一般職と総合職の間にある広いグレーゾーン

「女性事務職のキャリア拡大と職場組織」という本を出版した神奈川大学経営学部の浅海典子助教授へのインタビュー記事。
女性一般職と総合職の業務内容について詳細に調査した結果から、これまでの定説を覆す、しかし実感としては納得できる分析結果があった。

 一般職については、総合職の男性の補助的な位置付けだとか、価値の無いつまらない仕事だという議論は以前からありましたが、実際に組織の中で男女それぞれの仕事を細かく調べて分析するような研究はあまりなされていませんでした。また、一般職の女性たちがどのような仕事をしていて、組織にどういうインパクトを与えているのか、彼女たちの上司でさえも十分に把握できていなかったと思います。

 そこで、ある大企業の営業の部署で、総合職である営業と、一般職である営業事務が、どのように仕事を分け合っているのか、詳細な調査を行いました。その結果、「役割分担はあるものの、どちらともいいがたいグレーゾーンの業務が非常に多い」ということが分かったのです。

もちろん、役割と責任の違いや、求められるスキルの高さによる差異があります。しかし、完全に分断できるものではないということです。

 例えば、総合職の男性が外出中なら、ある程度のことは一般職が代わって対応しています。仕事の境界線が曖昧ということは、女性が男性の仕事の領域を“侵食”している可能性があり、それを少しずつ取り込んでいくこともできるわけです。実際に、一般職としての仕事の中で少しずつスキルを磨き、キャリアを拡大する女性も出始めています。

一時期、一般職の仕事イコール単純事務という発想から、一般職を雇用抑制し、派遣や契約社員で補っていた時期があったが、近年その動きがまた変わってきているという。

派遣社員や外注に任せていた部分を、正社員や契約社員に戻そうという動きが出ているのは、一般職の仕事が外部に丸投げできるような単純業務ではなかったということであり、私の調査でもそれは明らかになっています。

実際にやる気のある女性が多いとは言っても、激務のイメージがある総合職を選ぶとなると躊躇があるのが正直なところ。そんな現状に対して浅海氏はこのような問題提起を。

 しかし、ウェディングプランナーになりたい男子学生がいるような多様化の時代に、総合職と一般職の二択しかないことが問題なのではないでしょうか。

 先に述べたように、総合職と一般職は処遇や育成のあり方などが乖離(かいり)しているにもかかわらず、仕事内容はかなり接近していて明確に分断できるものではありませんから、両者の間にいくつかのステップがある方がむしろ自然だと思うんです。また、総合職を選んだ全員が幹部になるわけではないので、一律に転勤を課す必要もないかもしれませんし、総合職のなかでも、マネジメントスキルを磨いて将来の幹部を目指すコースや、専門的なスキルを磨いてプロフェッショナルとして生きるコースなどがあってもいいでしょう。

また、一般職/総合職の話題ではないが、このあたり非常に同意。

 以前、研修の仕事で能力診断のためのビジネス・シミュレーションを行ったところ、50代の方から「自分のいる業界のことでないと、分かりません」という感想が出ました。いつも業界内で転職先が見つかればいいのですが、そんな保証はどこにもありません。もう少し物事を柔軟にとらえて、自分の強みを分析しておく必要があると思います。

 「何ができるのか」も大切ですが、「何をやりたいか」も非常に大切なんです。特に、30代から40代のキャリア中期の方たちに考えていただきたいですね。そうすると50歳を過ぎてキャリアが終盤に差し掛かる頃に、これまでの職業経験を振り返り、次の世代へ何を伝えていこうかという視点に立てるようになるでしょう。そういうあり方が「キャリアデザイン」であって、決して自分を商品化して高く売ることではないと思います。

女性事務職のキャリア拡大と職場組織

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