クリップ:少子高齢化地域の医療崩壊の現状

少子高齢化の進む高知県から見た日本の未来(日経メディカル:2007/01/13)※要無料会員登録
ぜひ全文お読みいただきたい内容。

 「高知県の地域医療を語ることは、10年先の日本を語ることだ」とよくいわれますが、別の言い方をすれば「何の改革も行われなければ、近い将来、日本はこうなる」ということなのだと思います。高知県在住の医師として、高知県の今を紹介します。

 高知県は現在、高齢化率25%、1986年から人口流出で県人口が減り始めて中山間地区から人がいなくなり、90年からは死亡者数が出生数を上回る自然減、県内でも高知市以外の市町村から高知市へ人口が移動しています。就労年齢の人たちが高知市に集中し、残された親世代が入院した結果、高知市以外では昼間歩く人の姿を見なくなってきました。県民所得が低いため共働きの比率が高く、親の介護をしないので、社会的入院が多くなっています。

社会的入院が多くなった地域は、
急性期医療ができなくなる→民間病院の医療機能喪失(虫垂炎も救急病院行き)と医療の機能低下を起こし、それは公立病院にも進んでいったという。

 民間病院の医療機能は90年代前半に失われましたが、中小の公立病院は90年代後半から機能を失いました。中小公立病院は医師不足で、既に2000年から急性期医療ができなくなっています。さらに人口79.6万人の県に2つもある救命救急センターも、循環器内科と心臓血管外科、整形外科の医師が病院を去ったことで予定業務しかできなくなり、2006年になって緊急のPCIや手術が必要な患者を大手の民間病院へ転送するようになりました。

 こうして医療機能を失った病院は、将来的な介護療養型病床の廃止を明示し、医療機能を評価した2006年度の診療報酬改定で、ついに破綻を迎えました。高知県内には、95年には163の病院がありましたが、2006年は131病院、2007年にはさらに半減すると言われています。今後、医療機能を失った病院は、ナーシングケア、ホームヘルスケアなどの機能を保つことで生き残るしかないでしょう。

これは高知のみならず、北海道や東北でも現に起こっている現象とのこと。マスコミが取り上げなければならないのは本来こういう構造的な衰退ではないかと思うのだが、現実はセンセーショナルな「事件」ばかりがクローズアップされ、地域医療はますます壊されていってるように感じるのは私だけだろうか。