結婚と所得は正比例、出産と所得は逆比例?

asahi.comの記事「夫が家事に積極的だと、2人目の子生まれやすく」で

 子どもがいる夫婦で、夫が育児や家事に積極的なほど2人目の子どもが生まれるケースが多いことが、厚生労働省の調査で分かった。妻の職場に育児休業制度がある場合も同じ傾向だった。厚労省は「家庭内外で育児や家事への協力が得られるかが第2子誕生の要因になっているのでは」としている。

とあるのに対し、はてなブックマーク界隈では「当たり前だろ」という冷淡な反応が多数を占めている。
たしかにここだけ読むと「何を今さら」的な感想になってしまうが、例によってソースに当たってみるとそれだけではない面白いデータがあった。

元ネタはこちら。

第5回21世紀成年者縦断調査(国民の生活に関する継続調査)結果の概況

調査の概要を見ると、これはかなり大がかりな縦断的(年代を経た)調査であり、政策立案の基礎データとして活用するために実施しているものであることがわかる。

目次には

調査の概要

結果の概要
I  結婚の状況
 1  独身者のこの4年間の結婚の状況
 2  仕事をしていた女性の結婚後の就業継続の有無
II  夫婦における子どもの出生の状況
 1  この4年間の出生の状況
 2  仕事をしていた妻の出産後の就業継続の有無
III  職業観・子ども観
 1  職業観
 2  子ども観

参考

用語の定義

とあり、この中の
II  夫婦における子どもの出生の状況 1  この4年間の出生の状況
が該当記事になったと思われる。

この中で個人的に興味深いと思ったのは、第一子出生の時は「夫の休日の家事・育児時間」が「なし」が39.3%、「2時間未満」が37.9%、「2〜4時間未満」34.6%とあまり差が見えず、「4〜6時間未満」45.5%でようやく変化が出てくるのだが、第二子の時は「家事・育児時間なし」20.5%「2時間未満」35.9%「2〜4時間未満」51.2%と明らかに比例して増えているところ。

また正直驚いたのが「(6)夫婦の合計所得額別にみたこの3年間の出生の状況」の結果。

「出生あり」の割合を出生順位別にみると、「第1子出生」では「100万円未満」が57.1%、「第2子出生」では「100〜200万円未満」が56.3%、「第3子以降出生」では「200〜300万円未満」が18.2%と最も高くなっている。

必ずしも所得が多い層に子どもが多く生まれているわけではない。グラフを見るとむしろ逆になっている。一体これはどう解釈すればいいのだろう。

年齢・職業などとのクロス集計やクラスタ分析など多面的な分析がほしいところ。

一方、「I 結婚の状況 1 独身者のこの4年間の結婚の状況」の「所得額別にみたこの2年間の結婚の状況」ではこのような結果が。

男女ともに、「400〜500万円未満」で「結婚した」の割合が最も高く、所得額が高くなるほど、結婚の割合が高くなる傾向がある。

第3回の独身者について、「結婚した」は、第3回から第4回間の結婚は平成15年中、第4回から第5回間の結婚は平成16年中の、「結婚していない」は平成16年中の所得額階級別に、この2年間の結婚の状況をみた。

男女ともに、「400〜500万円未満」で「結婚した」の割合が最も高く、所得額が高くなるほど、結婚の割合が高くなる傾向があり、特に、男では、最も低い「100万円未満」で4.4%、最も高い「400〜500万円未満」で13.4%と、9.0ポイントの差がある。

そして「(3)仕事の有無、一週間の就業時間別にみた状況」では

男性は、仕事が正規の場合18.0%、非正規の場合9.1%が、この4年間に結婚した。

第1回の独身者について、「結婚した」は結婚前の、「結婚していない」は第4回の仕事の有無別にこの4年間の結婚の状況をみた。

男は「仕事あり」の17.8%、「仕事なし」の6.2%が結婚した。仕事ありのうち、就業形態の正規・非正規別では、「正規」で18.0%、「非正規」で9.1%と、8.9ポイントの差がある。

また、女の、仕事の有無や就業形態別にみた結婚の状況は、男のような大きな違いはみられない。

ということで、所得と就業形態のクロス集計を見ないと正確なところはわからないが、「正規就業・年収200万以上」というのが男性の結婚にはひとつの目安になっているのかもしれない。そのあたり、H-Yamaguchi.netの「「男は上、女は下」という話」という記事で紹介されてる山田昌弘さんの本には実態がもう少し詳しく載っているだろうか。

尚、こちらの報告書にある図表はこちらからダウンロードも可能。活用しやすくなっているのはありがたい。

参考リンク:
結婚できない男女が増加:今後は「婚活(こんかつ)」が必須に(NB Online:2008/03/12)