「アイカンパニー」=「自分商店」を経営する視点

リンクアンドモチベーション代表取締役社長・小笹 芳央氏がNEC運営のWisdomというサイトに連載している記事より。
モチベーションエンジニアリングによる企業革新 第7回 個人の自立 アイカンパニー(自分株式会社)の設立

こうした時代にあって、個人がキャリアを形成し、その価値を最大限高めていくために必要なのは、「アイカンパニー」という発想です。「アイカンパニー」とは、自分自身をひとつの「株式会社」に見立てて、自分自身がその会社を経営している代表取締役であるという視点を持つことです。
 私は、これからの個人に必要なのは「自分探し」ではなく「自分創り」であると考えています。アイカンパニーの発想に立ってみると、‘探す’から‘創る’ への意識変革が驚くほどすんなりといくはずです。

という考え方で、今後のキャリアを考えていく上で自分自身を「経営する」ビジョン作りを提唱している。
自分自身及び自身を取り巻く環境をどのようにとらえ直すか、具体的な例を以下の表の通り「因子分解」として上げている。

イカンパニーの因子分解の例
現在務めている会社 「アイカンパニーの設立登記場所」。

会社は自分の雇用主ではなく、アイカンパニーを鍛えるステージである。
自分の将来のキャリア 「アイカンパニーの事業ビジョン」。

ビジョンなき経営は、環境変化によって、衰退の道を歩むこととなる。
会社から支給される給与 「アイカンパニーの利益」。

この利益をどう使うか、例えば能力開発のために利益を配分するか、もしくは無目的・無計画に使ってしまうかでも、今後のアイカンパニーの発展度合いは変わってくる。
上司や顧客 「アイカンパニーの株主或いは顧客などのステークホルダー」。

‘自社’に要望や期待を寄せて、商品サービスを購入してくれる存在。その評価が良ければより高く買ってくれるし、反対ならば最悪の場合取引の中止もあり得る。
職場やプロジェクトの同僚 「アイカンパニーのアライアンス先」。

協働や共創の仕方次第で、プロジェクト活動の価値が変わってくる。
自分の知識やスキル、得意技 「アイカンパニーの商品や技術力」。

商品サービスはアイカンパニーの価値基盤であり、優れたアウトプットを常に目指すことが求められる。
資格取得、スクール通学などの自己啓発活動 「アイカンパニーの先行投資活動」。

未来に向けた先行投資が将来の事業繁栄をもたらす。
社内での人事異動 「アイカンパニーの環境変化」。

時には業態変更ともなる。環境の変化は、チャンスとリスクの両面を併せ持つ。チャンスとして活かすべく、前向きな行動が必要。
仕事を推進する上の信条 「アイカンパニーの経営理念」。

理念なき戦略は、‘自社’の存在意義を揺るがす事態を招きかねない。

実家が小売業をやっているためか、私個人としては「アイカンパニー」というカタカナよりも、「自分商店」(実際に名前を入れると「Yumiko Yamaguchi商店」となるか)という文言の方がしっくりくる。何でもいい、要は「自分を経営する」という視点が大切だということだ。

この因子分解を行うに当たり、「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」の整理を行い、三つの輪の重なりを最大限にしていこう、というリンクアンドモチベーション社の記事でよく見かける内容になっていく。

まず第一に、「やりたいこと」=アイカンパニーのモチベーションタイプを把握すること。次に、「やるべきこと」=アイカンパニーを取り巻く環境を認識すること。最後に、「やれること」=アイカンパニーの保有する力を知ること、です。

「やりたいこと」「やるべきこと」それぞれの詳細内容は元記事をご覧いただくとして、「やれること」のところで書かれていたことを引用したい。

一見異なる仕事に見えて実は「同じ筋力」を使っている、裏を返せば一見同じ仕事のようでも実は「違う筋力」を使っている、ということがままあります。そして、その筋力を把握するためには、自分の経験を「誰に」(顧客特性)×「何を」(サービス特性)×「どのように」(形態特性)というファクターで「因子分解」 して捉えてみること、つまり自分の仕事がどんな要素で成り立っているのかを紐といてみることが不可欠となります。

自分が使っている「筋力」が何なのか、客観的に整理したことのある人は実は少ないのではないだろうか。スキルや資格を能力として思い込んでいるケースもあるし、与えられた役割が自分の全てだととらえていることもあるだろう。しかし意外なところでその力は使えるものかもしれない。
自分商店の棚卸しとビジョン作り、キャリアチェンジをするしないに関わらず一度はやっておいて損はないのではないか。