DV被害者への夜間の電話・メールや親族への接近も禁止に

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」いわゆるDV防止法の改正が行われた模様。
配偶者暴力防止法の平成19年一部改正法情報
こちらにある法改正概要(pdf)によると、保護命令制度の拡充として以下

(1)生命等に対する脅迫を受けた被害者に対する保護命令
(2)電話等を禁止する保護命令
(3)被害者の親族等への接近禁止命令

を挙げており、(2)では無言電話や連続しての電話、ファクシミリ、電子メール等の禁止や夜間(午後10時から午前6時)の電話・ファクシミリ・電子メールの禁止命令を被害者の申立によって発することができると明記している。

DVについて「ただの夫婦喧嘩」とか「逃げない方が悪い」「暴力を振るわれる方に原因がある」なんて言う人はよもやいないと思いたいのだが、まずはこの情報が掲載されている内閣府のサイト「配偶者からの暴力被害者支援情報」は一通り目を通してみて損はないと思う。
DV問題は一部の「おかしい人達」のものではない。暴力とパワーゲームでしかコミュニケーションできない人達が抱える共通問題なのだ。

1/15追記:
女性共同法律事務所さんの女性共同ニュースレターにわかりやすい解説あり。

 今回の改正でもっとも注目すべき点は、保護命令制度が拡充されることです。
 第1に、これまでは、配偶者から「身体に対する暴力」を受けた場合にのみ、保護命令を利用できたのですが、改正によって、「生命又は身体に対する脅迫」を受けた場合でも、将来、身体に対する暴力によって、生命又は身体に対する重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令が発令されることになりました。
 例えば、「別れたら殺すぞ」とか、「ぶん殴ってやる」とか、包丁などの凶器を持ち出されて「痛い目にあわせるぞ」と脅された場合などです。

肉体的に怪我をしないと保護命令が出ないなんて今までが不十分だったわけだが、ようやく現実に即してきたと言えるだろう。

 第2に、6ヶ月間の接近禁止命令に加えて、被害者に対する電話や電子メールなども禁止できるようになります。
せっかく接近禁止命令が出ていても、配偶者からの電話や電子メールが何度も続いて、「戻らないといつまでも嫌がらせをされるのではないか」、「もっと怖い目に遭わされるかもしれない」という恐怖心等から、相手の下に戻らざるを得なくなったり、相手の要求に応じて接触せざるを得なくなったりすれば、生命・身体に対する危険が高くなり、せっかく接近禁止命令が出ていても、その実効性が失われてしまうため、電話等の禁止命令が設けられました。具体的には次の行為を禁止することができます。
1. 面会の要求
2. 行動の監視に関する事項を告げること等
3. 著しく粗野・乱暴な言動
4. 無言電話、連続しての電話・ファクシミリ・電子メール(緊急やむを得ない場合を除く)
5. 夜間(午後10時〜午前6時)の電話・ファクシミリ・電子メール(緊急やむを得ない場合を除く)
6. 汚物・動物の死体等の著しく不快又は嫌悪の情を催させる物の送付等
7. 名誉を害する事項を告げること等
8. 性的羞恥心を害する事項を告げること等又は性的羞恥心を害する文書・図画の送付等

あまりに詳細だったので掲記記事でははぶいたが、実際はここまで細かく明記されていた。と言うか、「汚物・動物の死体等」を送りつけたり、エロ画像送りつけたりなんてことが今まではあったということで、もう何と言うかそういうことをする男性の思考回路がまったく理解できない。コミュニケーション不全もいいところである。

 先に紹介したように、保護命令制度が「脅迫」の場合にも利用できるようになったことは、これまでは、どんなに恐ろしい脅迫を受け、現実的な身の危険を感じていても、直接の身体的暴力を受けていない(あるいはその証拠がない)というだけで、保護命令を申立てることができずに、避難後も怯え続けて生活せざるを得なかった被害者にとっては、朗報です。
また、実家に迷惑をかけたくないという思いから、長期間、親族との交流すら絶たなければならなかった被害者や子どもたちにとって、安心して親族等との関係が持てるということは、豊かな人間関係の中で社会生活を送るという意味でも、意義のあることではないでしょうか。

実際のDV被害者の方々の心境としてはまさにこの段落に書かれていることに尽きるだろう。