TCCP)で、イブニングレクチャーを来月開催いたします。

テーマは「ポジティブ心理学とキャリア開発」ということで、今注目されているポジティブ心理学をキャリア開発に応用して考えるものになっています。

平日夜ではありますが、どなたでもご参加いただけますので、ご興味ある方どうぞお申し込みください。

■日時:1月30日(月) 19:00〜21:00

■テーマ:「ポジティブ心理学とキャリア開発」

■講演者:小玉 正博 (筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)

■会場:筑波大学東京キャンパス文京校舎 120教室

■参加費: 500円

■定員: 50名(※申込者多数の場合には抽選とさせていただきます。)

■お申込方法:こくちーずの「お申込みはこちら」ボタンを押して、応募フォームにお進みいただき、必要事項をご記入ください。

ポジティブ心理学とは、これまでの心理学を「疾病モデル」つまり「何か悪いところを治す」ものだったとしてとらえ、そうではなく人の心のポジティブな面(幸福感、充実感、楽観性等)にフォーカスするものです。提唱者は「学習性無力感」研究で有名なマーティン・セリグマン博士。詳細は下記サイト・動画をご覧ください。

ポジティブ・サイコロジー ペンシルバニア大学公式ウェブサイト

マーティン・セリグマンのポジティブ心理学(TED)
23分程度の講演動画です。日本語字幕。

「人勢塾」 ポジティブ心理学が人と組織を鍛える

「人勢塾」 ポジティブ心理学が人と組織を鍛える

Tsuku-場(つくば)オープニングイベント「場から広がる学びとキャリア」開催のお知らせ

今般、私も参加している筑波大学大学院カウンセリングコース・キャリア・プロジェクト(通称TCCP)で、掲題イベントを開催いたします。このプロジェクトはカウンセリングコースの修了生と教員によるもので、知見と実践を社会貢献に結びつける目的で発足しました。

そのプロジェクトで開催するイベントを「Tsuku-場」(つくば)とネーミング。オープニングイベントとして、キャリアカウンセリングの世界では第一人者である渡辺三枝子先生と、実践の場でご活躍の方々をお招きし、基調講演及びパネルディスカッションを開催します。現在の「キャリア支援」ではどういう問題や課題があるのか、われわれ支援者は何を目指し何を軸として取り組んで行かねばならないか、大学、福祉(生活保護/児童)、行政(少年院)、そして企業といった支援の前線で奮闘されている方々と共有し、考えて行ける場にしたいと思います。

キャリアカウンセリングに従事している方はもちろん、「キャリア支援」というキーワードにご興味お持ちいただいた方はどなたでも、ぜひご参加ください。

大学院サイト掲載の案内文を転載します。(元はPDF)

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この度、筑波大学大学院カウンセリングコース・キャリア・プロジェクト(通称TCCP)では、キャリア支援の場でご活躍の方々をお招きしてTsuku-場(つく-ば)オープニング・イベントを開催いたします。今回は“つなぐ”をキーワードに、現場で対人援助に携わっている方々とその基本的課題と展望についてともに考えながら、理解を深めたいと思います。

◆TCCP とは、Tsukuba Counseling course Career Projectの略で、“はたらく個人ならびに企業や地域社会を対象とした社会への貢献”を活動目標におき、修了生と教員により発足されたプロジェクトです。「キャリア支援」「キャリア・プロフェッショナル人材の育成」「キャリア研究」の3つを主軸に、人的資源の結集・社会的資源の有機的連携を図ります。
◆【Tsuku-場】とは、研究と実践をつなぐ場として「気づく・身につく・結びつく(つく・つく・つく)場」をコンセプトにTCCPの3本柱(「支援」「人材の育成」「研究」)をつなぐ場、参加する人々が作りあげる場を提供するものです。

− 記 −

名 称: Tsuku-場オープニング・イベント 場からひろがる学びとキャリア
日 時: 2011年10月10日(祝)13:00−17:30(開場12:30-)
場 所: 筑波大学 東京キャンパス 文京校舎 134室
http://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_access.html

内 容:
基調講演
[テーマ] カウンセリングの原点と本質
[講演者] 渡辺 三枝子氏(立教大学 教授)
シンポジウム
[テーマ] 学校・福祉・行政と産業を“つなぐ”現場の現状と課題について
[シンポジスト]
<学校−産業> 黒川 雅之氏 高千穂大学准教授
<福祉−産業> 関谷 大輝氏 横浜市北部児童相談所
<行政−産業> 皆川 昭俊氏 電気通信大学特任准教授
<産業−産業> 松岡 保昌氏 (株)キャリアファーム代表取締役副社長
コーディネーター: 岡田 昌毅氏 筑波大学人間総合科学研究科教授

