労働時間とセックスの回数についてのエトセトラ

残業大国ニッポンを憂う宋文洲の傍目八目:2006/07/27)

僕は残業問題が経営問題をはるかに超えた社会問題だと思います。オーストラリアの会社が実施した「the global sex survey 2005」によれば、日本の年間セックス回数は平均45回で、調査対象国の中でも最低です。この調査によれば、世界各国の平均回数は103でした。日本が低い理由は、明白です。残業して深夜に帰れば、セックスする気力も時間もないはずです。

これへの反論ではもちろんないが、一方こんな記事も。

労働経済白書(現在合議中)EU労働法政策雑記帳:2006/07/18)

ワークライフバランスは確かに大事ですが、長時間労働だから結婚できないわけじゃないし、セックスできないわけでもない(6月27日のエントリー参照)。ビンボな若年非正規労働者が繁殖機会を奪われて性淘汰されているというのがこの国の現状なんですね。

「6月27日のエントリー」はこちら。
二極化とセックス格差EU労働法政策雑記帳:2006/06/27)

結論だけ言うと、既婚者は労働時間が長いほど性頻度が低くなる。それに対して単身者は労働時間の多寡は性頻度に影響を与えない。じゃあ何が影響するかというと、世帯収入なんですね、これが。年収350万未満の者より、年収350万以上1000万未満の者の方が、性頻度が高い。

低収入の非正規社員の増加は、彼らの性行動自体を抑制していたんですね。

元ネタとなっている川上さん・玄田さんの論文はこちら。

就業二極化と性行動―出生減少のミクロ的背景―

無業状態の若年は、性頻度を有意に減少させることが明らかとなった。就業有無の影響を既婚・単身別にみると、特に単身者について無業が性頻度を大きく抑制していた。無業は、期待所得の低下により性行動を消極化させるだけでなく、パートナーに仕事を通じて出会うのが困難になることから性頻度を下げ、結果として少子化に拍車をかけている。
同モデルを就業者に限定し、労働時間の長短が性頻度に与える影響を推定した結果、長時間労働が既婚者の性頻度を減少させることも確認された。長時間労働の結果、所得増加が家庭外余暇への選好を強める他、パートナーとのコミュニケーションの確保が困難になることから、性頻度は抑制されると考えられる。

ここで言ってるのは、少子化対策は既婚者の「育てやすさ」だけでは不十分だということ。

育児休業制度や短時間勤務制度等、既婚就業者の出生を促進する制度整備は重要であるものの、恩恵は一般単身者に及ばない。厚生労働省「人口動態統計特殊報告」によれば、2000年に誕生した第1子のうち、26.3パーセントが単身者の「授かり婚」(通称「できちゃった婚」)によりもたらされ、1980年の12.6パーセントから倍増している19)。出生における単身者の性行動と妊娠の占める比重が高まる一方、単身無業者の増加は性頻度を下げ、出生を低下させる要因となっている。若年単身者の就業機会を拡大することこそ根本的な少子化対策であることが、本結果から改めて確認できる。
加えて既婚就業者が子どもを持ちやすくするには、出産や育児を支援する制度の設計に加えて、日頃の時間管理を見直す実践が必要となる。本論文の結果は、恒常化する若年層の長時間労働を縮減し、配偶者とのコミュニケーションを確保する機会の拡大が、有効な少子化対策となることを示唆している。

つまり、「日本に足りないのはセックスだ!」ということで。