「プレイフル・シンキング〜仕事を楽しくする思考法」上田信行

教育工学の専門家で、学習環境デザインとメディア教育についての実践的研究を行っている上田信行先生の著書。

「プレイフル」とは物事に対してワクワクドキドキする心の状態のことを言う。
そのプレイフルな状態を生み出すための思考法が「プレイフル・シンキング」。前向きでエネルギッシュな人も、うしろむきで臆病な人も、このような思考法を身に付けることで誰でもプレイフルになれる。
そこで重要なのは認知の転換。単なる精神論ではなく、認知心理学と学習理論を駆使した理論に裏付けられている。それをやさしい言葉でシンプルにわかりやすく伝えてくれる、こういう書籍は貴重だ。

この本は、その「プレイフル・シンキング」を使った働き方について紹介している一冊。自分の物の見方を加えて転換してみて、プレイフルに思考し、仕事をエンジョイしていくためのヒント集と言える。

グロウスマインドセット(自分は変われるとする心のあり方)を持ち、メタ認知を駆使して自分が納得できる意味を仕事に与えることによって、自分と仕事の関係性をポジティブに変えていくことができるのだという。

「Can I do it?」→「How can I do it?」→「How can we do it?」
と進化させていく。

特に印象的だったのが「心のゲージを自由にコントロールして、環境や状況に対して適応的に振る舞えることが、プレイフルであるということであり、人として成熟しているということ」というくだり。

後半では様々な場の設定の仕方や具体的なツール(post it、ロール紙等)なども紹介されていて、ワークショップ運営者の参考にもなるのではないかと思う。

尚、この本を読んだのは、中原先生が神戸大の金井壽宏先生にツイッターでお薦めしていたのを横から見て。面白そうだったので最初図書館で借りて読み、とても面白く感じたので手元に起きたくなって購入した次第。

■メモ抜き書き

・知識とは他者から与えられるものではなく,自ら創り上げていくもの、つまり「創造」するもの=コンストラクショニスト・ラーニング(構成主義的な学び)

・大人にとっての学びは、日常の職場にある。働くことがすなわち学びといってもいい。

・プロフェッショナルとしての存在価値は、専門的知識や技術をもつことにあるのではなく、むしろそういった蓄積されたものに安住することなく、状況に応じて自分を進化させ、イノベーションを生み出すことにある

・この本は状況に応じてプレイフルに考え、プレイフルに振る舞えるための本

・プレイフルを阻害する心のあり方(キャロル・ドゥエック)

フィックストマインドセット→自分は変われないとする心のあり方
グロウスマインドセット→自分は変われるとする心のあり方

      • -

フィックストマインドセット グロウスマインドセット
   
固定的知能観
「努力しても自分の知能は変わらない」 成長的知能観
「努力した分だけ知能は伸びる」
   
よく見せたい
「できるだけ自分をよく見せたい」 よくなりたい
「難しいことに挑戦してよくなりたい」
   
失敗は過ち
「失敗すると、取り返しのつかないことになる」 失敗は自己投資
「気づきの多い失敗は自分への投資」
   
自己防衛型
「ダメな人間だと思われたくないから難しいことは挑戦したくない」 課題挑戦型
「難しい課題をどうすれば解決できるか考えてみる」

              • -

・コチコチな心から自由になる「メタ認知
物事を俯瞰したり、多角的な視点から眺めてみること

・仕事を面白くする課題設定
言われた通りに課題をこなすのでなく、自分ならどうするかという視点で課題を捉え直してみる。
→あなた自身を変えなくても、自分が納得できる意味を仕事に与えることによって、あなたと仕事の関係性をポジティブに変えていく

Everything is situated.(すべては状況の中にある)

・可能性は状況の中にある
あなたはこの状況をどれだけ活用できるか
他者とどれだけ協働できるか

「How can I do it?」から「How can we do it?」へ

・心のゲージを自由にコントロールして、環境や状況に対して適応的に振る舞えることが、プレイフルであるということであり、人として成熟しているということ

・成果目標と学習目標のバランス
成果目標→成果を上げることを目標に設定
学習目標→結果よりもプロセス、できるだけ多くのことを学びたい

両方をバランスよく持って折り合いをつける→納得のゴール

・長期目標と短期目標
短期→成果目標
長期→学習目標

・体験を経験に熟成
体験の意味を振り返り、その意味を自分の中で構造化したり再構築することで「腑に落ちる」「わかる」といった状態に昇華→経験として身につく

あらゆる場面で「省察」を意識することで、個々の経験から多くのことを学べるようになり、学びのプロセスは確実に深まっていく

省察によって抽象化・構造化された経験は、ある特定の状況だけでなく、他の状況で応用することができる

・一歩を踏み出す勇気
一歩を踏み出せない人→まだ起きていないことへの不安や失敗を先取りした悩みに足がすくんでしまっている人が多い(つまり「取り越し苦労」)

とにかくアクションを起こしてみる

現場に足を運ぶ
紙に書き出す
できることから始めてみる

→あなたが動けば状況は確実に変わる
周囲に何かしらの影響を与える存在になれる

・「分散された知能(distributed intelligence)」
“課題を解決するために必要な知識やノウハウは、一人の個人の頭の中にすべてあるのではなく、状況や道具や人のネットワークの中に分散している”という考え方→協働の重要性

・協働するために必要なのは共感的な理解

・境界線がどこまで広がるか試してみる(testing boundary)
異なる考え方や価値観に出会った時は、否定せずに、まずは受け止めてみる。
そして「自分の考え方に取り入れられるかな」と柔軟に考えてみて、自分の境界線が広がるかどうかを試してみるとよい

■目次

* 序章 プレイフル・エンジンをスパークさせよう
* 第1章 見方を変えれば気持ちも変わる
* 第2章 目標をデザインしよう
* 第3章 足踏みしないでチャレンジしてみよう
* 第4章 形にしないとはじまらない
* 第5章 もっと他力を頼りなさい
* 第6章 人をプレイフルにする環境の力
* 終章 プレイフルな場としてのパーティの可能性

■書評

プレイフル・シンキング(Passion for the future)
#上田先生主催のキッズ・プログラム参加写真あり

上田信行先生の「プレイフルシンキング」を読んだ!(NAKAHARA-LAB.NET)
#東大・中原先生の同じ教育学者という立場からのレビュー。

■参考リンク
上田信行インタビュー(ワークショップの源流を探る読書会)

VALUE VOICE vol.03 Chapter1(NTT東日本)

プレイフル・シンキング

プレイフル・シンキング