今日の読売一面トップは「ニートに発達障害の疑い」の見出し

毎度おなじみ読売新聞。RSSリーダーで見出しを見た瞬間「何じゃこりゃ!」。

ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も(YOMIURI ON-LINE:2006/08/24)

 仕事も通学もせず、職業訓練も受けていない15〜34歳の若者を指す「ニート」について、厚生労働省は就労支援の内容を見直す方針を決めた。

 ニートの一部に、「発達障害」の疑いのある人が含まれていることが、同省の調査で判明したため。実態をさらに把握したうえで、支援機関に心理などの専門職を配置するなど、きめ細かい支援のあり方を検討する。

記事冒頭のこの文だけ読むと「ええっ、ニートって発達障害が多かったの?」と思う人続出だろう。

 調査は今年6月、首都圏などにあるニートの就職・自立支援施設4か所を選び、施設を利用したことのあるニートの若者155人について、行動の特徴や成育歴、指導記録などを心理の専門職らが調べた。

 この結果、医師から発達障害との診断を受けている2人を含む計36人、23・2%に、発達障害またはその疑いがあることがわかった。

これって「発達障害を持つ人がニートになりやすい」ってだけのことじゃないのだろうか。それと「ニート発達障害が多い」ということとは別のことだと思うのだが。
それに、「行動の特徴や成育歴、指導記録」を調べたと言うけど、それだけで「発達障害の疑いがある」と言い切るのはどうなのか。
例えば学習障害(LD)が疑われる子どもが報告された場合、LD診断と個別指導計画の作成を目的として、こういう手順で調査されることが多いという。

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(1)行動観察・集団的知能検査での情報収集
(2)臨床心理士スクールカウンセラーによる心理アセスメント(ウェクスラー式知能検査 WISC-Ⅲ、K-ABC、ITPA等)
(3)教員、言語聴覚士による学力アセスメント(学力検査と「聞く・話す」領域の検査)
(4)医師又は作業療法士による行動アセスメント(医学的診断と運動感覚の検査)
(5)医師(または臨床心理士)による発達アセスメント(医学的評価と生育歴聴取)

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本当はここまでやったけどそれは記事にしていないだけなのかわからないが、それにしても割合が多すぎないか。通常の出現率は1%〜3%程度だったような記憶があるのだが。

しかも、「発達障害」って何なのかをきちんと知っている人は、関係者以外では多いとは思えない。記事ではこのように説明されている。

 発達障害は、生まれつきの脳の機能障害で、自閉症注意欠陥多動性障害などが知られている。コミュニケーションが苦手なことが多く、就職の面接試験で失敗を重ねたりするが、就職して存分に能力を発揮することも少なくない。

発達障害と言われる障害にはいくつかの種類がある。主なものを以下に挙げてみる。

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■広汎性発達障害
a)自閉性障害→社会性の障害、意思伝達の障害、興味や行動様式の著しい限定などを特徴とし、3際以前に発症。
b)アスペルガー障害→自閉性障害の3兆候である1)言語発達の障害 2)限局した反復的な行動 3)社会的関係性の障害 のうち、自閉性障害のような重篤な言語発達の遅れ、認知発達の遅れ、年齢相応の自助能力の遅れが認められないもの。

学習障害(LD)→全般的知能は平均的であるが聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力の内、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。中枢神経系に器質的損傷が仮定されている障害。
■注意欠陥性/多動性障害(AD/HD)→全般的知能は平均的であるが不注意、多動、衝動性などの特徴を持つ。中枢神経系の特定の機能障害ではなく、行動を制御する感情のコントロール機能や統合機能に障害があるとされている。

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ひと言で「発達障害」と言ってもその障害の程度や想定される原因はかなり違っているんで、こんなふうにひとまとめにするのは誤解を招いて危険ではないか。

就労していないからといってニートとしてひとくくりにするのではなく、もしも発達障害がある人も支援施設を活用しているならばそれに合った適切な支援をしてほしい、ということが記事の主旨だとしたらそれはまったくその通りなのだが、下手すると「ニートは心の問題」「発達障害のある人たちはニートになる」というレッテルを貼りかねない危険な記事だと思う。
と言うかそもそも「ニート」というくくりで未就労の若者を表現しようとすることそのものがおかしいのだと前から思っている。ニートは「状態」であって「属性」ではないのだ。

追記:
たまたま読売本紙を見たら、なんとこの記事今日の朝刊一面トップだったので、タイトル変更。一応囲みで発達障害についてはもう少し詳細な解説あり。また二面には発達障害者の9割が高校以上の普通学校を出ていて、就職時にコミュニケーション障害に気づくことが多いという追加文章も。そこまで全部Webに載せればいいのに、どうせなら。