父子家庭だって援助が必要

離婚後親権を取るのは母親とは限らない。当たり前の話であるはずだが、世間からの感心が薄くなっていた感のある領域。
生活苦の父子家庭増加YOMIURI ONLINE:2008/01/30)

 以前勤めていた会社では、月に40〜60時間の残業があった。保育園のお迎えに支障がないようにと退職。その後の転職先も、「残業ができない」と明かすと「仕事を任せられない」と言われ、3か月で辞めざるを得なかった。

 職探しを続けたが、「『残業なし』を条件にすると鼻で笑われることもあり、面接さえ受けられない」と肩を落とす。現在は派遣社員として働いているが、月収は正社員時代より5〜7万円減って、20万円を下回る。子どもの病気で休めばさらに減ってしまう。家賃の安い部屋に引っ越し、保育料も所得に応じて減額されたため、生活はなんとか維持できているが、「派遣の契約更新は3か月ごと。子どもの教育費などを考えると、正社員で働ける場を見つけたい。残業が当たり前の雇用環境に疑問を感じる」と話す。

シングルマザーの皆さんが直面する壁とまさに同じものに遭遇している。しかし経済的支援は父子家庭は母子家庭に比べてかなり制限がある。

 国は母子家庭を対象に〈1〉子育てと生活支援〈2〉自立支援給付金などの就業支援〈3〉養育費の確保〈4〉児童扶養手当などの経済的支援を行っているが、このうち父子家庭も対象となるのは〈1〉と〈3〉だけ。厚生労働省家庭福祉課では、「父子家庭は母子家庭に比べ経済的に豊かであり、経済的支援よりも家事、育児支援が求められている」と説明する。

いくつか検索してみてみたら、野田市飯山市鹿沼市のように「父子家庭向け手当」を明記している自治体、「児童手当」として品川区苫小牧市岡山県新見市のように性別の記述なしで支援している自治体の他は、「養育している母または養育者(父母に代わって児童を養育している方)」を大賞としている「児童扶養手当」になっている様子。

厚労省担当者の「父子家庭は母子家庭に比べ経済的に豊か」という認識は一体いつの時代の話かと思ってしまうが、正社員以外の雇用が大幅に増えた今、性別で分ける意味はほぼないと考えられる。「ひとり親支援」として考えるべきだろう。
「父子家庭共和国」というサイトには「ひとり親が使える福祉制度」という参考情報がある。
問い合わせをするお父さんたちのためにこんな実用的なアドバイスも。

自治体の福祉担当課(児童課、こども課など)に電話、訪問をする際には、
○×市には、この様な制度があるらしいが、
私の住んでいるこの市にはないのか?
(怒ったり、おどしたりしてはいけません)

などという言い方をすると、嫌がられがちです。

 自分を名乗り、この様な状況ですが、この事情で、こんな事に困っています。
何か手助けをして頂ける方法はないでしょうか?
と丁重に、低頭平身で相談をする方が、
良い印象を与え快く対応していただけると思います。

先方も同じ人間です。また、こちらの状況を知り得ていません。
面倒がらずに一から、事情を説明し、理解していただきましょうね。

一方、JILPTのコラム「養育費の徴収と母子世帯の経済的自立」によると、「こどものいる離婚の8割近くは、妻が全児の親権を行っている」とのこと。養育費についてはこういう実態があるらしい。

2006 年現在、日本の離婚母子家庭のうち、養育費の取り決めをしている世帯は、全体の約3分の1に過ぎない(34.0 %)。また、実際に養育費を受給している世帯は、全体の2割未満(19.0 %)に止まる。一方、離婚して以来一度も養育費を受け取ったことのない母子世帯は圧倒的に多く、全体の約6割(59.1 %)を占めている。養育費徴収率の低さは、母子世帯の収入構成からみても、明白である。厚生労働省国民生活基礎調査」によると、元夫からの養育費や仕送りは、母子世帯収入全体のわずか5%に過ぎない。

母親ですらこうだから、父親が養育費を受け取っている割合はほぼゼロだろう。もちろん経済状態の影響も大きいだろうが、そういう「払うべきものを相手に払う」ことも一方で重要ではないか。

離婚時の養育費の交渉方法について、日本では離婚相手との直接対話が前提とされており、離婚相手の支払い能力に対する正確な調査が難しい。その結果、「相手に支払う意思や能力がないと思った」、「相手と関わりたくない」ことで養育費の取り決めをあきらめてしまうケースが多い。一方、アメリカではさまざまな養育費取立機関が存在しており、それらの機関を介して養育費の支払いを求めれば、プロフェッショナルによる支払能力調査や交渉が可能となるほか、離婚相手との直接なかかわりも避けられる。

手当の拡充もさることながら、こういった根本問題の解決に向けても、行政としてはぜひ動いてほしいと考える。