何で今さら「一般職」なのか

伊藤忠と丸紅が「一般職」復活、女子学生の応募殺到(YOMIURI ON-LINE:2007/05/28)

来春の新卒採用で、会社の補助的な業務に携わる「一般職」を復活させる動きが広がっている。学生にとっても長く働ける「安定した身分」が魅力なようで、就職戦線が学生に有利な「売り手市場」にもかかわらず、9年ぶりに再開した商社には女子学生を中心に約170倍の応募が殺到している。

 総合商社の伊藤忠商事と丸紅は、来春の入社を対象に、ともに9年ぶりに一般職の採用を再開した。伊藤忠は20人、丸紅は30人を採用する。

いろんな職種や働き方が募集されるのはいいことだと思うが、これって男子は採用されないのだろうか。一般職全盛期のバブル期とは違いダイバーシティのこのご時世、まさか「男性は営業、女性はアシスタント」なんて役割固定を復活させようというのではないだろうね、と。

また、給与体系やキャリアパスも違うということを果たしてどのくらい説明しているのか興味がある。一般職で働くということはスローな働き方を望むということだと思うのだが、それがどういうことなのか本当に学生たちにイメージできているのだろうか。

そんな微妙な違和感を持たせてくれるキャリア・コンサルタント氏のこんなコラムがあった。
揺れ動く一般職・総合職の選択(YOMIURI ON-LINE:2007/03/01)

強いて区別をつければ、一般職・業務職は地域密着型のプロを、総合職は転勤を伴う全国型のプロを目指す点であろうか。いまでは役割より働き方の区別になっている。

と言うのならば、

 男女雇用機会均等法の趣旨から言って、男子学生に門戸が開かれているとは言っても、まだまだ一般職・業務職への道は女子学生最大の受け皿であることに変わりはない。

なぜこれを当然のことのように論を進めるのだろう。

また、女子の総合職定着率が低いことを

 総合職には転勤がつきものだ。どの地域に配属されるかわからない。男子学生の場合、どこに配属されるかわからないという覚悟ができている。女子学生の場合、どこに配属されても仕方がないと心に言い聞かせているものの、採用地域で働きたいという気持ちが根強い。いざふたを開け、予想外の地域に配属となった場合、気持ちを切り替えようとするものの思い通りにいかない。慣れない土地での商習慣の違いに戸惑い、その上、重くのしかかる不慣れな業務でストレスが倍増してしまう。

とか

 また、意外と盲点になっていて、入社してからこんなはずではなかったと気づく問題に、接待という習わしがある。総合職には避けて通れないものである。「酒が苦手だから」「夜の接待はどうも」といっても、女性だから免除してもらえるというものではない。

こういう「仕事への覚悟の低さ」で性別でひとくくりにして説明されては何だかたまらない。

結局「女性は一般職で入社してもっと仕事がやりたくなったら総合職に転換すればいいじゃないか」と言っているように見えるのだが、誰もが転換できるわけではない。
前掲の読売の記事では

丸紅の場合は、本人の志望と能力次第で一般職から企画などを担当する「総合職」に転換できる仕組みを取り入れており

(強調は管理人)
と、「能力次第」であるということがきっちり書かれている。そのあたり、どこまで明示的になっているのだろう。

一般職を選ぶな、と言っているわけではない。ただ、いわゆる一般職相当の業務をしてきた30代の女性達から立て続けに「このままの仕事はいやだ」という相談を受けているため、そういう働き方が本当に本人にとっていいことなのか疑問を感じているのだ。
もちろん業務内容や責任範囲も違うだろうから一概には言えないと思うが、「こんなはずじゃなかった」と思うことのないように、もし思ったとしたら路線転換にはどのくらいのハードルがありそうかをやはり調べておくにこしたことはないと思う。