The Wall Street Journalでのニート記事

「ニート現象が日本に衝撃」米紙報道(asahi.com)

身を粉にして働いた40代、50代の親たちが、子供を会社勤めで同じ目に遭わせたくないと考えるケースが多くなってきたと指摘。さらに、子供の結婚まで同居し、金銭面で支援する伝統がある日本では、米国に比べ、子離れの必要性を親が感じることが少ないとしている。

元ネタはThe Wall Street Journalのこちらの記事。(要有料登録)
In Aging Japan,Young Slackers Stir Up Concerns(高齢化日本で若い怠け者が引き起こす心配事)
以下概要。

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いかにもオタク的ビジュアルのイラストの「Yuta Isozaki」さんがニートの例として冒頭登場。engineering college(専門学校?)を中退し、コンビニ店員の職にもつけず、テレビゲームとアニメを見て過ごすという。

日本では「ニート」という題名の短編小説集が出版され(おそらく絲山秋子氏の小説のこと)、政府が実施したjob-searching program(おそらく「若者自立塾」のこと)は参加者224名で就職者が18名だったことなどを紹介。

アメリカではニートは統計を取っていないが、16才から24才の9%が学校にもいかず就労もしていない。ただし日本と違って既婚者も含んでいる。
ニート問題は高齢化が進む他の国にも大きな影響がある、と示唆。

ニートは2020年までには120万人になる」とエコノミスト門倉貴史氏の予測。労働力に加わらない人たちが増えていくことで、2010年から2020年にかけての経済成長を0.5ポイントずつ下げていくと言う。「経済は成長しないし、ニートにならないよう教育することも厳しい」

ニートの増大は企業の雇用の変化の影響。1990年から10年間、企業は正社員を減らして非正規社員を増やし、若干復興の兆しが見えてきても新卒の就職はまだ大変だ。

自らがハードワーカーだった40代から50代の親たちは、自分の子供には「夢の仕事」を追求させようと支援する。
野村総研の調査で20代から30代会社員の四分の三は仕事にやる気を失っているとあった。

Yuta Isozakiの母、Misao Isozakiは大学卒だが結婚してからは専業主婦。夫は機械メーカー勤務の会社員で、育児の大変な時にはほとんど家にいなかった。
Misao Isozakiは自分の奪われたキャリアと夫の燃え尽きたキャリアに激しく失望し、子供には「夢の仕事」を追求させた。長女は音楽家の道に進めたが、息子は夢中になるものを見つけられなかった。
母は息子を心配し、犬の世話をまかせたり、鬱ではないかと医者に連れていってなんともないと言われたりし、最後の頼みでNPO育て上げネット」に連れていった。

「育て上げネット」の工藤さんは「夢の仕事」を実現することのみにごだわっている若者たちに「まず働き、次に考えろ」をモットーとし、彼らの目を覚ますべく、日本には30000種類の仕事があって、立った一つの完璧な職業にぶちあたる偶然なんか宝くじより低いのだ、と言い続ける。

Mr.Isozakiは単純に経験を積む時間--それはこれまで決して機会を得られなかったのだが--が必要だと感じている。高校ではただ勉強だけしていた。「本当に働くことを考えた時、自分がわかったことはどんな仕事をしたいのかわからない、ということだった。」

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ニート問題についての入門編として、わかりやすく書いてある記事だと思う。例の野村総研の調査結果がここでも使われているのは何とも苦々しいが。また、Isozakiさんのいかにもオタクな描写もあまりにステレオタイプでちょっとどうかと。

記事中紹介された絲山秋子氏の小説はこちら。

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