参加費: 無料
お申込: 申込システム “こくちーず” よりお申込ください。
※定員130名 (先着順受付。定員に達し次第締め切らせていただきます)

問合せ: TCCP事務局(tccp_info@human.tsukuba.ac.jp)までお願い致します。

皆さまのご参加をお待ちしております。

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キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し

キャリアカウンセリング入門―人と仕事の橋渡し

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ

JCEJワークショップ「ジャーナリストとキャリア〜あなたの「働く」論を考える」のファシリテーターをつとめました

ご報告が遅れましたが、7月30日に開催された日本ジャーナリスト教育センター(Japan Center of Education for Journalist:JCEJ)さん主催のワークショップ「ジャーナリストとキャリア〜あなたの「働く」論を考える」のファシリテーターをつとめさせていただきました。

以前からブログつながりでお世話になってるJCEJ代表運営委員の藤代さんからお声かけいただき、実施することとなりました。
藤代さんの問題意識はご自身のブログ・ガ島通信の「ワークショップ「ジャーナリストとキャリア あなたの働く論を考える」を行います」にこんな風に書かれています。

ジャーナリストや表現者とキャリアについては、組織内で考えていればよかったこと、それを踏まえて「こうあるべき」といった議論が多かったように思いますが、メディアが多様化した時代、キャリアについては誰もが悩み、気にしている課題だと考えています。

日時・会場・タイムテーブルは下記の通り。

<日時・会場>
7月30日13時30分(受け付けは13時15分)から17時まで。
江東区富岡区民館(東西線門前仲町駅から徒歩)

<スケジュール>
13時15分 開場
13時30分 オリエンテーション、参加者自己紹介
13時45分 イントロダクション「キャリアを考えるヒント」
14時15分 ワークショップ
16時30分 クロージング
17時   会場撤収

当日の内容については、参加者の皆様が詳しいレポートを書いてくださっていて(感謝!)、こちらをお読みいただければ様子をご想像いただけると思いますが、実施者として少々補足を。

レポート記事:
「ジャーナリストとキャリア あなたの「働く」論を考える」を行いました(学生運営委員・木村さんの記事)

「正解」ではなく「ルーツ」を見据える ― 私にとっての「働く」論(サポートメンバー・荒川さんの記事)

自分にとっての、働くことの意味(運営委員・赤倉さんの記事)

「偶然を力に換える」〜「ジャーナリストとキャリア あなたの「働く」論を考える」〜(運営委員・田中さんの記事)

私にとって新鮮だったのは、全員の「働く論」の発表が終わったあと、学生運営委員の方に聞いた感想です。記事の中でもこのように書かれています。

今回のワークショップで印象的だったのは、考えてみれば当たり前かもしれないけど、大人の方がみんなすごく悩んでいたことです。大人も仕事とは何か、社会に価値を生み出せるか、どうしたらわくわくできるのか、知っているのではなくて考え続けながら働いていて、働いてきた経験を通して考え方が変わったり、価値観が変わっていくことを知りました。

そう、社会に出たあとも大人は日々悩んでいるんですよ!(笑) 悩みながら自分なりの解を見つけようともがき、いろいろ試して動いている。いつだって「発展途上」なのです。
大人のこんな率直な姿を見るのも、学生の方に「キャリア」を考えてもらうにはいい素材になるのかな、と改めて思いました。

また、イントロで「キャリアを考えるヒント」として、キャリア・アンカーとプランド・ハプンスタンス(Planned Happenstance)理論を紹介しましたが、かなり皆さんの印象に残った様子で、キャリア業界(?)では常識のような考え方も、世の中ではまだまだ圧倒的に知られていないのだなあと改めて実感。特に「キャリアの8割は偶然」「偶然を力に替えることができる」というプランド・ハプンスタンスの考え方は、田中さんがタイトルで使ってくださったように、実際働きながら様々な経験を積んできた方々にはとても納得感が高かったようでした。

そして、自分の「『働く』論」(働くとは何か、なぜそう思うのか、具体的エピソード)をワールド・カフェ形式で議論しアイデアを広げてもらう、という試みを行ったのですが、特にこういったワークショップが初めての皆さんには合ってるやり方かも、と感じました。肩肘張らずに、他の人の言葉から刺激を受けながら、これまでの自分のルーツや思いを探り、言語化していく。一人でじっくり考えるのももちろんアリだと思いますが、こういうやり方も意外にはまるなあ、と自分でやっておいて何ですが「悪くないじゃん」と少々自画自賛。もちろん各ラウンドでの「問い」はもっとブラッシュアップする必要があると反省しつつ、ソーシャルに自分自身を考える、みたいな感じで、短いけれど濃密な時間になっていたのではと思います。

