「怒りの心理学」読んだ
以前ご紹介した、私の指導教官の編著書「怒りの心理学」。ようやく著者割引で届いたので、読むことができた。
とりあえず前半部分から少々抜き書き。
■怒りの認知にはパラノイド認知(他社の言動の背後に自分に対する悪意や敵意を推測しやすい傾向)と自己愛傾向(ナルシスト)が影響を及ぼしやすく、双方高いとキレやすい
■攻撃しないで怒りをやわらげる方法
「感情から注意をそらす」(気分転換、心を鎮める)
↓
「認知的再評価」(合理化、原因究明、社会的共有)
↓
「怒り感情の放出」(社会的共有、筆記)
■許すために必要な5つの要因
- 怒りや悲しみのような強い情動を自覚し受容する
- かなわない対人的な欲求を前もってあきらめる
- 加害者に対する許す側の考えを変更する
- 加害者への共感を高める
- 自分と相手に関する新しいナラティブ(物語)をつくりあげる
■怒りの鎮静化プロセスと許し
- 怒りを高めるような認知の肥大化を行うと相手を許せない
- 自分の責任を認めた場合は相手を許している
- 自分なりの理由をつけて納得したり(合理化)、相手と話し合って原因を追求したり、相手に自分の怒りを言葉で伝えたりした際には相手を許していた
- まったく関係ない第三者に話したり(社会的共有)、怒りを感じた相手を避けたり逃げたり(逃避・回避)した場合には許していない
- 翌日以降にその出来事を忘れようとする(忘却)と相手を許せなくなる
■許したいけどなかなか許せないとき
- まずは感じている怒りを和らげる。怒りが和らぎ、冷静に自分の経験を考えられる段階である必要がある。
- 友人など会うことができる対象の場合は、とにかく会って話をする。コミュニケーションを繰り返す中で共感や自分の経験の再評価を行うことが許しにつながる。
- まったく見知らぬ人や会うことのできない相手の場合は、自分なりに納得できるような何らかの理由を考える。
忘却が怒りを鎮静化させないというのは意外だった。直後は感情から注意をそらして鎮静させたあと、きちんとその怒りと向かい合うことが本当の意味での解消につながるということか。
後半はコントロールのためのさまざまな手法を紹介。
個人的には筆記開示法が興味深く感じた。(「ネガティブな反芻」を抑制する効果がみられたとのこと)あとは呼吸法。腹式呼吸は鎮静とリラクゼーションに役立つようだ。
有斐閣サイトより目次を転載。
第1部 怒りのメカニズム
第1章 怒りの理論──怒りとは何か
第2章 怒りの認知──怒りはどんなときに生じるのか
第3章 怒りの表出──怒りはどのように表に出されるのか
第4章 怒りの鎮静化──怒りはどのように和らぐのか
第5章 怒りの健康への影響──怒りは健康を害するのか
第2部 怒りのコントロール
第6章 怒りのコントロール──怒りとうまくつきあう
第7章 リラクセーション──からだを落ち着かせる
第8章 ストレス免疫訓練──自分に言い聞かせる
第9章 スキルトレーニング──コミュニケーションスキルを身につける
第10章 筆記開示法──文字にして書く
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