東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week7「キャリアパスを考える1〜大学教員としてのあり方〜」メモ

インタラクティブティーチング」week7、今回は配信開始直後に講座を視聴し、早々にテストに進んで受講メモまでまとめることができました(やればできる!)。気がつくと残り1回。名残惜しい気がします。

week7のテーマは「キャリアパスを考える1〜大学教員としてのあり方〜」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

●大学の現状などは大学教員の友人たちから(かなり生々しい話も含めて)いろいろ聞いていたり、日常追いかけることが多い話題なので、おさらいとして拝聴。(ただし印象論ではなく数字などのデータで押さえておくことは重要)

●「大学教員には、教育、研究、管理運営、社会貢献の4つの職責があり、おかれた状況によってそれらのバランスは変化する」「教員として求められることが変化してきている」という説明を聞き、自分自身が学部生として在学した時代の記憶は過去のこととして置いておいた上で現状を正しく認識し、これからのあるべき姿を考えるべきだと改めて思った。

●「キャリアパスを考えるツールとしてのポートフォリオ」が具体的にどんなものになるのか、本業からの興味として次回に期待したい。(大学教員に限らず考え方を応用できそうなので。)

●スキル編のテーマは「クラスルームコントロール」。ひとつひとつの具体的アドバイスが非常に実用的だと感じた。

特に

・目線によるコントロールで「私はあなたを認識してますよ」というサインを出し続けること
・学生の反応に敏感であるために、講義の前に集中して、自分の内面に目を向ける時間を取るということ
・相手の反応を見るの、自分の表情が相手に移っているか、息が自分と相手がシンクロしているかどうかということがポイントになるということ
・全員が非協力的な場合でもこちらが粘り強くリアクションを求めていく、挙手は有効であること


こういったあたりはすぐに実践で活用できそうである。

●ストーリー編は、少し前はワークショップ論、最近ではMOOCでおなじみの東大・山内先生。MOOC・反転授業の歴史と意味合い、それを踏まえた大学の今後の役割について、コンパクトにわかりやすくお話いただけた。

以下特に印象に残った言葉。

・元々存在していたオープンコースウェア(OCW)とMOOCの違い
「(OCWは)あくまで授業資料を公開してる。授業そのものをオープンにしてた訳じゃない。それに対してMOOCは実際に掲示板でディスカッションしたりテストで評価したり最後合格したら修了書も出るということで、非常に授業に近い形の教育サービスがオンラインで無料で公開されたというところに非常に大きいポイントがある」

・大学はどんな風になっていくのか、という問いに対して
「何を教えたっていうよりもどういう人が育っているかということがすごく問われる時代になってくる」

・受講者へのメッセージとして
「学習者に対しちゃんとインタラクティブに支援をしてアウトカムも保障するっていうときに一番大事なのは、学習者をみとること」
「何か育ててるプロセスそのもの、何か変化していくことがその場で見えてくるわけだから、実はインタラクティブティーチングって楽しい。楽しめばそんな苦にもならない。その楽しさをわかってもらうことがすごく大事」

●次回Week8は「キャリアパスを考える2〜ポートフォリオの利用〜」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

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7-1. イントロ
7-2. ナレッジ(1)変わりゆく大学

目的
大学教員として今求められることを理解し、そのあり方について考えることができる

到達目標
1.日本の高等教育の概要を説明できる
2.大学教員としての責務を4つ挙げ説明できる
3.現在の活動の俯瞰と今後の展望をおこなうツールとしてのポートフォリオの特徴について説明できる

