ドラマ「14才の母」の持つ危険性

同じく毎日新聞サイト掲載、北村医師執筆コラム「14才の母」より。

 中学2年生の未希ちゃんが15歳の恋人との間で妊娠してしまうという衝撃的なドラマ。このような作品の影響力の大きさは計りしれません。たった一度であっても、セックスが行われれば妊娠や性感染症を引き受けるという教育はおざなりでありながら、結果として起こった妊娠に対しては、突如として「愛」だの「命の大切さ」だのと強調するメディア。これが怖いのです。

初回金八世代としては、「ああまたあのネタね」程度の関心しかないのだが、性教育バッシングが甚だしい昨今としてはたしかに少々きな臭い気もする。

 診療の場でもよく見受けられる光景です。高校生のカップルに「妊娠」を告げながら「どうするの?」と問いかけると、決まって返ってくる言葉が「中絶!」。教育的な意味合いも込めて「中絶しか選択肢はないの」と尋ねると、「だって僕たち高校生ですよ。産めるはずがありません。経済力もないし、育児には自信がない」と。「君たちが高校生だってことは今に始まったことではない。妊娠する前から、セックスする前から高校生なのだ。妊娠したからといって急に高校生になるのはおかしくはないか」と諭すように語りかける僕の言葉の虚しさ……。

都合の悪い時には子どもになったってダメだ、ってもっともっと伝えないといけないだろう。

特に心配なのは、人工妊娠中絶は悪、産むことが美徳であるかのような風潮を生みかねないことです。「中絶なんて、そんな無責任なこと考えられない」と格好よくいうならば、「セックス後の出来事を予測せずに行動する人の気が知れない」と返したくもなります。過去に中絶を余儀なくされた女性たちの心を傷つけてしまわないかも心配です。わが国では15歳未満の出産例が1年間45件と報告されていますが、その陰で456件(2004年度)の人工妊娠中絶が行われています。16歳から49歳の女性のうち16.3%に中絶経験があるだけでなく、その内3割は複数回の中絶を行っています。

「中絶なんて、そんな無責任なこと考えられない」と格好よくいうならば、「セックス後の出来事を予測せずに行動する人の気が知れない」
もう、名言。
とは言え北村先生も避妊が男性主導になっていたり、まちがった性知識がいまだにまかり通っている現状も承知している。だからなおのこと歯がゆいのだろう。
第114話 「膣外射精」なぜ危険?
第111話 “女性の射精”について
コラムの最後にある「若者に向けて・・・以下の項目にひとつでもNOがあるならセックスを先延ばしして欲しい。(北村の叫び)」をローティーンに伝えていくのが大人の役割というものだろう。引用すると

  • 相手や自分のカラダのことをよく理解してますか?
  • 相手を尊敬して対等な関係でいられますか?
  • きちんと話し合うことができますか?
  • 避妊と性感染症予防に責任を取れますか?
  • 妊娠したらどうするか、覚悟はできていますか?
  • 人の心や体を傷つける性行為はしないと誓えますか?
  • 本当にありのままの自分でいられますか?

(「いつからオトナ?こころ&からだ」より)

いつからオトナ? こころ&からだ

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