職場における臨床心理学的介入留意点

坂野雄二他著「臨床心理学」より。

■職場におけるカウンセリング機能
啓発的活動〜心身の健康維持と増進
・個人のストレスへの耐性強化
・心理問題予防のための職場の物理的・人的環境整備
・心身健康管理システムの整備
・管理職対象の部下の健康教育の充実  

相談・援助活動
・さまざまな心理的問題をもった人たちを対象とした指導・援助活動

■考慮点
・不安への対処を考える
 「いやだ」「こわい」「イライラする」といった不快な主観的体験、ドキドキしたり冷や汗をかいたりという自律神経系の反応の変化、ストレス対象からの回避や逃避等の行動や態度での変化が必ず起きる。この3つの変化に対応して対処する方法を身につける。行動療法的アプローチが効果的。

・個人の特徴を客観的に理解する
几帳面、完全主義、過度の真面目さ→不安を感じやすい人やストレスに潰されやすい人にある程度共通して見られる性格や行動の特徴

一見活動的で頑張り屋、能率屋→バーンアウトの危険

タイプA行動パターン(冠状動脈性心疾患:CHDにかかりやすいタイプ)→常に時間的切迫感、緊張感、焦燥感を持って速く行動し、熱中的、精力的、持続的に目的遂行に向かって没頭し、他者への競争意識、敵意性、攻撃性が強い

・早期発見の重要性
行動の変化(ex.仕事の能率の変化、注意集中困難、職務遂行上見られる過度の緊張、無断欠勤等)
態度の変化(ex.一見したところは直接的な原因が見つからないのに急激に上司や部下との人間関係がうまく保てなくなった)

・社会的支援ネットワークの確立
直属の上司だけでなく、他の上司、部下、同僚、などの人的ネットワークの中での取り組みの方がむしろ有効
神経症心身症の場合、医師、法律専門家、ケースワーカーといったさまざまな専門家との連携をはかる→カウンセラーは人的ネットワークのキーパーソン

臨床心理学 (ベーシック現代心理学)

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