懇親会の席で田中さんに「自分が何を大切にして働いているかはなんとなくわかったけど、このあとどうすればいいんですか?」と質問されました。
基本的には自己分析のあとは

環境分析(自分の今後の仕事やキャリアに影響を与える環境変化を予測し、対処策を複数考える)

ビジョン作成(3年〜5年後の自分の働く「ありたい姿」を考えてみる。できれば複数)

アクションプラン化(ビジョンを実現に近づけるために、直近1年間で何をするか具体的に行動計画を立てる)

という順序を経ていくことが多いです。このあたりのご案内も、ワークショップ内でしておけばよかったかな、と、これまた反省点。

今後とも個人の活動として、他の団体や組織の方でも、お声かけいただければ、今回のようなショートバージョンからもう少しじっくり時間をかけるものまで、キャリアを考えるお手伝いをさせていただきます。まずはご一報くださいませ。

※ワークショップ内でご紹介した参考書籍及び関連書籍:

キャリア・アンカー〈1〉セルフ・アセスメント

キャリア・アンカー〈1〉セルフ・アセスメント

キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival)

キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival)

その幸運は偶然ではないんです!

その幸運は偶然ではないんです!

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

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  • 作者: ティナ・シーリグ,Tina Seelig,高遠裕子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 475人 クリック: 17,353回
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働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)

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※ワールド・カフェにご興味を持たれた方に:

ワールド・カフェをやろう

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社会心理学者からの提言:非被災者を含む一般市民を対象として(メディア、ネットでの情報収集、噂)

大変な被害を招いた今回の東北関東大震災。被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

地震津波原発事故と三つが重なった甚大災害を前に、被災地の方はもちろんのこと、被災地以外の地域にいらっしゃる方も緊張感の中で落ち着かない日々を過ごされる方が多いと思います。

日本社会心理学会運営の「東北地方太平洋沖地震に関する社会心理学者からの提言」というサイトに、非被災地の方向けに社会心理学の知見を応用した「提言:非被災者を含む一般市民を対象としたもの」というカテゴリがあります。この中からいくつか身近な話題(メディア、ネットでの情報収集、噂)についてピックアップして、ポイントを抜粋してご紹介いたします。(太字強調は管理人)

メディア報道の理解と解釈―近接被災者(ライフラインの断絶程度の比較的軽微な被害を受けた被災者)と非被災地、またはメディア自身へ向けて
小城英子氏(聖心女子大学文学部専任講師)

1.報道の質的・量的限界を想定する

・テレビに映し出されている避難所は、中継車が入れるだけの交通条件が整っている、すなわち、被害が(相対的に)小さく、救援も早かった地域
・同時にもっと甚大な被害があり、救援さえもたどり着いていない地域が存在している
被害の全容がわかるまでは、一部の復旧をすべてと認識してはなりません
惨状は、視聴者の想像を超えたものであることを前提として理解してください

2.テレビを通じた二次的外傷から自分を守る

・二次的外傷とは、直接被災者(家族や家を失うなど、もっとも被害の大きい被災者)の負った心的外傷が、救援やボランティア、取材活動などを通じて、第三者へ拡大していくこと
・テレビを通じた二次的外傷によって、支援すべき立場の人間がつぶれてはならない
・今、非被災地に求められていることは、強力な支援体制。被災地に共感しつつも、テレビを通じた二次的外傷から自分を守り、持続的に支援できる体制を整えることが、非被災地の役割
・緊急事態を脱したら、一日のダイジェストを確認する程度にとどめ、震災報道を長時間見続けないように注意しましょう

3.被害をドラマ化しない

センセーショナリズムは、視聴者の関心を呼び、情緒を煽る効果はあるものの、以下のようにデメリットの方が大きいことが指摘されています。

被害の全容や実態を過大・過小評価するなど、事態に対する正確な理解を妨げる。
・感情的になって、不要な避難行動をとったり、無計画に被災地へ駆けつけて混乱を招くなど、不適切な行動を誘発する。
・ドラマを見ているような感覚に陥り、現実の認識が薄くなる。結果として、被災地支援の動きが鈍ったり、自身の防災対策の甘さにつながる
ナレーションやBGMが画一的な感情を視聴者に強制し、視聴者自身の思考や判断を妨害する。
・被災者自身に対しては、自身もまだ受け入れられていない悲劇が、おもしろおかしくドラマ仕立てにされて、見世物にされているという二重の打撃を与える。