1.日本の高等教育

高等教育機関
・国公私立大学(大学院含む)
・短期大学
高等専門学校
・専門学校

文科省が調査しているのは大学・短大・高専

大学数 782

国立 86
公立 90
私立 606 私立77.5%

学生数 286万人
教員数 18万人

全入時代
大学への進学希望者が進学先を選り好みしなければ、どこかには入れる状態

大学進学率 約50%
1990年から比べると約2倍

OECD平均 62%

大学が多すぎるという議論があるが、進学率という観点から見るとそうとも言い切れない

現代の大学をとりまく環境の変化
進学率上昇、技術進歩、教育への関心の高まり

大学が対応すべきこと
・多様な学生&学生の質的変化
・学習環境の変化、多様性
・説明責任、質保証

現代の大学は質的な変化を求められている

7-3. ナレッジ(2)大学教員のあり方

1.大学教員という仕事

教育
研究
管理・運営
社会貢献

所属機関、専門領域、キャリアステージによって四者のバランスは異なる

これまでは研究重視でした

<今求められていること>
教育者としての資質とその質保証も
教員自身がACTIVE LEADERであること

・ファカルティ・ディベロップメントの義務化(←法令で義務化されている)
・多角的評価
・採用時の判断方法の変化

大学教員には、教育、研究、管理運営、社会貢献の4つの職責があり、おかれた状況によってそれらのバランスは変化する
教員として求められることが変化してきている


7-4. ナレッジ(3)目指す大学教員像を考える

1.大学教員をめざす

1)これまでの活動の振り帰りと俯瞰・構造化
2)目指すものの明確化
3)長期・短期目標の設定

2.キャリアパスを考えるツールとしてのポートフォリオ

・対象とする活動全体を多角的に俯瞰する
・根拠に基づいた記述を行う

高等教育におけるポートフォリオ

作成目的
学生 学習の定着、学修成果の可視化 (ラーニング・ポートフォリオ)
教員 改善、多角的業績評価、情報共有 (アカデミック・ポートフォリオ)
職員 改善、人材配置 ex.愛媛大学 (スタッフ・ポートフォリオ)
機関 説明責任、評価 (機関・ポートフォリオ)


教員の作成するポートフォリオ
ティーチング・ポートフォリオ
・アカデミック・ポートフォリオ

振り返りのツールとしての特徴
・振り返りを促す構造と作成方法(業績の単純な集積ではなく、俯瞰と構造化)
・文書やチャート等にまとめて可視化

キャリアパスを考えるツールとして
・現在の活動の整理、価値づけ、構造化、可視化
・理想とする状態の明確化
・長期・短期目標の設定
・改善への気づき


7-5. ナレッジ(4)ディスカッション:理想の大学教員像

目標
大学教員としての活動のうち理想とする「教育」と「研究」の関係について考える

Question
あなたの理想の教育と研究の関係をどのように考えますか?二者を円に見立て、両者の大きさのバランス、重なりに注意して描いてみましょう


7-6. 振り返り
7-7. スキル:応用編2:質疑応答(2)

テーマ
クラスルームコントロール

Q.リーダーの見分け方

A.リーダーは常に全体を気にしている。座り方で言うと斜め。体の開き方。
クラスが始まる前にリーダーを観察しておく 一番アクションや声が大きい 一番目線が向かってる人間 難しいときは講座に入ってお互い話し合ってもらってその時の雰囲気で見る

Q.全員が非協力的な場合はどうするか

A.そういったときもこちらが粘り強くリアクションを求めていく
挙手は有効。どちらかに必ず手を挙げてくださいと
そこから徐々にみなさんの気持ちをほぐしていく

一人目を味方につけてネットワークを作っていく

最初に絶対手を挙げさせる 参加させる

Q.リーダーの周りにいる人の発言を引き出すには

A.リーダーの顔色を気にしているので難しい場合もある
目線で安心させる リーダーに発言されてしまっているメンバーに目線を移して安心させる
休憩中 リーダーと離れた瞬間にちょっとした声かけをしてあげる

Q.物理的に教員が学生に近づくのが難しい場合は

A.目線によるコントロール
3列目と思ったときにしっかり3列目を見る
歩くというのは行動だけど、歩く意識が空間を作る
自分もこの空間の中に存在するんだという意識を持ってもらう

私はあなたを認識してますよというサインを出し続ける

Q.学生の反応のチェックの仕方

A.体の向き 自分に好意を持っているのかネガティブなのかが伝わってくる
目線の合う合わない 表情 微妙なサインを感じられるマインドにしておくのが大事
講義の前に集中して、自分の内面に目を向ける時間を取る

ひとつ鉄板を持てるとやりやすい

どん引きを恐れない→「すばらしいサイレントムービーを見ました」

大事なのは自分の表情が相手に移っているか
息が自分と相手がシンクロしているかどうか

Q.寝てる人がいるとき、ガヤガヤしているとき

A.「最後までおしゃべりしている人は講義に協力していただきます」というと静かになる
必ずそういう人たちにもスポットを当てて参加しやすいような状況に持ってくる
こういったアクティブ・ラーニングをするときは、全員がここに参加しているんだというモードをどこまで作れるか


7-8. ストーリー(1)MOOCと反転授業−大学はどうなるか

東京大学大学院 情報学環 学際情報学府・教授 山内祐平先生
http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/profile.html

専門→高度に情報技術が発達した場所での学習

MOOCの発展
2011年の秋にスタンフォード大学の教授たちが自分たちの授業をネットで公開したらどうなるだろうって実験した

人工知能のコースの授業で世界中から16万人集まって400位以内にスタンフォードの学生が一人も入らなかった

教育がオンラインを使えば国境を越えるというのがわかったので2012年の春にCourseraとかUdacityとかそういうものが立ち上がってきた

テニュアポストを投げ打って教授たちが作った
社会的使命 大学レベルの知恵をこれぐらい世界中の人が求めてるんだって

コーセラのパートトランスカンファレンスに行ったとき非常に印象に残ったのはみんなミッションって言ってる
宗教的なバックボーン ある意味使命感
大学っていうのは社会の中に位置付いていて社会で求める知をみんなで分かち合おうっていう やっぱりこれがMOOCの一番根本にある考え方だと思う

(中原先生:それ以前にもネットで授業を出しましょうみたいな話があったと思うけど、それとMOOCとの違いは?)

