ニート・フリーターに「社会性欠如」のレッテル貼って安心か

玄田ラヂオ経由で知った記事。読売新聞社の調査結果が記事になったものがサイトにも掲載されていた。

働くことが不安、社会性欠き孤立…ニート、フリーター
(YOMIURI ON-LINE:2006/05/29)

調査対象は以下の通り。ニート・フリーター本人ではなく、彼らの身近な人というのがミソ。

パネル4万7578人に質問。回答した2万102人のうち、「長く働いていないか、時々アルバイトをする程度の35歳までの男女(主婦、学生を除く)が身近にいる」と答えた者の中から、年齢、性別、居住地域を考慮して1500人を抽出
・サンプル内訳=男50%、女50%▽1都3県・近畿・東海50%、その他50%▽20、30、40、50歳代各25%

この人達に、「あなたの身近にいる、長く働いていないか、時々アルバイトをする程度の若者(おおむね35歳までの男女で、学生でも専業主婦でもない人)のうち、あなたが最もよく知っている人」についてどうか、という質問をした回答を集計したのが今回の結果だという。

 就労経験に乏しい若者に社会性に欠ける者が多いということは、関係者の間で言われていた。調査結果は、本人の周辺からの間接情報とはいえ、これを裏付けるものだった。社会に対する消極的な傾向は、学校時代の課外活動や外出範囲だけでなく、外出頻度、友人関係などでも見られた。

 こうした傾向は、一度も働いていない「未就労者」で最も顕著だった。もともと消極的だったのが、未就労状態が続くことにより社会と接する機会がさらに失われ、社会性の欠如に拍車が掛かってますます就職から遠ざかるといった悪循環の構図が見えそうだ。

とのことだが。

フリーターやニート、特にひきこもっているニート層へのアクセスは確かに簡単なことではないと想像されるので、周囲の人へのヒアリングから実態の一端をつかもうとする取り組み自体はそれなりに意義があると思うが、ずっと指摘されているニート・フリーターはさまざまな層があって、一括りにできないということを見事にすっとばした分析記事になっているのが実にいただけなく感じる。記事中にあるイラストなんかもう世間一般のイメージをそのまま作画したようなもので、悪意さえ感じるのは気のせいか。

何よりひどいと感じたのは自由意見として紹介されていたもの。

 本人について、20歳の男性は「本人が怠け者である限り、どんな支援をしても意味はない。本人の意識を変えることが必要」などと指摘。42歳の男性は「生きる意味などを教えるセミナーを受けさせてはどうか」と提案した。親に対しては、「親が何でも助け過ぎ、本人が働く必要がなくなっている」(26歳女性)、「親が果たすべき役割をしていない。何でも社会や学校のせいにしている」(36歳男性)など親の姿勢を問題視する意見が出た。

 一方、「企業が若者を育てる力が弱くなっている」(27歳女性)、「『やりたい仕事に就くことが良い』と教える学校が問題」(48歳男性)、「努力をしなくても欲しいモノが手に入る社会のあり方が問題」(50歳女性)などの見方もあった。

企業が悪い、社会が悪い、学校が悪いって、そうやって犯人探しをしている場合ではないと思うのだが。本当に「身近な人間」が言ってるのだとしたら、こんな身近な人間を持ったニート・フリーターの人達は気の毒すきる。

そんなにひきこもっている人達に興味があるなら、街角でホームレスのみなさんが販売している「ビッグイシュー日本版」に連載されている上山さんと斎藤さんの往復書簡コラムをじっくり読んでいただきたい。

参考記事:
ニートの6割、部活未経験…ネット調査で明らかに
(YOMIURI ON-LINE:2006/05/26)

「階級」本家、英の格差論(YOMIURI ON-LINE:2006/05/22)