4.防災用品・生活用品の買い占め報道に踊らされない

・メディアは、事実を正確に報道しようとしているのですが、結果的にメディア・イベント(メディア自身が事件を作りだして報じること)となっている

5.復旧期以降こそ支援を

復興の道のりは、複雑で長いのです。メディアも非被災地も、復旧期以降こそ、継続した支援をする覚悟が必要です。今の心の痛みを、5年後も、10年後も、決して忘れないこと。

ネットで情報収集する際に注意したいこと
小林哲郎氏(国立情報学研究所助教

ネット上では自分が見たい情報ばかり見てしまうという事態が生じやすくなっています。これを選択的接触といいます

・人間には自分の先入観に合致する証拠ばかり集めてしまう期待確証の傾向があります

・その結果、ネット上では元々自分が持っていた期待や予想に合致した情報ばかりを集めてしまうことがあります

ツイッターでは自分がフォローしている人の原発事故の現状認識に偏りがあった場合、実際には「危機的な状況ではない」という認識が多数派であったとしても、危機感の極めて強い人々ばかりをフォローしていれば「危機的な状況である」という意見が多数派であると判断してしまいがち

・実際、ネット上では「自分の意見は多数派だ」と思っている人ほど自分の意見を投稿しやすく、「自分の意見は少数派だ」と思っている人ほど自分の意見を投稿しにくい

・人には元々自分が持っていた期待や予想に合致した情報ばかりを集めてしまう傾向があります。不確実な状況では多数派に流されることが多いので、こうした偏った意見分布の認知には大いに注意

・「結局誰が言っていることが正しいのかわからなくなる」のは、人々に判断の知識や能力がないからだけでなく、ネット自体が誰もが発信できるフラットな構造であるため、そもそも「情報の正しさ」を保証するメディアとしては機能しにくい

・ネット上の情報だけで判断し、行動するのは危険

・マスメディアの報道も自分で見て、できるだけバランスのよい情報収集を心掛けましょう。そして何より周りの人たちと冷静に話し合うことが、正確な判断と行動のためには必要


噂に惑わされないために
竹中一平氏岡山短期大学幼児教育学科専任講師)

1.噂(うわさ)とは何か?

・噂=「人づてに聞く本当かどうかはっきりしない情報
・その情報が、噂なのか、クチコミ情報なのか、デマなのかを判断するためには、それぞれにどういう「ラベル」が付いているのかではなく、内容が根拠のある、はっきりとした情報かどうかで判断

2.どういう状況で噂(うわさ)は発生しやすいのか?

・(1)不安が蔓延する社会状況であること、(2)多くの人に共通して関係する重要な事柄について問題が発生していること、(3)あいまいでよく分からない状況であること、の3つが、噂が発生しやすい条件
大規模な災害が発生した後は、このような条件を満たす社会状況となります

3.噂(うわさ)が広がるとはどういうことか?

・「伝達行動による情報の伝達」と「確認行動による情報の伝達」
・噂を広げないためには、確証がない情報を人に「話さない」ようにするだけではなく、安易に人に聞いて「確認しない」ようにすることも必要

4.噂(うわさ)は変化する?

社会心理学の研究の成果から、大きく3つの変化が起こることが分かっています。

1つ目は、情報が伝わるにしたがって、ややこしい説明や理解しにくい部分、話した人が些末だと思った部分などが抜け落ちていきます。これは「平均化」と呼ばれています。
2つ目は、平均化と共に起こる変化で、話の中で使われている数や量、大きさ、特徴、目立つ部分が強調されていきます。これは「強調化」と呼ばれています。
最後の3つ目は、「同化」と呼ばれます。噂は、積極的に伝えたいという気持ちや、よく分からなくて心配だから確認したいという気持ちに裏打ちされて話されます。そのため、噂を話す本人が最も関心を持っている内容に重点が置かれることになります。

話される内容は、話す本人や聞く相手の価値観に沿った形に変化し、本人や相手の興味・関心に近づく形で省略されたり強調されたりし、元の内容からは歪んでいく

5.噂(うわさ)に惑わされないとはどういうことか?

