アサーティブネスを支えるのは自己信頼感

日経ビジネスアソシエ連載のアサーティブ・トレーニング。2006.12.19号が最終回となる。

ここまでやってきたのは「率直に頼む」「『ノー』と言って断る」「批判に対処する」「相手に真っすぐ向き合う」の4つの状況におけるアサーティブなコミュニケーション方法。

「相手に真っすぐ向き合う」時の心構えを抜粋すると。

  1. 今後の展望を持つ。長い目で見て相手とどんな関係を持ちたいのかよく考えておく。
  2. これは問題解決の第一歩だと認識する。1回の話し合いで、すべてが解決できるはずはない。
  3. 自分の責任も認める。これまできちんと問題点を伝えてこなかった自分にも責任の一端がある。
  4. 相手を理解する。相手の行動や態度には何か理由があるのかもしれない。

そして森田講師が言う、4つの状況すべてについて覚えておくべき事柄は以下の通り。

「アサーティブネスは魔法の杖ではない。これさえあれば、すべての人間関係が改善されるというものではない。自分一人がアサーティブに意見を主張するようになっても、あなたを取り巻く環境は元のままの“非アサーティブ”な世界。周囲の人はあなたの変化に驚き、場合によっては反発することもあります。」

現実社会でアサーティブネススキルを使うときは以下の点に注意、とのこと。(記事から要約)

  • いきなり大きな問題に取り組まない。最初は小さな問題から取り組み、自分ができることから一つ一つ変えていこう。
  • 時にはアサーティブになれない自分もよしとしよう。どんな状態の自分も受け入れるのがアサーティブネスの思想だ。

アサーティブネスの4つの柱は「誠実」「率直」「対等」「自己責任」。そしてこの4つの柱を支える土台となるのが「自己信頼感」だという。これは「他人の評価に左右されることなく、自分で自分の価値を見出し、信じる力」のこと。バンデューラの言う「自己効力感」(self effficacy)に近いものか。

その自己信頼を高めるには。抜粋すると。

  1. 今に至る自分の人生にいったんOKを出す。
  2. 日常の小さな喜びをたくさん見つける。
  3. 長期的な目標設定をする。長期的な目標を設定することで、自分と自分の人生を大切にするようになる。

「長期目標」の話のところで、こう書いてある。

いつかやれる状況になるのを「待つ」のはやめて、主体的に行動しよう。それがアサーティブな生き方だ。

これがこの連載の中で一番伝えたかったことなのかもしれない。

チャートで「変えられないもの」と「変えられるもの」が並べてあり、こちらも興味深かった。

  • 「相手」は変えられないが、「相手に対する自分の伝え方、態度」は変えられる。これを変えることを通して「より対等で親密な関係」が得られる可能性がある。
  • 「大きなシステム(政治や社会構造)」は変えられないが、「システムへの関わり方」を変えることでより良いシステムになる可能性がある。
  • 「過去」は変えられないが、「過去に対する評価」を変えることはできる。それにより、過去にとらわれずに今をイキイキ楽しめるかもしれない。
  • 「天災や不慮の出来事」は変えられないが、「困難な状況への対処」は変えられる。これを乗り越え、前向きな生き方が手に入る可能性がある。

実物はぜひ本誌で見てほしいが、「あなたができることから変えていこう」と言うタイトルがついたこのチャート、切り取って張っておくのもいいかもしれない。