「ガラスの天井」破るのか無視するのか、そもそも管理職ってそんなにいいものか

リクルートワークス研究所の調査レポートより。

続ワーキングパーソン調査の森 その3 女性における「ガラスの天井」発生の構図

女性の昇進には「ガラスの天井」があるといわれている。事実、日本では管理職に占める女性の割合は係長相当でも8%あまりで、国際的に見ても低水準だ(2003年度女性雇用管理調査/厚生労働省)。企業側は女性を管理職に登用しない理由として、勤続年数やライン経験など管理職に必要な形式的要件を満たしていないこと、判断力、企画力、部下の指導力といった管理職に必要な能力が備わっていないことを挙げている。本当に女性は管理職が務まる能力を欠いているのだろうか。

のっけから挑発的。というか、それってニワトリと卵のような気がしなくもないのだが、まずは読み進めよう。

保有能力の男女差は、年齢別に見るとどこで大きくなるのだろうか。図Bは「専門知識」と「技術やノウハウ」を「十分持っている」と答えた人の比率の推移を、20代から50代まで5歳刻みでグラフにしたものだ(18〜24歳のみ対象者が少ないため7歳を一区切りとした)。特に30代において男性の比率が急激に高まるのに対し、女性の比率は伸び悩んでいることが分かる。

ただ、保有能力の男女差の原因を、会社が女性に機会を与えていないことだけに帰するのは無理があるだろう。実際20代から30代にかけて出産や育児で仕事の場を離れ、その間能力を伸ばせない女性が増えるという面もあるだろうし、女性自身が「どうせ結婚・出産で仕事は辞めるし、出世も望んでいない。能力開発はほどほどでいい」と考える場合もあるだろう。Bさんも「女性側にも問題はある。正直にいえば私も責任を回避し、現状に甘えている部分もありました」と告白する。「会社は結婚や育児で女性のキャリアが終わらないように道を作り、一方で女性側はロールモデルとなる人が範を示していかなくては。双方が少しずつ努力を積み重ねることが大事だと思います」

差が開くこともそうだが、そもそも自己評価がなぜこんなに離れるのかが問題だとも思う。なぜ彼女たちはこんなにも「自分は能力がない」と思いながら働かなければならないのか。
そんな女性たちはマネジメント系の能力よりも専門知識を伸ばしたいと思う。ある意味当然ではないだろうか。

職位別に「あなたの仕事には、どの能力が求められるか」も聞いている(図E)。より上位の職位ほど、「対課題能力」「対人能力」を挙げる人が増えている。つまり、伸ばしたい能力が「専門知識」に偏っている女性よりも、「対課題能力」「対人能力」にも目配りする男性の方が、管理職に求められる能力の方向に沿っているといえるだろう。「やはり30代以上の年齢で会社に貢献しようとするなら、専門知識よりもマネジメント力やコミュニケーション力です。組織が機能するうえで、欠かすことができない能力ですから」とAさんもいう。

なぜ女性の伸ばしたい能力は「専門知識」に偏ってしまうのだろうか。Bさんは「専門知識やスキル、資格などがあれば、今の会社を辞めて再就職する際に、有効な『武器』となります。求人情報を見ても専門性を重視した募集が多いし、マネジメント能力を女性に求める企業は少ない気がします」。Bさん自身、公認会計士の資格を取得しようと昨年から専門学校に通っているという。

結局この調査からは目標をマネジメントに置く男性と、「職を切らさないこと」に置く女性の違いというものが見えてくる。そもそも天井に頭をぶつける以前の問題ではないか。

男女の保有能力は30代で大きな差がつき始めること、女性が身に付けたい能力が「専門知識」に偏り、管理職に求められる能力とミスマッチを起こしていることが、今回の分析から明らかになった。こうしたことが、結果として女性の管理職登用を阻む「ガラスの天井」を生むことにつながっているのではないだろうか。だがその背景には、女性がマネジメント能力を伸ばす機会の提供に企業側が消極的であること、家庭責任の負担が女性に偏っているのに、仕事と両立できるような仕組みが整っていないことがあると、インタビューからは見て取れた。

女性でもマネジメントをしたい人はできればいいし、男性だからってマネージャーにならなきゃいけないわけじゃない。本来の意味でのダイバーシティがもっと根付いていけば、性差ではなく個人差だと考えられるように思うのだが、まだ道は通そう。