間違った情報を伝えない
・可能なかぎり、確実に確認できるような情報源に問い合わせる
・出来うる限り、正確な情報を得るように努めることで、噂に惑わされない判断が可能になる

・「不安」が強い状況では、人と寄り添い、不安を共有し、安心を得ようとする「親和欲求」が強まる
・会話の中で、「本当かどうかよく分からないんだけれど、こんな話を聞いたんだよね。怖いよね」という内容を含まないように、ほんの少しで結構ですので、心がけていただけると嬉しいです

※詳細はリンク先原文をご確認いただければ幸いです。

「プレイフル・シンキング〜仕事を楽しくする思考法」上田信行

教育工学の専門家で、学習環境デザインとメディア教育についての実践的研究を行っている上田信行先生の著書。

「プレイフル」とは物事に対してワクワクドキドキする心の状態のことを言う。
そのプレイフルな状態を生み出すための思考法が「プレイフル・シンキング」。前向きでエネルギッシュな人も、うしろむきで臆病な人も、このような思考法を身に付けることで誰でもプレイフルになれる。
そこで重要なのは認知の転換。単なる精神論ではなく、認知心理学と学習理論を駆使した理論に裏付けられている。それをやさしい言葉でシンプルにわかりやすく伝えてくれる、こういう書籍は貴重だ。

この本は、その「プレイフル・シンキング」を使った働き方について紹介している一冊。自分の物の見方を加えて転換してみて、プレイフルに思考し、仕事をエンジョイしていくためのヒント集と言える。

グロウスマインドセット(自分は変われるとする心のあり方)を持ち、メタ認知を駆使して自分が納得できる意味を仕事に与えることによって、自分と仕事の関係性をポジティブに変えていくことができるのだという。

「Can I do it?」→「How can I do it?」→「How can we do it?」
と進化させていく。

特に印象的だったのが「心のゲージを自由にコントロールして、環境や状況に対して適応的に振る舞えることが、プレイフルであるということであり、人として成熟しているということ」というくだり。

後半では様々な場の設定の仕方や具体的なツール(post it、ロール紙等)なども紹介されていて、ワークショップ運営者の参考にもなるのではないかと思う。

尚、この本を読んだのは、中原先生が神戸大の金井壽宏先生にツイッターでお薦めしていたのを横から見て。面白そうだったので最初図書館で借りて読み、とても面白く感じたので手元に起きたくなって購入した次第。

■メモ抜き書き

・知識とは他者から与えられるものではなく,自ら創り上げていくもの、つまり「創造」するもの=コンストラクショニスト・ラーニング(構成主義的な学び)

・大人にとっての学びは、日常の職場にある。働くことがすなわち学びといってもいい。

・プロフェッショナルとしての存在価値は、専門的知識や技術をもつことにあるのではなく、むしろそういった蓄積されたものに安住することなく、状況に応じて自分を進化させ、イノベーションを生み出すことにある

・この本は状況に応じてプレイフルに考え、プレイフルに振る舞えるための本

・プレイフルを阻害する心のあり方(キャロル・ドゥエック)

フィックストマインドセット→自分は変われないとする心のあり方
グロウスマインドセット→自分は変われるとする心のあり方

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フィックストマインドセット グロウスマインドセット
   
固定的知能観
「努力しても自分の知能は変わらない」 成長的知能観
「努力した分だけ知能は伸びる」
   
よく見せたい
「できるだけ自分をよく見せたい」 よくなりたい
「難しいことに挑戦してよくなりたい」
   
失敗は過ち
「失敗すると、取り返しのつかないことになる」 失敗は自己投資
「気づきの多い失敗は自分への投資」
   
自己防衛型
「ダメな人間だと思われたくないから難しいことは挑戦したくない」 課題挑戦型
「難しい課題をどうすれば解決できるか考えてみる」

              • -

・コチコチな心から自由になる「メタ認知
物事を俯瞰したり、多角的な視点から眺めてみること

・仕事を面白くする課題設定
言われた通りに課題をこなすのでなく、自分ならどうするかという視点で課題を捉え直してみる。
→あなた自身を変えなくても、自分が納得できる意味を仕事に与えることによって、あなたと仕事の関係性をポジティブに変えていく

Everything is situated.(すべては状況の中にある)

