先進諸国の中で女性技術者が一番少ない日本

IT Proの記事より。
なぜ,日本の女性技術者は少ないの?IT Pro:2006/10/18)

まずはグラフ付きのこの数字を見ていただけると、状況がより理解しやすくなるだろう。

男女共同参画白書 平成17年版』によれば,日本の研究者(技術者,大学教授など)に占める女性の割合は11.6%(図1)。欧米先進国と比較すると,アメリカの32.5%,フランスの27.5%,イギリスの26.0%,ドイツの15.5%よりも低い数字です

そして公的機関を除くと、さらに厳しい状況があることがわかる。

 企業に所属する女性技術者となると,さらに比率は下がります。大学等(短期大学,高等専門学校を含む)に所属する女性技術者は5万8000人いるのに対し,企業には3万3000人しか所属しておらず,全体に占める女性の割合はわずか6.6%にとどまります。

「男子は理数が得意、女子は文系科目が得意だからじゃないの」と経験則から考えてしまいがちだが、それも思い込みだったようだ。

 経済協力開発機構OECD)が実施した学習到達度調査によると,日本の高校生の理科と数学の学習能力で男女間に有意の差は認められなかったといいます。にも関わらず,進学や職業を選ぶ段階で,女子生徒は理工系分野を選択する割合がOECD諸国の中で最も低い。要するに,日本の女性は理工系の職場に魅力を感じていないということでしょう。

もちろん政府もただ手をこまねいているわけではない。「女性のライフスタイルに合わせ,「1.進学」「2.就職(採用)」「3.育成(スキルアップ)」「4.仕事と子育ての両立」というフェーズごとに施策を立て,女性の技術職場での活躍を支援しよう」という施策を打とうとしているとのこと。
やはりこの中でも「4.仕事と子育ての両立」が最も重くのしかかり、退職を選択せざるを得ないフェーズとなっているのは以下の悲鳴のような報告からもわかる。

 大手電機メーカーを退職し,現在は大学院の博士課程で学ぶある女性技術者は,調査報告書に収録された座談会の中で次のように語っています。

 「6時15分に職場を走って出ないと間に合わないというときに,職場の人に『そんなに急いで帰ってどうするんだ。子供なんか別に放っぽり出されるわけじゃないだろう。保育園に10分15分遅れたって,良心があるから見てるだろう。子供の顔をそんなに早く見たいのか』と言われて,もう何を話してもむだだなと思いました」

「そんなに急いで帰ってどうするんだ」と言う職場の人の子どもはどうなのだろう。自分は妻を家に置いて一切そういう苦労をせずにいて、そうじゃない他人にはそんなことを言っても残念ながらまったく説得力がない。

 毎日定時退社することに対して後ろめたさを感じ,一方で保育士に遅刻して迷惑をかけられないというプレッシャーから,必要がなくても走ってしまうのが母親の心理です。これが毎日,毎日,長い人は10年以上も続きます。この現実を理解できていたら,このような言葉が口から出ることはないでしょう。

10年一人でこの孤独と耐えなければならないと思うと、二人目を躊躇するのも無理はない。自分の年老いた親をデイケアに預けていて、6時までに迎えに行かないといけないとしたらどう思うか、といった想像力がなぜ働かないのか。あまりにもナイーヴ過ぎないか。

子育てや家庭問題を抱える女性に対して,会社が本当になすべきことは,見かけだけ立派な制度を作ったり,女性活用を測る数値目標をいたずらに吊り上げることではありません。

 まず,経営トップが,社員が子供を産み育てやすい環境を作るんだと,本気になることです。その意識が現場に伝わり,職場の意識が高まれば,一致協力して支援していく環境が生まれます。制度に魂を入れると言いますが,職場の意識変革なくしては,出産を機に退職する女性は減ることはない。真の意味での女性活用にはならないのです。

子育ては女性が一人で背負うのではなく、男性ともども負っていくものなのだというメッセージもぜひ含めてほしい。子育て支援イコール女性「のみの」支援ではない。