協調の原則をはずれた会話と「言外の意味」
会話の裏に潜むあれこれ(認知科学者の視点:2007/01/15)
言語哲学者のポール・グライスは、会話が協調の原則というものに則って行われているとして、4つのルールを示している。
● 量のルール:必要とされていることを語れ
● 質のルール:真実を語れ
● 関連性のルール:関連することを語れ
● 様態のルール:わかりやすく語れというものである。
これは当たり前のことで、だからなんだ? といぶかる人も多いかもしれない。実はグライスのルールのポイントはその先にあり、これらの原則に外れた会話がなされたときには言外の意味(=推意)が生じる、という点にある。
そして、掲記のルールへの「違反がなされるときには、表面的な文の意味とは異なる意図が潜んでいる」とも。つまり、単なる正誤を聞きたいのではなく、「会話をしたい」という「言外の意味」が生じているのだと。
言われてみると確かに「そんなこと聞いてどうするの」というようなことを聞かれる時は、内容よりも会話と言う行為そのものに重きが置かれていたように感じる。で、そうするとその相手は「会話」をしたくない時それは非常に苦痛な時間となる。
つまり逆も言えるのではないか。「内容にこだわる会話を続ける相手は、実は会話を望んでいない」。あまり認めたくない現実かもしれないが。