男性育休取得率向上は、スローキャリアを実現する試金石か

いつも考えがループして止まってしまい、なかなか書けないテーマが「男性育休取得率の向上」。
id:roumuyaさんが何度か取り上げていらっしゃるので、まとまってないがひとまず今思っていることを書き出してみる。

男性の育休取得に必要な意識改革(吐息の日々〜労働日誌:2006/08/29)

日本男性の意識を「仕事ができる人が、キャリアを多少犠牲にしても育休を取るのがカッコイイ」ひいては「(普通の人?が)キャリアを多少犠牲にしても育休を取るのはすばらしい生き方」という方向に変えていかなければ、男性の育児休業はなかなか進まないでしょう。

男性の育児休業たった0.5%(吐息の日々〜労働日誌:2006/08/10)

大企業ほど取得率が低いというのも、やはりキャリアをめぐる競争環境の厳しさの影響があるのではないでしょうか。全員の顔が見えるような小規模な企業であれば、キャリアも比較的見えやすく、競争もゆるやかでしょうが、何十人、何百人の同期入社者が昇進を競い合う大企業となると、呑気に育休を取っていては取り残される、という不安感を持つのもうなずけます。もちろん、これだけが男性の育児休業が拡大しない理由だということはないでしょうし、最大の理由でもないかもしれませんが、しかし一つのハードルであることは間違いないのではないでしょうか。

男性についても、仕事で成功するのもたしかにすばらしいキャリアではあるが、仕事もそこそこ、家庭もしっかりと、という両立キャリアも同じくらいに立派で幸福で尊敬されるすばらしいキャリアだ、という意識が広がっていけば、男性の育児休業取得のハードルが多少なりとも低くなるのではないかと思うのですが、どんなものなのでしょうか。

本当は「両立キャリアは当たり前」の世の中になってほしいのだが、そこまでの通過点として「かっこいい」という価値観もありだろうとも思う。

男性の育休取得が進まない主な理由は、このroumuyaさんのエントリに書かれている通り「職場に迷惑がかかる」「出世に響く」だと思う。
実際、ただでさえ少ない人員でまわしているのに育休で休まれるなんて迷惑だと自分も感じているわけだし、育休を取っている同僚の女性たちが昇進・昇格が激しく遅れている現状を斜めに見ている男性たちには「自分はそこまでして育児にかかわるなんてできない」とか、「あんなふうに長期で休んで迷惑はかけられない」と思うのも無理もない。
しかも、成果主義人事制度で評価が低いと賞与や給与にもろに反映する昨今では、もらえるお金が明らかに減ることになるわけで、切実な問題だ。きれいごとは言っていられない。

しかし一方でこうも思う。共稼ぎで妻に育休を取らせている男性たちは、極端に言えば「妻のキャリアを犠牲にして自分の幸せを追求するエゴイスト」ではないかと。「職場に迷惑がかかる」「出世に響く」ことを自分の妻にはさせているということではないか。(仕事を辞めることを余儀なくさせた専業主婦の夫も同じ)
まだはびこる「三歳児神話」など、育児を母親だけの担務としておきたい圧力は依然として大きく、育児で我が身を犠牲にしない女性は陰に陽に非難される現実がある。そんな現状の中で、自分のキャリアの優先順位を落としてしまう女性が多い。でも本当にそれでいいのか。

高齢化社会で労働力の確保が死活問題となる日本では、ワークライフバランスを実現して多様な人材と多様な働き方をする人たちで仕事をしていかないと、たちゆかなくなることは目に見えている。育休で欠員となった人員補充の柔軟な対応(元社員のテンポラリワーク活用)や、育休人員の人件費の人事一括負担(現実は所属部門の人員としてカウントされていることが多いと思う)、在宅勤務等の普及、育休での遅れを処遇としてもっとフラットに扱う(現在は一旦遅れると取り戻すのに倍以上の時間がかかる事例を多く目にする。だから二人目も作りにくい)等々、本人の意識を変えていくのはもちろん、本人も職場も育休をポジティブに受けとめられるしくみが必要ではないかと感じている。