中年期以降の職業生活で大切なのは「キャリア環境変化対応性」

Works研究所のレポートより。
人を活かす高年齢期就業へのヒント 第一回 計画が難しい定年後 必要な「キャリア環境変化対応性」リクルートワークス研究所:2006/10/11)
定年退職後の人生を考える時、多くの人たちは直前にならないと実感が沸きにくいのではないかと思うが、「定年2、3年前から60歳以降の生活の方向性を考え始めるのでは、やはり遅いと思います。自分としてどうしていきたいのか、方向性についての考えを深めていくには10年くらいの時間が必要です」というのがキャリアステージ研究所代表の堀越弘氏。

定年後の計画の難しさや、定年前にさまざまな変化が起こるという現実に対応していくために、 必要となることをこのように言っている。

充実した職業生活を中年期以降に送るためには、自らが変化することによってより適切な状況を作り出す、「キャリア環境変化対応性」という行動特性が重要になるという。
「企業と社員の関係が大きく変化してきています。そのなかにあって、職業人生を主体的に送り意味のあるものにするためには、環境変化を前向きに認識して、その変化に積極的に対応する力、『キャリア環境変化対応性』を身につけることが大切です。このことに着目をして、40歳代および50歳代を対象として調査を行った結果、『キャリア環境変化対応性』は、4つの事柄によって促進されることがわかりました。その4つとは、『エンパワーメント』『自己の模索』『世代性』『開放性』です」

なかでも『エンパワーメント』の影響は最も強く出ていたという。『エンパワーメント』とは、有意義感(「今の仕事はわたしにとってやりがいがある」など)、有能感(「これだけは誰にも負けないという仕事領域をもっている」など)、自己決定感(「仕事のやり方が決まっていても自ら工夫して裁量の幅を広げている」など)、インパクト(「私の仕事は職場や会社に何らかの好影響を与えていると実感できる」など)からなる概念だ。「エンパワーメントを高める企業施策としては、社員の自己裁量の幅を広げ、ある程度自由に仕事を設計する権限を与えるといったことが大切かと思います。社員自らが、どんな仕事をしていきたいか、考えを深め、それを自己裁量において実行するという取組みを通して、エンパワーメントは高まります」

つまり中高年期を自立した職業人として過ごせるようになるには、自らの変化を恐れないこと、そして変化を恐れないためには、日々の仕事でエンパワーメント、有能感、つまり自己効力感を持って働くことが重要となるということだろう。自己決定しているという実感や自分で選んだという納得感をいかに持って働くか。企業はそういうマネジメントができるか。高齢化社会を迎えている今、決して他人事ではない重要な問題である。