JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査レポート2種

長期失業者の求職活動と就業意識(2006/09/01)

表紙・はしがき・執筆担当者・目次
第1章 調査研究の目的・方法と分析結果の概要
第2章 長期失業者の属性
第3章 離職状況と求職活動
第4章 就職活動の実態
第5章 失業中の生活実態
終章 政策的インプリケーション
【付属資料】

まず「第1章 調査研究の目的・方法と分析結果の概要」を見てみる。

調査対象はハローワーク新宿とハローワーク大森に来所した長期失業者。

職業経歴上の特徴として、初職や最長勤務企業においては、特に偏った傾向を示しているわけではなく、大企業勤務経験者が約3 割いるとともに、就業形態も正社員として勤務していた者が、9 割近くを占めている。だが、長期失業者は、転職を繰り返した者が多い、という特徴を持っている。約4 回の転職を経験した、というのが平均像である。

失業が長期化する離職者は、最長勤務企業に在籍していた時の属性は特に偏ったグループではないが、最長勤務企業を離職して再就職した段階で、企業規模、職種、雇用形態などに劣化が起こり、不利な職業経歴を経た後に今回の不況下で離職し、結果的に失業が長期化したものと思われる。従って、長期失業者は、特定のグループに集中して発生するのではなく、転職を繰り返すうちにキャリアが劣化し、結果的に失業が長期化したといえよう。

離職理由は、「解雇された、退職を強要された」、「人間関係がつらかった」、「肉体的あるいは精神的に健康を損ねた」がトップ3。ただし年代別に見ると変わってくる。、39歳以下層では、仕事が合わなかった」、「会社や昇進・キャリアに将来性がなかった」、「労働時間に不満だった」といった理由の回答率も高いが、50歳代は、「解雇された、退職を強要された」と「希望退職・早期退職優遇制度に応じた」、「倒産、廃業による」といった非自発的理由の回答率が高くなる。

また、求職活動に際しての相談やカウンセリングは、若年層ほど利用が少ないという結果が出ている。

受講回数や受講時間も十分とはいえない者が、かなりの割合を占めている。この傾向は、とりわけ39 歳以下層で顕著であり、若年層ほど職業相談やカウンセリングが有用であるとする者の割合が高いにも拘わらず、実際の受講率は若年層ほど低いというのが現実である。

職業相談やカウンセリングを受けてよかったこととして以下のようなことが挙げられている。

職業相談やカウンセリングで役立っているものとしては、「職務経歴書などをうまく書けるようになった」(42.5%)、「悩みや不安を話すことができ精神的に安定した」(31.5%)、「自分が求める職業や職種を明確にすることができた」(26.4%)、「自分の持っている職業能力を明確にできた」(24.4%)、「企業が求めている職業能力や人物像を理解できた」(23.6%)、「面接や自己アピールのやり方を理解し実践できるようになった」(22.8%)、「自分の市場価値を確認でき希望賃金額を修正することができた」(22.0%)、「職業訓練など再就職のための行動計画を立てることができた」(18.9%)となっている。このように、職業相談やカウンセリングは、職務経歴書の書き方といった実務的なものから行動計画の立案といったレベルの高いものまで、更には精神的な支援にまで役立っており、その有用性は非常に幅広いものがある。

いろんな局面の方に対してそれぞれ有効だということだろう。
また生活上の困難としてはこのようにまとめられている。

長期失業者が、日常生活で困り、苦しんでいることとしては、「生活費の工面が苦しくなり再就職へのあせりが募った」(57.3%)、「自分に価値がなく仕事が見つからないかもしれないという恐怖感にかられた」(55.7%)、「どのような仕事に就いたらよいのかわからなくなってしまった」(46.3%)、「疲れや気力の無さを強く感じた」(34.6%)、「生活が不規則になって朝起きられなくなってしまった」(27.4%)、「一日中憂うつで何にも興味が持てなくなってしまった」(22.0%)、「相談相手がなく孤独で落ち込んでしまった」(21.1%)、「不眠や食欲減退に悩まされた」(12.2%)、「パチンコやギャンブル、酒などに出費がかさんでしまった」(3.7%)などである。

「第2章 長期失業者の属性」を少し見てみるとこんな記述があった。

このように、今回の調査と前回の調査を比較すると、前回は定年退職を契機として失業が長期化した男性や、結婚・育児などの理由から退職して失業が長期化した女性などが多く、経済的逼迫度は比較的軽いと思われるグループが中心であった。これに対して、今回の調査では、20 歳代の若年層と60 歳以上の高齢層の割合は低く、30・40・50 歳代が長期失業者の主要部分を占めており、失業構造は今回の方がより深刻化しているといえよう。

「終章 政策的インプリケーション」から気になるところを抜粋。

  • 長期失業者の多くは、これまでの職業生活においてそれなりのキャリア形成をしてきた者が多いが、1990年以降の長期不況下で失業すると、その後は安定的な就業機会に恵まれず転職を繰り返すことになり、結果的に失業が長期化してしまったといった者が多い。
  • 面接では、やる気、態度、印象、人柄といった曖昧な情報が重視されると共に、職業経験・能力、入社後に期待される成果といったものが厳しく問われる。長期失業者の多くは、この面接のハードルを突破できない。突破するには、独力では無理であり、専門家による指導・訓練が必要である。
  • 再就職するためにこれからどのようなことをしてみたいかという質問に対する回答として、「生活のリズムを崩さないために毎日どこかに通うこと」や「同じような境遇にある人達が集まって情報交換ができる施設に通うこと」が、高い回答率を示している。
  • 長期失業者を発生させないためにも、また長期失業者を再就職させるためにも、規則的な生活のリズムを崩さないような仕組み、さらには離職後早い時期に同じ専門家(特定個人担当者)によるきめ細かなカウンセリング、行動計画の作成、職業訓練の実施といった一連の再就職支援プログラムが、円滑に実施される社会的システムを整備・拡充する必要がある。

三番目の項目ははハローワークへのジョブクラブ(就職クラブ)の展開につながったと思われる。

もう一つは人事制度についての調査。
主要企業における賃金制度改革の変遷に関する調査〜大手電機メーカーにみる 1990 年代以降の賃金制度改定(I)〜(2006/09/01)
こちらは日立と松下の調査結果。あとで読むためにメモ。

表紙・まえがき・執筆担当者・目次
第Ⅰ部 調査の目的と方法
第Ⅱ部 調査結果の概要
第Ⅲ部 大手電機メーカーにみる1990年代以降の賃金制度改定
第1章 株式会社日立製作所
第2章 松下電器産業株式会社
第Ⅳ部 資料 〜各制度改定の概要 (時系列)1 〜