・可能性は状況の中にある
あなたはこの状況をどれだけ活用できるか
他者とどれだけ協働できるか

「How can I do it?」から「How can we do it?」へ

・心のゲージを自由にコントロールして、環境や状況に対して適応的に振る舞えることが、プレイフルであるということであり、人として成熟しているということ

・成果目標と学習目標のバランス
成果目標→成果を上げることを目標に設定
学習目標→結果よりもプロセス、できるだけ多くのことを学びたい

両方をバランスよく持って折り合いをつける→納得のゴール

・長期目標と短期目標
短期→成果目標
長期→学習目標

・体験を経験に熟成
体験の意味を振り返り、その意味を自分の中で構造化したり再構築することで「腑に落ちる」「わかる」といった状態に昇華→経験として身につく

あらゆる場面で「省察」を意識することで、個々の経験から多くのことを学べるようになり、学びのプロセスは確実に深まっていく

省察によって抽象化・構造化された経験は、ある特定の状況だけでなく、他の状況で応用することができる

・一歩を踏み出す勇気
一歩を踏み出せない人→まだ起きていないことへの不安や失敗を先取りした悩みに足がすくんでしまっている人が多い(つまり「取り越し苦労」)

とにかくアクションを起こしてみる

現場に足を運ぶ
紙に書き出す
できることから始めてみる

→あなたが動けば状況は確実に変わる
周囲に何かしらの影響を与える存在になれる

・「分散された知能(distributed intelligence)」
“課題を解決するために必要な知識やノウハウは、一人の個人の頭の中にすべてあるのではなく、状況や道具や人のネットワークの中に分散している”という考え方→協働の重要性

・協働するために必要なのは共感的な理解

・境界線がどこまで広がるか試してみる(testing boundary)
異なる考え方や価値観に出会った時は、否定せずに、まずは受け止めてみる。
そして「自分の考え方に取り入れられるかな」と柔軟に考えてみて、自分の境界線が広がるかどうかを試してみるとよい

■目次

* 序章 プレイフル・エンジンをスパークさせよう
* 第1章 見方を変えれば気持ちも変わる
* 第2章 目標をデザインしよう
* 第3章 足踏みしないでチャレンジしてみよう
* 第4章 形にしないとはじまらない
* 第5章 もっと他力を頼りなさい
* 第6章 人をプレイフルにする環境の力
* 終章 プレイフルな場としてのパーティの可能性

■書評

プレイフル・シンキング(Passion for the future)
#上田先生主催のキッズ・プログラム参加写真あり

上田信行先生の「プレイフルシンキング」を読んだ!(NAKAHARA-LAB.NET)
#東大・中原先生の同じ教育学者という立場からのレビュー。

■参考リンク
上田信行インタビュー(ワークショップの源流を探る読書会)

VALUE VOICE vol.03 Chapter1(NTT東日本)

プレイフル・シンキング

プレイフル・シンキング

「職場学習論 仕事の学びを科学する」中原淳 著

Learning bar(組織学習・組織人材の最先端の話題をあつかう研究者と実務家のための研究会)などで、今教育学の分野で注目を集めている東京大学中原淳先生の最新著書であり初の単著。

実際にデータを分析し、その統計数値も紹介した上で「職場における学習」について明らかにしていく。

統計数値などになじみのない方は、まとめと考察だけを読んでも内容は充分に伝わる。調査手法や質問項目、記述統計も書かれており、学術論文と論述の組み合わせのようになっていて、研究者にもありがたい構成になっている。

個人的に興味深く感じたのは、働く人(主に若年層)の学習には上司のみならず先輩、同僚など、職場の様々な関係性の人達が様々な役割を持っていることを定量的に実証した点。そして、上司の役割として大きいのがピンポイントの精神支援・内省支援であり、業務への支援は同期・同僚などヨコの関係であった点。そして上位者・先輩も内省支援であった点。この点について様々な解釈ができると思うが、私が個人的に感じたのは垂直関係のOJTが成り立たなくなっている現状である。

OJTが盛んに実施されているであろう若年層で、内省支援はともかく業務支援もヨコの関係から支援の実感を感じているというのは、果たして職場の機能として本当に正しいのだろうか。先輩に聞きたいのに聞けず同期間で情報をやりくりしてようやくついて行っている、そんな姿が想像できないか。

現場のOJT任せで本当にいいのか、という問題意識はこれまでもあちこちから議論されていたテーマではあるが、この分析で図らずも「OJT」そのもののあり方を見直す必要性が明らかになったのではないかと感じている。一度解体し、「On the job training」ではない総合的な学習支援のコンセプトを組み立て直すことが今必要だと強く思う。

