さらに先を行く出生率1.08の韓国の少子化

少子化の日韓比較と労働労働政策研究・研修機構:2006/06/21)

去る6月1日、厚生労働省が発表した「 2005 年の人口動態統計」によると、一人の女性が生涯に産むと推定される子どもの数を表す合計特殊出生率は 1.25 となった。この低い出生率は、多くのマスコミで取り上げられ、「 1.25 ショック」、「 1.25 衝撃」とも記された。

一方、お隣の韓国では、日本より約ひと月前の5月8日、統計庁が「 2005 年出生統計暫定結果」を発表したが、そこには 2005 年の合計特殊出生率が 1.08 と記されていた。翌朝韓国の新聞には「 1.08 ショック」が大きく報道された。

出生率の低下には、非婚、晩婚および高齢出産等出産前の要因が挙げられることが多いが、出産後の教育・育児負担等の要因も非常に大きいと思われる。 2005 年に行った韓国の調査であるが、未婚男女 2,670 名からの回答によると、「なぜ子どもを一人しか産まないのか」という問いに対して男性の場合、教育・養育費の負担 40.4 %、所得・雇用の不安定 25.7 %、余暇と自己実現 16.4 %、仕事と家庭の両立困難 5.5 %等の順で理由があげられている。一方、女性の場合は、教育・養育費の負担 46.8 %、仕事と家庭の両立困難 17.5 %、余暇と自己実現 12.2 %、所得・雇用の不安定 9.7 %の順であった(韓国『中央日報』 2006.5.09 ―インターネット版)。子どもを産みたくても出産後の教育・養育費の負担が怖くて産めないという現象を「出産ストライキ」と表す新聞記事もある。このような韓国の少子化の原因は程度の差はあるものの日本でも当てはまるだろう。

親(特に父親)が自分の子どもを教えることが出来れば教育費は軽減される。しかし、子どもが寝る前に帰宅する父親の割合はどのくらいであるか。その悲観的な数値は韓国のほうがもっと悪い。実は、少子化長時間労働と深く関連しあっている。それを無くさないかぎり効果的な少子化対策にはならないだろう。

この長時間労働のために、結婚相手を探し、交際し、恋愛する時間もないので結婚さえも難しい人は少なくないし、また、結婚後も深夜に帰宅する疲れ果てた夫は子どもを作る余力がないといったら言い過ぎになるだろうか。

先進諸国の中で女性の年齢別労働力率がM字形をなしているのは日本と韓国だけである。日本の女性は、「出産を機に7割の女性が離職している(『日本経済新聞』 2006.6.02 )」からM字形は完全には是正されないし、韓国はそれ以上である。出産しても働き続ける労働の環境をどのように作ればいいのか。韓国では、その解決のために 2010 年までに約4兆円を投入するという(『日本経済新聞』 2006.6.8 )。その効果が期待されるところであるが、前述のアンケート調査結果から見ると、限定的なものになるだろう。

読めば読むほど日本とまったく同じ状況で、いや何と言えばいいのか。
「疲れ果てた夫は子どもを作る余力がない」は、日本の新聞は書けない一文だろうなあ。