「子供の頃からやってる受験戦争をいつまでも辞められない就職戦線」から抜け出すには

12月16日に開催されたRTCカンファレンス(体調不良でパネラー発表後途中退場したが)のパネラーで一番印象的だった岩瀬さんのブログ「ハーバード留学記 その後」。そこにあったエントリ「無駄な時間を過ごせ」で響いた言葉があったのでメモ。

最近になって、大学生と話をする機会が増えた。まだ1年とか2年なのに、コンサルになりたいとか、HBSに行きたいとか言っているのを聞くと、「何かが違うのでは?」と違和感を覚える。学生の頃からビジネスプランとかコンサル・投資銀行面接特訓とかやっている人の話を聞いても同じ(僕のブログなり本を読む人たちだから、自然とそういう人たちが集まってくるのだろうが)

という枕から始まる。「コンサル・投資銀行面接特訓」なんてものがあるのか、とびっくり。
そしてメモしておきたい、と思った言葉はここ。

最初は、「就職活動がここまで若年化しているのか?」と思ったのだが、聞いていてだんだん、「子供の頃からやってる受験戦争をいつまでも辞められないのでは?」と思うようになった。レールに敷かれた人生に乗ることを辞められず、進学校に行って、一流大学に行って、世間でカッコいいと思われているような企業への就職を目指しているのではないか。

非常に納得。もちろん今就職活動をしている学生さんたちが全員こうだと言うつもりはないが、少なくとも東大法学部卒(在学中に司法試験合格)→ボストンコンサルティングベンチャーキャピタルリップルウッドハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction) という世間的に華やかな経歴を持つ筆者のところに話を聞きたいと集まる人たちは、同じようなグレードの資格を取り、同じような「やりがいのある」仕事につきたいと願う人が多いのだろう。そしてそう思うことそのものを責めるつもりもない。価値観はそれぞれだ。


ただ、その選択はどこから来たものなのかをもう一度自らに問うてみてもいいのではないか、と思う。「受験戦争の延長での会社選び」をすると、必ずとは言わないがかなりの確率で入社後失望する。どんなにきれいなブランドでも、基本的に会社の仕事は自分で意味を見つけ、自分で居場所を確保していかなければならないからだ。そして新人にとって会社の仕事は理不尽で選択権はない。選択権を得るためには信頼を勝ち取らねばならない。信頼を勝ち取るには、押しつけられたゴミのような作業を「正確に」「納期通り」「気持ちよく」できる人間だということを証明し続けなければならない。そういうことができて初めて、任せられる作業の範囲が広がり、自分の工夫を入れる余地が広がり、任せられるものが「作業」から「仕事」へとステップアップしていく。


そんな苦行のような「作業」の日々を支えるには、外面的な「ブランド」や他者との競争だけではあまりにも薄すぎる。そこに必要になるのは「自分のやりたいことにつながっている見通し」だったり「ささやかだけど成長している実感」だったり「小さなことだけど、意外と他の人より手間をかけずにうまくできることの発見」だったりして、突き詰めるとそれらは自分を突き動かす「動機」につながっているのだと言える。となると、仕事を決めるときは自分の「動機」が何なのか、ということがわかっていると、より早く自分を支えるものが見つかって、何に向かって自分は今行動しているのか迷わずに済むのではないか。


そんなわけで就職活動にはまず「自己理解」を進めてから、と言われる。何度も言うようだが、仕事があって会社がある。先に決めるべきは「何をするか」なのだ。


付け加えると、岩瀬さんの言う「無駄な時間を過ごせ」とは、いかにもビジネスに直結しそうなことではない「無駄なこと」を言っているのだと理解した。そういう意味では、自分の興味を広げるさまざまなことにチャレンジしてほしいと私は思う。小島貴子さんの言葉を借りると「興味のないところに興味をもつ」「自分から、今までしたことのない行動をしてみる」「他人の興味に関心を持つ」といったことだ。興味を広げるということは、「何ができるか」あるいは「できるようになる可能性があるか」ということを広げられ、そこから何を仕事とするかが考えやすくなるだろう。


そして、失敗への恐怖に立ちすくみそうになったら、クランボルツ博士の「OK to fail」という言葉を思い出そう。リスクを取り、試してみることで初めて広がる世界があるのだから。

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