それから、職場内での成功体験談、失敗体験談の「話し合い」が能力向上に資する、そして組織レベルの信頼が成功体験談、失敗体験談の「能力向上」に対する効果を押し上げるという点。体験談はどうしても「偉い人の訓話」になりがちな中、こういう実証結果があると「一方的に話を聴くだけでなく、話し合いにしましょう」と提案しやすくなり、有り難い。そして「信頼」。信頼がないと、成功例は盗まれて失敗は評価を下げる元になる、ということでそもそも話に出すこともないだろうし、仮に話し合いがあったとしても核心部分は触れないだろう。聞いてる方も「どこまで本当なのか」と思いながら聞いたりして、せっかく聞いたことも受け流し、充分に吟味しないまま話し合いは形式的に終わる、という可能性は大きいと思われる。

職場での能力向上支援をより有効にするために効果的な信頼と互恵性をどう獲得するのか。従業員満足度調査の結果が低調な場合、たいていはこの二つも低いものと経験的に推測される。お互い信頼がなく、フリーライドされる被害者意識で疑心暗鬼になっている職場。マネージャー一人の奮闘で変わるものではないだろう。ではどうしたら。

正直、これに対する解は今持ち合わせていない。ただ、ヒントになるのは「裸踊りの二人目」かもしれない、と今ぼんやりと考えている。「裸踊り」とは鳩山前首相の発言で一躍注目されたTEDでのデレク・シヴァーズ講演「社会運動はどうやって起こすか」のことである。

リーダー一人だけの状態では運動は広がらない。しかし、フォロワーが現れると、三人目以降はばっと広がっていく。これまでの施策では各組織のリーダーだけにアプローチすることだけがなされてきた印象がある。それでは限界があることは明らかで、今後はフォロアーも作り出す施策、研修で言えば二人同時に受けてもらうような、そんな方法を考えてみるというのはどうだろう。それから、全員の意識を変える事は難しいので、何人かオピニオンリーダー、空気を動かすリーダーになる人に信頼と互酬性がインセンティブになるようなことを試してみる。そうやって仲間を増やしていくことで、プラスのスパイラルに転換するということを考えてみた。

もちろんこれは机上の論理で、実践は行っていないため効果がどのくらいあるかは未知数だが、従来のマネジメント論やリーダーシップ論は行き詰まっていることを前提として、違うアプローチを試す時期に来ているのだと思う。

最後に、巻末で新たな研究領域として挙げられている「職場外の学習」も個人的に非常に興味深い分析だった。
「日々の仕事の中でかかわりの深い人についての回答で、「職場の人」と「社外の人」両方をあげている人は「視野の拡大」が進んでいる、つまり、視野拡大をもたらすためには職場内外の異質な他者と出会い、対話することが重要なのではないかと推測できる。」という知見は、自分の組織でのソーシャルネットワーク研究ともつながる内容であり、引き続き追いかけたい。

                          • -

以下、自分用のメモとして主に6章のまとめから概要を抜き出すが、職種別の支援・能力向上のデータ分析などもされているので、興味のある方は別途お読みいただければ。

◆筆者が本書で最も主張したかったこと(「第6章 『職場における学習』を振り返る」より)

人材育成、いや、人間の学習や成長に対する<他者>の重要性
自己に完結せず<他者>に開かれていること、<他者>の介入やつながりの中にあることで、私たちは成長できる

◆リサーチクエスチョン(この研究で明らかにしたいこと)

1) 人は職場で、どのような人々から、どのような支援を受けたり、どのようなコミュニケーションを営んだりしながら、業務能力の向上を果たすのか。

2) 職場における人々の学習を支える他者からの支援やコミュニケーションに影響を与える、職場の組織要因とはどのようなものか。

◆本書における用語定義
「他者」→仕事を達成する中で関与のある人
上司、上位者・先輩、同僚・同期、部下、社外の顧客、協業者、勉強会・交流会で出会った人々 等

「学習」→経験によって、比較的永続的な認知変化・行動変化・情動変化が起こること

「支援」→何らかの意図をもった他者の行為に対する働きかけであり、その意図を理解しつつ、行為の質を維持・改善する一連のアクションのことをいい、最終的な他者のエンパワーメントをはかること

「職場」→責任・目標・方針を共有し、仕事を達成する中で実質的な相互作用を行っている課・部・支店などの集団

◆結果

◎どのような支援を受けているか
「業務支援」業務に関する助言・指導
「内省支援」折に触れ、客観的な意見を与えたり、振り返りをさせたりすること
「精神支援」折に触れ、精神的な安らぎを与えたりすること

