「放っておけば、新人はすべてをマイナスに感じてしまう。上司や職場の人たちがプラスの見方や感じ方を教えるしかありません」

タイトルはAERA記事に登場する、リクルートコミュニケーションエンジニアリング(CE)の船戸孝重さんの言葉より。
3カ月で辞めさせない会社(AERA:2007年06月04日号)
マネジャーや管理職対象の「価値実感体験プログラム」という研修で、上司が自分の体験から、会社や仕事の価値を新人に伝えようというものとのこと。
参加者にまず最初に「一日の業務で、新人に見せるとしたら、どの場面ですか。」という質問をする。なかなか答が出てこない。すると次にこう聞いてみる。

では、仕事に喜びを覚え、意味を感じた体験は何ですか。

これならば何かしら思い出すものがあり、自分の体験を自分の言葉で話しだすようだ。
そういう「自分の体験を自分の言葉で話す」ことがミソなのだろう。

ちなみに新人がたいてい遭遇する場面へのプラスの見方、マイナスの見方例は以下の通り。

■新人が最初の1年で遭遇する共通場面の例

●配属が思い通りにならない
<プラスの感じ方>
・学べることはたくさんある
・ここでできることをやって力をつけよう
<マイナスの感じ方>
・こんなことをやりたいわけじゃなかった
・つまらない仕事だ

●基本的な小さな仕事・ルーティンの仕事
<プラスの感じ方>
・これは大事な仕事なんだ
・これからの仕事の土台がここにある
<マイナスの感じ方>
・何のためにやっているのか分からない
・つまらない仕事だ。いつまで続くんだ

●小さな向上・小さな成果
<プラスの感じ方>
・少しは進んでいる
・このようにやっていけばなんとかなる
<マイナスの感じ方>
・これくらいじゃダメだ
・次のことが気になる

●報・連・相
<プラスの感じ方>
・疑問や違和感を率直に言っていいんだ
・上司は報告・連絡・相談を待っている
<マイナスの感じ方>
・どうせ聞いてくれない
・こんなことを報告しても意味がない

●山積みの仕事
<プラスの感じ方>
・一つ一つできることからやっていこう
・どこまで進んでいるかをきちんと報告しておこう
<マイナスの感じ方>
・やってもやっても終わらない。ずっとこうなのか?
・こういう仕事の配分はおかしい

●ミス
<プラスの感じ方>
・二度と同じことを繰り返さないようにしよう
・仲間はありがたい
<マイナスの感じ方>
・自分はダメだ
・自分だけの責任じゃない

●なかなか成果が上がらない
<プラスの感じ方>
・少しでも前に進んでいると感じる
・ここまではできた、あとは先輩に相談しよう
<マイナスの感じ方>
・このままではダメだ、結果を出さなければ
・自分には能力がないのでは

●結果
<プラスの感じ方>
・成功をこころから喜ぶ
・結果を真っ正面から見る
・次に生かす
<マイナスの感じ方>
・終わってほっとする
・落胆する、仕方ないと思う
・評価を怖がり、真っ正面から見ようとしない

私が聴くのは、仕事柄仕方がないのだが「マイナス」のオンパレードだ。本当に、見事なくらいこれらの場面を上げ、マイナスの感じ方ばかりを口々に言う。マイナスの背後にあるのは、経験不足からくる視野の狭さと自信のなさ、そして不安であり、放っておけばそうなるのは当然だろう。そんな時こそ、きれいごとでなくでも迎合するのでもなく、自分の言葉で自分の仕事のことを語る先輩の存在が大切なのだと心から思う。