この「一般職キャンペーン」は一体何なのか

商社や金融業界がいわゆる「一般職」募集を再開したことがマスコミの方々はよほどうれしいらしく、記事の登場回数が目立つ。
【仕事事情】「バリバリ」より「ゆとり」YOMIURI ONLINE:2007/06/11)

 業績回復の追い風を受け、優秀な人材確保や団塊世代の退職に伴う人員補充などが主な狙いだ。女子学生の人気も高い。仕事をバリバリこなす「キャリアウーマン」のイメージが強い総合職に比べて、プライベートの時間を満喫できるなどの理由から、一般職に魅力を感じる学生が増えているようだ。

そこで男性も採用すれば、一気にワークライフバランス問題も解決しそうなものだけど、そういう方向には記事の論調は行かない。
事例に挙げられている働く姿もなんだかとってもステレオタイプ

 オフィスにかかってくる顧客からの電話も受け、保険商品の説明なども対応する。「一般職は事務作業をひたすらこなす仕事と思っていました。実際はお客様や営業担当の社員と話す機会が多く、楽しい環境です」と笑顔を浮かべる。

会話を進めながら仕事をするのは事務職ならばむしろ当たり前。こういうコメントをわざわざ取り上げるところにも何か釈然としないものを感じるのは気にしすぎか。

 定時の午後5時に退社した後は、ショッピングをしたり、学生時代の友人と食事に行ったりして、プライベートの時間を満喫している。仕事は「自分の生活を充実させる糧」だという。

一昔前の「OLさん」のイメージそのまま。確かにこういう働き方ができる人もいるだろうが、「自分の生活を充実させる糧」なんて思いながら毎日会社に通って30代を迎えるとガラスの天井が突如見え出し、「自分には何も売りになるスキルがない」「このままだとリストラされるんでは」「毎日同じことの繰り返しで変化がない。つまらない。自分を活かせる仕事がもっと他にあるのでは」という悩みを持つ、というのがこれまで非常によくあるパターン。
「もっと仕事をしたくなったら総合職に職種転換すればいい」という考え方もあるだろうが、実際のところいざ転換となったらそう簡単ではないはず。

一般職人気は、若い女性の仕事の価値観が多様化してきた現れともいえる。

いや、若い女性の仕事の価値観はもともと多様化していたと思うのだが。多様化してなかったのは記者の皆さんの「若い女性の仕事」観では。

就職活動中の皆さんはこんな忠告に耳を傾けておいてもいいだろう。

 ただ、武石恵美子・法政大学教授(女性労働論)は「一般職がどのような仕事なのか、よく理解した上で希望すべき」と話す。総合職に進んだ先輩が忙しそうに働く姿を見て一般職を選択するなど、学生は身近なケースを参考に仕事を選びがちという。武石教授は「最初から一般職に絞らず、幅広い視野で就職活動することが大事です」と助言している。

以前私も「一般職と総合職の間にある広いグレーゾーン」と言う記事を書いた。実際の職務内容はそんなにきれいに分けられるものでもないのだが、待遇はきれいに分かれている。給与体系は同じでも職種によって昇格の上限があるとか、昇級があとまわしにされやすいとか。それを初めから納得の上で選ぶなら他人がとやかく言う筋合いもないのだが、実際のところはどうなんだろう。

一方でこんな記事も。
脱・商社「マン」 伊藤忠、幹部に女性続々増やすasahi.com:2007/06/12)

 伊藤忠商事は、女性総合職の採用や幹部登用を増やす方針だ。伝統的な「商社マン」のイメージが幅を利かせる総合商社は他産業に比べて、女性の進出が遅れている。同社は「男性偏重の体制を続けていたら、少子化時代に必要な人材を確保できない」(広報部)と人事を大幅に見直すことにした。

 伊藤忠は08年春入社の採用で、これまで20%だった総合職に占める女性の割合を30%に増やし、同年度末までには社内約100の部すべてに女性総合職を配置する。

 幹部登用では、06年度末で11人の課長クラスの女性を13年度をめどに倍増し、現在はいない本社部長クラスへの登用も目指す。

このあたりはダイバーシティ時代を見ての施策なのだろうか。選択肢が増える分、選ぶ方の自己責任も増すような気がする。