放送大学で「感情的浮気と身体的浮気に対する嫉妬の男女差」について聞く

少し前の放送大学のラジオ講義「現代の社会心理学」の第五回「進化と社会行動」をなんとなく聞いていたら、いきなりタイトルのような言葉が耳に飛び込んできてびっくりした。
そのあとも男性間競争に関する仮説の検証として殺人に関するデータを使っただのといった刺激的な話題が続いたので、本屋さんでテキストを買ってしまった。
そこからの抜粋を少々。

まず「性的嫉妬」の項。

配偶システムが基本的に一夫一妻であることは、ペア外交渉(浮気)がまったくないことを意味するわけではない。ペア外交渉によってオスは、子どもの数を増やせる可能性がある。一方でメスにとっても、配偶者が不妊であった場合のリスク回避や、より優れた遺伝形質をもつオスの子どもをもつなどの利益がかんがえられるからである。(Birkhead,T.R.,& Packer,G.A.,1997)実際、鳥類には一夫一妻の種が多く見られるが、ヒナの遺伝子を調べると、ペア外のオスのヒナが、多い場合には3割もいることが知られている。

3割とは。びっくり。
あのおしどりとか丹頂鶴とか、一見仲むつまじそうに見える動物たちも実は婚外交渉があったりするわけなんだなあ。いやはや。

性的嫉妬はこうした「浮気」を防ぐ配偶者防衛行動のひとつとして深化したと考えられる。嫉妬によって配偶者を引き止める行動が引き起こされたり、また嫉妬が攻撃行動を引き起こすことで、攻撃を避けたい配偶者を引き止める効果をもつこともあるだろう。

ジェラシーストーム。思い起こすのは「危険な情事」。まったく逆パターンだが。

ここで相手の浮気により被るリスクを考えると、女性にとっては、配偶相手が別の女性に感情的結びつきを感じ、そちらに資源投資先を変更することから被るリスクが非常に大きい。一方男性にとっては、配偶相手のペア外交渉の結果、他人の子どもの子育てをするリスクが非常に大きい。そのため女性は、配偶相手の感情的浮気に対してより敏感に反応し、一方男性は、身体的浮気に対してより敏感になるよう進化したと考えられる。

ほおおおおおお。
というわけで、実験した人がいるそうだ。バスという学者さん。しかもアメリカ、韓国、日本の三カ国で。
その結果はこちら。
テーマは「性的嫉妬の性差」。二者択一の強制選択法で、身体的浮気と感情的浮気のどちらにより嫉妬を感じるか尋ねたもの。太字は多かった方の性。左の数字が男性で、右が女性。

身体的浮気についての嫉妬は

アメリ76% 32%
韓国 59% 19%
日本 38% 13%

感情的浮気についての嫉妬は

アメリカ 24% 68%
韓国 41% 81%
日本 62% 87%

性差もさることながら、国での違いもなかなか興味深い。
と言うか、日本人は男性も女性も「感情的浮気」に対する嫉妬の方が強いという結果に見えてしまうのだが。あれ?

殺人についてのデータは詳細は省略するが、配偶者、資源、地位を獲得していない者達の間で男性間の争いは激しくなるだろうという仮説のもとに調査され、カナダでの男性での殺人率は20歳〜24歳をピークに減少していくが、日本では団塊の世代の殺人率がもっとも高い、というこれまた興味深いデータがある。この点についてはまだ明確な説明がえられていないそうだ。

尚、テキストの「進化と社会行動」の章の最後にはこのような注意書きがある。

最後になるが、本章で使われている「〜が必要である」「〜のほうが良い」などの表現は、倫理的価値を含意するものではないことを強調しておきたい。それらは、生物学的進化の視点から「必要」「良い」ということに過ぎない。また本章では、行動の機能や意味について論じたが、それは、これらの機能や意味を人々が実際に意識していると主張しているわけではないことも強調しておきたい。これらの問題を、半ば意識的に混同するような議論が時に見られるが、注意する必要がある。

つまり、「浮気のススメではないからね」ということか。

現代の社会心理学 (放送大学教材)

現代の社会心理学 (放送大学教材)