授業で「老人体験」

生涯発達臨床心理学2(老年心理学)の授業の課題で、「老人体験」グッズを装着して感想をレポートにまとめる、というものがある。昼間やらないと危ないと言われたので、クラスメートとペアになって土曜に待ち合わせし、体験してみた。

私たちが使ったのは「まなび体-高齢者疑似体験セット」。
装着したのは以下のもの。

  • 上着:重りなどをつけ、背中に「体験学習中」の文字を表示。
  • 上着左右胸用重り(2ケセット):胸にマジックテープで貼り付ける
  • 上着左右ポケット用重り1kg(2ケセット):ポケットに入れる
  • ひざサポーター:ひざにつけて関節の動きを制限する
  • キャストシュー:片足の靴がわりに履く重り入りの履物
  • 耳栓:難聴を再現
  • 高齢者疑似体験眼鏡:老人性白内障体験と視野狭窄体験のための半透明フィルム+黄色フィルムを入れたゴーグル
  • ひじサポーター:腕につけて関節の動きを制限する
  • セット手袋:空気を入れて末梢神経感覚マヒを再現
  • 杖:歩行時に使用

本当は外に出て、電車に乗ったり買い物をしたりということを試してほしいようなことを言われていたが、当日はあいにくの雨だったため学内を散策。試してみたのは以下のこと。

  • 廊下を歩く
  • エレベーターを使って図書館に行く
  • セキュリティカードでドアを開ける
  • 書架の本を見てみる
  • 階段を登る
  • 傘をさして表を歩く
  • 自動販売機で何かを買う

しかしこれがもう大変。
重りで自然と身体が前かがみになり、サポーターで手足の動きも制限されて、とにかく動きがスローモーになる。また耳が聞こえないので後ろからの物音がまったくわからず、追い越されて初めて人がいたことに気づく。そして視野がぼやけて狭いので、普通に明るいはずの場所も薄暗くぼんやりとしているし、文字もものすごく読みにくい。さらには手袋で指先の感覚がものすごく鈍くなっているため、指の細かい動きができず、カードや小銭を取り出したりすることができない。自動販売機の商品もどこに何があるのかわからず、お金を入れる場所も触らないと判別できない。結局買い物は断念した。杖と手すりがないと階段は歩きにくく、特に下りはこわい。
一通り終わったあと、ゴーグルを取って耳栓をはずした時、思わず「若いっていいなあ!」と大声で言ってしまった。いやしんどかった。

もちろん実際の高齢者の方は、急激にこういう状態になるのではなく、徐々に徐々に変わっていくから、ある程度適応はされているのだと思うが、それにしてもこれが日常となると、外界というのはいかにわかりにくくて動き回りにくいものかというのがたった30分でもよくわかった。感覚の制限と運動の制限は想像していたよりきつい。今度から自動販売機で困っている高齢者の方がいらしたら、声をかけてお手伝いを申し出ようと思う。

参考リンク:
体験:妊婦や老人になってみる(デイリーポータルZ)

おもりをつけると自然と腰が落ちて背中が丸くなる。自分が街で見かけるおじいさんのようになっているのがわかる。

 そうか、いかにもお年寄りに見える姿勢は、自然とそうなるものだったのか。

 当たり前なのだが、体感してみるとその苦労がよくわかるのが意外だった。筋力の衰えからくる体の重み、間接の曲がりづらさ。単に記号的に受け止めていた老人っぽさには、理由があったのだ。当たり前だったはずのことを実感。

インスタントシニア体験で使用する9種類の器具大阪府地域福祉推進財団)
#おもりのつけ方など若干違いはあるが、用途は同じ。