「成長の危機 ひとと組織を救う多様なキャリア」

同じくWorksに高橋俊介氏とワークス研究所との共同研究として連載されている企画。メモを兼ねて要約。#の部分はyyamaguchiコメント。

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Works No.70 2005.06-07
第一回 環境・組織・個人に何がおこっているのか

企業とそこで働く個人を襲う「成長の危機」

■環境変化に対応できていない
ビジネス環境の変化
・変化によって必要になった人材が育成できていない

グローバル化ダイバーシティ
・製造と開発部門の分離
・現在の日本人男性正社員中心の管理職は多様な雇用形態に対するマネジメント能力に限界がある

事業再編の多発
・個人リスク→キャリアの陳腐化
・会社リスク→不要な人材の抱え込み

即戦力志向の高まり

■組織の強みは衰微、弱みは温存

業績プレッシャーの高まり
OJTが機能しない
新卒採用抑制の結果、社員世代別構成比率が中高年やバブル世代の厚い逆ピラミッド型になっている
→若手に責任ある仕事が任せられず、育成が進まない

Off-JT投資額の少なさ(先進27カ国で最低)

優秀であればあるほど「塩漬け」になる
人員削減で異動が困難、業務に対する要望やプレッシャーが強く新たな業務にチャレンジさせる余裕がない

■キャリアを切り開けない個人
自律的にキャリアを切り開いていく力はもともと日本では弱い

会社による個人の成長促進か進まない
個人の成長意欲や能力延びていない

若手社員
・成長実感が得られず、早期退職
・青い鳥を追い求める転職の繰り返し→基礎コンピタンシーが成長しない

中高年
・依然として「出世しない限り報われない」という根強い意識
・入社後5年から10年で実務スキルを習得後、社内ピラミッドを管理職として出世していくための「社内営業時代」を過ごす→「逆ピラミッド化」のため長期化→個人の成長停止
・持っていたスキルの陳腐化、新たなスキルや知識習得も難しい
・50代は突然のキャリアチェンジに強い抵抗感あり。経験に頼り勉強もしない傾向

#このあたり、「パラサイトミドルの衝撃」(三神万里子著)に出てくるパラサイトミドルたちの行動特性とかなり重なるところが多い。

パラサイト・ミドルの衝撃サラリーマン― 45歳の憂鬱 NTT出版ライブラリーレゾナント016

パラサイト・ミドルの衝撃サラリーマン― 45歳の憂鬱 NTT出版ライブラリーレゾナント016

■良いキャリア形成を分析する4つの視点
1.発揮能力と動機のマッチ
2.仕事の意味性
3.継続的成長
4.ワークライフ統合

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Works No.72 2005.10-11

【第三回 第三の道 キャリアチェンジ】

成長につながるキャリアチェンジ 4つのポイント

1.経験から学ぶときに、学び方の抽象度が高い
前職のマネジメント法を過度に一般化したり、かつての成功体験をそままあてはめたりすることなく、経験の中で無意識に「観察してどうすべきかを考える癖」を身につけていた。

学びの抽象度が低いと、先輩から教わったやり方をそのまま踏襲する、過去の経験から他の顧客に対しても「こうだ」と決めつけるなど、具体的で少数の経験に頼って判断、行動する「過度の一般化」が成長を妨げる。

2.新しい環境への適応力
「適応すれども同化せず」
過剰適応してしまっては自分ならではの付加価値を生み出せない
合理的に適応する部分と適応しない部分の使い分けをしている

3.違う環境に行っても自分の原点やテーマを大切にする
ジョブチェンジ、キャリアチェンジで新しい価値を生み出している人は、動機や価値に結びついた同じテーマをもち続けている。

転職時も核心部分は譲らないが、職種にはこだわっていない。漠然としたキャリアのゴールに急いで辿りつこうとしない。→懐の深い能力が身につき、深みのある成長が可能になる。

 ※一日も早く目標とする職種に辿りつこうとする人に予想される行動例
 ・自ら学ぶ余地は少ない教育体系のしっかりした大企業を選択
 ・希望職種以外の仕事から学ぼうとしない
 →キャリアチェンジによる成長を促す柔軟性が出てこない恐れがある


目的に向かって最短距離を行こうとせず、こだわりをもちながら遠回りをして成長を続けている

4.キャリアチェンジによる成長は、計画的にはできないと理解
予測が難しく、実際にしてみると予想外のことがたくさん起きる
#まさしく「Planned Happenstance」。

リスクを伴うキャリアチェンジに至るきっかけ
→「このままではいけない」という思いや漠然とした危機感
→一定の準備期間→機が熟したときにキャリアチェンジを実行

少しずつ変化を起こすのはキャリアチェンジのよい方法

キャリアチェンジを成長の糧にするには「危機感の存在」は欠かせない

#危機感を感じる時がキャリアの「転機」とも言える。ドリフトからデザインへのシフト時期。

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Works No.73 2005.12-2006.01

【第四回 正社員以外の働き方での成長と戦略の結合】

スターバックスコーヒー:顧客接点人材によるブランディング
・雇用形態に関わらずすべてのスタッフは「パートナー」と呼ばれる
・アルバイトと社員の差を感じさせない仕組み
学びの場と社内資格に挑戦する機会がアルバイト、社員の区別提供される
・すべての社員に取得が義務付けられている社内資格「バリスタ
アルバイトも役員も同等
OFF-JT研修と現場研修を経て取得
・ピアコーチ→所属店舗のパートナーの指導、育成担当
ファシリテーターバリスタOFF-JT研修講師の資格

スターバックスキャリアパスは4段階
バリスタ→シフトスーパーバイザー→ストアマネジャー→ディスクトリクトマネジャー
(ストアマネージャー以上は正社員)

IBMビジネスコンサルティングサービス:プロがプロを育てる人材育成システム

・入社するコンサルタントは正社員かプロフェッショナル・コントラクト社員、いずれかの雇用形態を選択する
後者は有期雇用で期間は2〜3年。2005年度新卒社員のうち40%が後者を選択。

コンサルタントとして実績があり、人を育てられる人物」は業務委任契約も可能。
−正社員で囲い込むことが難しい、自立した人材を活用するための仕組みと言える

インディペンデントコントラクター(IC):専門性の高い仕事を有期で請け負う独立・自立した個人

ICという雇用形態によって成長機会が広がり、持続的な成長も可能になった
−会社員時代は組織の中で上からの指示に従うことが最優先
−顧客に合せて研修内容を改善していくようなことはなかった