「スキル志向」で生き急ぐ20代

元ネタは日経Bizキャリアの「理想と現実のギャップを把握できない20代転職者が急増」と言う記事。「第二新卒から入社3、4年まで、年齢でいうと27歳前後」を担当しているアデコの人材エージェントの方へのインタビューより。

転職希望者に、「スキル志向」がますます強まってきています。20代半ばであっても、転職やキャリア形成に対する意識が高く、どのようなスキルを身に付けていけばよいかと真剣に模索する方が増えてきました。私たちが20代であったころとは、かなり違うなという印象を持っています。それだけ社会への不安を抱いているのかしれません。自分の腕で生きていこうとする強い思いを感じます。ただ、若干生き急いでいる気がしないでもありません。

 それはキャリアパスの描き方にもうかがえます。例えば、「もう、営業としての下積みはやりたくない。1日でも早くマーケティングに携わりたい」「英語力はあるので、すぐにでも外資系企業で活躍したい」「金融業界に転職して、投資やデリバティブをすぐ手掛けてみたい」といった声を良く耳にします。実際には、こうした職にすぐ就ける可能性は高くありません。もちろん、若さと優れた頭脳をあわせ持ち、十分なポテンシャルを秘めている方もいらっしゃいますが、少数です。

 輝かしいところにすぐ行きたいという気持ちも理解できますが、競争で勝ち残った一部の人々がスタープレーヤーになるというのが現実です。理想と現実のギャップを埋めるためには、どのようなステップ、プロセスを踏めば良いのかを考えるお手伝いをさせていただきたいですね。

記事全体は「人材エージェントをうまく使って」という半ば宣伝ではあるが、引用した部分は実感として非常に共感。輝かしい仕事、かっこいい仕事にできるだけ早くつきたい、自分はそれに値するはず、という思いと現実の(本人にとっては)雑務ばかり姿のギャップが耐えがたく感じる人にしばしば会う。
まあ若者が「生き急ぐ」のは今に始まったことではないのだが、「格差」だの「勝ち組負け組」だのと不安をあおる世間の風潮が彼らの焦りを増す度合は、10年20年前昔より間違いなく強くなっているとは思う。

金井壽宏さんの「働くひとのためのキャリア・デザイン」で、新卒社員が入社時の「リアリティ・ショック」を乗り越えるには二つの通過儀礼(イニシエーション)が必要だとある。「職場集団への加入儀礼(グループ・イニシエーション)」と「職場の仕事上の課題面での加入儀礼(タスク・イニシエーション)」。米国の産業組織心理学者D・フェルドマンの言説の引用だが、彼によるとこれは導入研修などのOff JTの話ではなく、配属先の職場になじむための二つの課題だということだ。メンバーに仲間として認めてもらい、職場の課題に仕事面できちんと貢献できること。もちろんここには上司やトレーナー、メンターが大きな役割を果たすのだが、それはひとまずおいておくとして。
このリアリティ・ショックを何かの理由で乗り越えられない時に、同期の仲間と比較して「かっこ悪い」自分に耐えられなくなり、「早くスペシャリストになれるところ」「企画から製造まで一貫してやらせてくれるところ」に行かないと自分が「負けて」しまうような強迫観念にかられるのではないだろうか。

就職して最初の1〜2年は「求められた仕事を正しくできること」「味方になってくれる人を増やすこと」が目標になるということを、これから就職する方々にはお伝えしておきたい。

働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)

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