キャリア、結婚、子ども、美……すべてを手に入れたい!今どき20代女子たち

仕事邁進女がモテる 「仕事前向き」が幸せへの近道(AERA:2006年3月20日号)

昔で言う「バリキャリ」(えらく古いな)が最新のお化粧もしてファッション身にまとってる、そんなイメージだろうか。

今年に入り、通勤電車の中吊り広告に異変が起きているのにお気づきだろうか。20代向けの女性誌の広告に並ぶ言葉はこんな感じだ。

 「悪女(ワル)OL起業家」(「グラマラス」)

 「令嬢プレジデント」(「25ans」)

 「恋に仕事に大忙しの姉系もえOL」(「お姉さん〈系〉CanCam」)

 思えば女性誌業界は、一昨年から昨年にかけて「モテ」一色だった。会社に行くにも「モテ服」を着て、「モテ髪」に「モテメイク」。友達を家に呼べば「モテ鍋」を振る舞う。どうすれば男にモテるかのみに腐心していた。それが一斉に「働く」ことを前面に出し始めているのだ。

「玉の輿」を狙って「働くこと」を捨てていた女子たちが仕事に回帰してる(少なくとも女性誌の世界では)というのだ。

 実は、最近の20代前半の会社員女性は、20代後半よりも「バリバリ仕事志向」が強く、仕事のやる気は、30代後半の女性なみに高い――。会社員の仕事のやる気を調査している「JTBモチベーションズ」は、こんな分析結果を発表した。

 調査では、1999年以前は、女性会社員のやる気は年齢が若くなるほど低く、どの年代でも男性に比べて低かった。99〜2004年では、20代前半の女性が大幅に向上して、30代後半の女性なみの高いモチベーションを持ち、同じ20代前半の男性を上回った。分析をまとめた林浩平さんは言う。

 仕事に対して、びっくりするほどポジティブだ。先人たちが繰り広げた「負け犬」「勝ち犬」といった論争については、

 「私の実感では、仕事をバリバリやってるほうが、プライベートも充実するように思います」

 会社にいる女性の先輩も、最近結婚した人はみんな仕事がデキる。

 「実際、一生懸命仕事をしている人のほうが、新しいものへの気づきとか、人への気遣いとかが抜群で、見た目もキレイに見える」

仕事に一生懸命になっていると「そんなに仕事してると嫁に行き遅れるぞ」と男性社員たちから揶揄された頃とは隔世の感がある。「負け犬」って何のこと、という雰囲気だ。

夫の年収が高いほど、妻は専業主婦である割合が上がるという「ダグラス=有沢の法則」は、長らく経済学の基本だった。だが、東京学芸大の山田昌弘教授は、

 「若い世代には、この法則はもはや成り立たない」

 と指摘する。山田教授によると、「妻は家にいてほしい」と思う男性の割合は、1970年以前生まれか、以降かで格段の差がある。以降生まれのほうが、ぐっと少ない。

 「70年以前生まれは、バブル時代に社会人になっており、成功体験を持っていることが大きい。妻が家にいることが、男としての成功の証だと考える最後の世代」

 総務省の02年の調査でも、未婚男性が結婚相手として専業主婦を望む割合は、この10年で半減し、2割を切っている。

OECDの調査では、男女の役割意識が強く残っている国(イタリア、韓国、日本など)では出生率が伸び悩んでいるという結果がある。男性が専業主婦を望まず、女性もそれに応えて一緒に働くのが当たり前になるのが、案外少子化対策にも効くのかもしれない。

話を女性誌に戻すと、20代向けだけでなく、40代向けの「プレシャス」でも「愛される」と「できる女」の両方をアピールするファッションやコスメが紹介されている。そういう先輩たちのがんばりも多少は影響しているかもしれないと感じた。