2000年代初頭にMITがオープンコースウェアっていうのを始めて、授業映像とかシラバスとかテストみたいなものをネット上に公開するみたいなことを10年以上やってきた
あくまで授業資料を公開してる
教育サービスである授業そのものをオープンにしてた訳じゃない
それに対してMOOCは実際に掲示板でディスカッションしたりテストで評価したり最後合格したら修了書も出るということで、非常に授業に近い形の教育サービスがオンラインで無料で公開されたというところに非常に大きいポイントがある

履修証は大きい

スタンフォードの教員がベンチャーとして立ち上げるときにスタンフォードはむしろ反対した 大学は証明書を出すっていうのが大学の仕事だと思ってるんで 教員とか企業が出すものじゃないっていうふうにたぶん思ってた

(中原先生:反転授業ってどういう経緯で出てきた言葉なのか)

反転授業って言うのはflipped classroomとflipped teachingの訳

今までの普通の授業 授業中に基本的な知識を習得した上で応用的な問題演習みたいな話は宿題でやってきてくださいっていう

これがネットで学ぶことが民主的にがーッと広まっていったので今まで教室でやっていた基本的な知識を習得する部分は自宅でオンラインで予習してきてくださいと 難しい応用課題は一人でやってたけど本当はお互いに助け合ったり先生がヘルプに入った方がよりよく学べるはずなのでこっち側を教室に持ってこようってことで教室の役割と自宅の役割がひっくり返るので「反転授業」って言われるようになった

基本的には応用的な課題をインタラクティブでやるということになる

(中原先生:こういう時代になると大学の役割、大学は今後どうなっていくのかっていうのが大学人としては気になるところなんですがそれはどうですか)

ひと言で言うとオンラインの学習がどんどん広がっていくとオンラインでできることはオンラインでやって 対面の特性が一番生きることを対面でやって そういうある種ハイブリッドサービスにだんだんなっていくんじゃないかと思います

で知識習得寄りのところはオンラインである程度できるので すごいコストのかかる対面は対面じゃなきゃできない 非常に密度が高くってかつそういうので初めてできるような たとえば物事を深く学ぶであるとか新しい付加価値をつけるような創造力をつけるとかそういう今社会で求められている高次な能力育成の方にシフト

でもそういうことをやろうとしたら知識も必ず必要なので知識習得が要らなくなるというわけじゃなくて それはある程度オンラインでやってといった形でだんだんサービスがハイブリッドになっていくんじゃないかと思います

(中原先生:大学といってもいろんなところがありますが、こういう総合研究大学みたいなのはどんな形式になっていくんでしょう やっぱり探求とか研究中心に?)

探求、研究っていうときにいままでだと専門でコースがバッシリ決まってた そういうのよりはもう少し自由度があって 例えば別のオンラインプログラムとか別の体験プログラムである程度の単位をとってくるとかカリキュラムがだんだんフレキシブルになっていって最終的には4年間かけてそれなりの人を育てられるかどうかっていうところがすごく問われるようになるんじゃないか 何を教えたっていうよりもどういう人が育っているかっていうことがすごく問われる時代になってくるんじゃないか

まさに達成度 アウトカム評価っていわれる そっちが重視されるようになる

(中原先生:そういうときに大学教員の役割というのは変化していくんでしょう)

大学教員のすごく大事な側面として専門性があるってことがある それは絶対これからも大事にしていく必要があるけど 今までは専門性があればそれをきちんと説明できればティーチングになってきたけどこれからは自身の専門性プラスインタラクティブに学習を支援することができる で学びをみとってその人のアウトカムにつなげることができるっていうもうひとつの専門性がある つまり専門性が二重になるっていうことが大学教員だけでなく教員全般で非常に重要になってくるんじゃないか

インタラクティブティーチングって小学校の先生はこの専門性ってすごく問われるところだと思うけど、大学の教員も小学校の先生並みのそういう能力を求められるようになってくるんじゃないかな

<メッセージ>
学習者に対しちゃんとインタラクティブに支援をしてアウトカムも保障するっていうときに一番大事なのは 学習者をみとることだと思ってる 学習者が今どういう状況でどういう手だてを打てばどういうふうに変わるかってことをきちんと見てちゃんと判断してちゃんと手が打てる しかもそれが短期的なことだけじゃなくて3年間4年間積み上げていくってことが大事
すごい大変だと思うけどこれってけっこう楽しい
何か育ててるプロセスそのものなので 何か変化していくことがその場で見えてくるわけだから 実はインタラクティブティーチングって楽しい そうやってインタラクティブティーチングすることを楽しんでもらうって大事かなと思ってて 楽しめばそんな苦にもならない その楽しさをわかってもらうことがすごく大事

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