子育てとワークライフバランスについての意識調査結果を読んで

「企業における育児支援制度に関するアンケート調査」(概要)
「企業における育児支援制度に関するアンケート調査」(詳細・PDF)
野村総研NRI)の調査レポート。対象は企業で働く小学校3年生以下の子どもを持つ親1000人。(「インターネットによるアンケート調査のため、ネットリテラシーの比較的高い母集団になっていることに留意する必要あり」との注意書きあり。こういうことをきちんと書いてくれるとありがたい。)

特徴として上げているのは以下の2点。(以下「概要」より引用)

  1. 仕事と育児の両立や仕事の継続に関して高い意欲を持ち、企業の育児支援制度に関するニーズも高いにもかかわらず政府や企業の動向に関心が低い
  2. 子どもを持ちつつ働いている社員の育児支援制度に対するニーズは高いのですが、満足度は低く、その最も大きな理由が“制度を利用しにくい”というもの

1.については、

次世代育成支援対策推進法」(以下「次世代法」)の施行については、「知らない」と回答した人の割合が77%(図1)になり、男女別、企業の規模別、業種別、で見た場合も大きな差異はありませんでした。また、自身が勤務する会社で「次世代法」の施行に伴って新たな育児支援策が導入されたかについても「気がつかなかった」という回答が40%と多くなっています(図2)。つまり、法制度や施策の“当事者”でありながら政府や企業の取り組みに無関心である、という傾向が浮かび上がっている

という結果から。まあこのあたりはこの問題に限らずありがちで、無関心というよりは日々の勤めに忙殺されて取るべき情報も取れていないのではないかと推測する。だいたい法律の名前自体ものものしくて、育児に関係してるとはすぐに思いつきにくいし、法律そのもののことよりその結果何が変わって何が変わってないかの方が本人にとっては重要なのだろう。とは言え自分の生活に関わってくる法律や政府の施策についての知識はないよりあった方がいいに決まってるので、必要な人たちにちゃんと届ける施策を政府としては考えてほしい。R30さんの「なんで年末になると少子化対策の話になるんだろう」という記事のこのあたりなんかぜひ参考にして。

 内閣府少子化社会対策会議は、1人でもいいから民間のプロのマーケティングコンサルタントでも雇って、政策をどうやって実際のターゲット顧客層に周知徹底して「子供生んでも大丈夫なんだ」という心理状態を生み出すか、真剣に相談しろよ。少子化対策なんて、インプットが女性のディシジョン・メイキングで、アウトプットの数値目標が地域と年齢層別の出生率という定量目標でしょ。こんなにモダン・マーケティングの応用に適した政策分野はないんだからさ。

 だいたいね、いろいろ手は打ってますって言われたって、その内容を「少子化社会対策基本法では〜」とか「少子化社会対策大綱における〜」とかの枕言葉をつけて説明されたら、頭に入る奴なんかいるわけないじゃん。ちゃんと清涼飲料買うときみたいに分かりやすく説明してもらわなくっちゃ。

2.についても実態としてはそんなところだろうということは想像できるが、じゃあどうすればいいのかということろでなかなか有効な対策が考えにくい。

しかし個人的に一番興味深かったのは、ワークライフバランスに関する意識の項目。「あなたは仕事と育児に関して、どのようにお考えですか。」という質問に対し

  • 子育てよりも仕事を優先したい
  • 子育てと仕事を両立
  • 子育てを優先して仕事をしたい
  • 分からない

の4択で回答してもらっているのだが、性別年齢別で比率がかなり違っている。
女性は「子育てを優先して仕事をしたい」と回答する人の比率が30代→40代→20代の順で高いが、男性は40代→30代→20代となっている。また、男女とも40代でぐっと増えるのが「分からない」。「分からない」って一体どういうことなのか。どれにもあてはまらないということか、親の介護問題が出始めて子育てだけがワークライフバランスのファクターでなくなるということか。どうも気になる。

また「仕事を継続する理由」として、女性は「仕事を続けなければ生活していけないため」(65.8%)、「専業主婦には適していないため」(36.5%)、「自分のキャリアアップのため」(30.2%)となっているが、男性は「自分が一家の主な稼ぎ手であるため」(89.3%)、「仕事を続けなければ生活していけないため」(63.2%)が圧倒的に多く、「自分のキャリアアップのため」は17.4%。これが現実だとは思うが、なんだか切実で身も蓋もない。「キャリアアップ」と言ってるのは実際のところは「職場でのキャリアを継続する」という意味ではないかな、というのは私の推測だが。と言うか、いいかげん「キャリアアップ」という言葉を使うのはやめてほしい。キャリアにはアップもダウンもないんだから。
余談だが女性で「自分が一家の主な稼ぎ手であるため」という人が14.4%いるのは仲間を見つけたようで勝手にちょっとうれしかったりする。ビバおなご大黒柱。

nikkeibp.jpの記事「企業の育児支援対策、不満が4割、「実際には利用できない」」は、NRIの概要かいつまみそのまんま記事。まあ概略見るにはいいかもしれないが。