◎どのような能力を向上させているか
「業務能力向上」「他部門理解向上」「他部門調整能力向上」「視野拡大」「自己理解促進」「タフネス向上」

◎どのような他者からどのような支援を受けているか

・能力向上に資する支援

上司→精神支援、内省支援
上位者・先輩→内省支援
同僚・同期→内省支援、業務支援

※人は職場で様々な人から様々な支援を受けて成長する
※上司の機能は経験学習のファシリテータとストレスマネジメント

◎支援を可能にする組織要因とは何か

互酬性規範(困ったときにお互い助け合っている、他者を助ければ今度は自分が困っているときに誰かが助けてもらえるように自分の職場はできている といった規範)

※異種混合の支援を可能にするのは分かち合い・助け合いの風土

◎職場内のコミュニケーションは「能力向上」にどのような影響を与えるのか、またそれは職場の風土のどのような影響を受けるのか

・成功体験談、失敗体験談の語り合いがいずれも「能力向上」に資する
・組織レベルの信頼が成功体験談、失敗体験談の「能力向上」に対する効果を押し上げる
・組織レベルの互酬性規範の成功体験談、失敗体験談に対する効果は限定的

※1×1の支援行為は助け合いや協力の程度といった互酬性規範がメンバー間に共有されているかが重要
※n×nの職場内の情報共有は職場メンバー間の信頼が重要になる

職場学習論―仕事の学びを科学する

職場学習論―仕事の学びを科学する

内容紹介

人生の多くの時間を費やす職場での学びが人間形成に果たす役割は大きい.アンケート調査とヒアリング調査によって得られたデータに実証的アプローチを施すことで,これまで見過ごされ,印象論でしか語られてこなかった職場の学習プロセスに寄与する要因を解明する.

主要目次

序章 職場の中の学習をとらえる

第1章 「職場における学習」の背景をさぐる
1.1 本書の社会的背景/1.2 本書の理論的位置づけ/1.3 研究の枠組みとリサーチクエスチョン/1.4 調査データと分析対象/1.5 第1章で明らかになったこと:職場における学習の意義

第2章 職場における他者からの支援
2.1 他者からの支援/2.2 誰からどんな支援を得るのか?/2.3 職種と他者からの支援/2.4 第2章で明らかになったこと:支援3つの柱

第3章 職場における能力向上
3.1 能力向上の構造/3.2 能力向上の実態:職種による違い/3.3 第3章で明らかになったこと:職場における能力向上

第4章 誰からのどのような支援が能力向上に資するのか?
4.1 分析の前に/4.2 分析1:誰からの支援が能力向上に資するのか?/4.3 分析1のまとめ:誰からのどのような支援が能力向上に資するのか?/4.4 上位者・先輩、同僚・同期からの支援に影響を与える組織要因/4.5 第4章で明らかになったこと:3つの支援と能力向上の関係

第5章 職場コミュニケーションと「能力向上」:業務経験談に着目して
5.1 職場における学習リソースとしての業務経験談/5.2 業務経験談に影響を与える組織要因/5.3 分析の前に/5.4 分析/5.5 分析結果/5.6 分析結果のまとめとマネジャーの振るまい/5.7 第5章で明らかになったこと:業務経験談と能力向上の関係

第6章 「職場における学習」を振り返る
6.1 本書の問いを振り返る/6.2 本書の理論的貢献/6.3 新たな研究領域の萌芽:職場外の越境学習の解明に向けて/6.4 結びにかえて

あとがき/参考文献/索引

今年も大学院クラスメートの祥月命日がやってきた

一昨年乳ガンで亡くなった大学院クラスメートの祥月命日に、ご家族に花束を送ったという報告がクラスのMLで流れてきた。そろそろ命日だったかな、と思いつつ何もアクションを起こしていなかったが、他の人が動いてくれていて感謝。

旦那様からメールで届いたお礼をMLで転送されていて読む。

四十九日にお送りした写真をまとめたアルバムを、今も時折眺めてくださっているとのこと。
「妻も良い方々に囲まれて成長を求めることができ、最期まで充実した日を送れたと、私も改めて一層感じております。」との言葉にまた涙。

健康な体で朝起きて会社に通い働く毎日をつい当たり前だと思ってしまうが、この時期になるとそれはとても幸運なことなのだと改めて思い知らされる。私の父も年初にガンで手術をして、一時は別れを覚悟した。死に直面して初めて生きることについて正面から考えられるものなのかもしれない。

2年前の修論中間発表会で黙祷から始めてもらったこと、終了後某所にて自殺アフターケアを担当しているクラスメートに進行役をやってもらいデブリーフィング(心理的振り返り)を行ったことなどが昨日のことのように思い出される。

告別式の日もこんな青空だった。
ちゃんと生きてる?
そんな問いかけをされてるように感じる秋の日。