「ミニ経営者的な企画経験」ばかりが仕事の中での貴重な経験とは限らない

山崎元さん、いつものことながらいいこと言ってる。

勤めている会社の利用価値山崎元の転機晴朗Vol.79)

会社の中でする経験については、転職関係の雑誌などでは、ミニ経営者的な立場で新しい仕事を企画するような種類の経験が「貴重な経験」とされるケースが多いように思われるが、これはこの種のメディアでは、経営企画や人事寄りのコンサルタントなどがコメントするケースが多く、彼らが好むような「マネジメント指向の前向きな青年像」の方向に評価の偏りがあるからのように思う。

この種のミニ経営職的体験も貴重だが、転職して会社を変わった後で本当に役に立つのは、仕事に伴ういわゆるバックオフィスの事務処理の流れ(特に仕事に関する情報がどう扱われるかと、お金の動きに関する、手続きと権限)のような、会社が長年かけて築いて来た実務の積み重ねに関する知識であることが多いように思われる。新しい会社に行ってから、戸惑わないためにも、また、ビジネス常識の基本を疑われないためにも、現在の会社で自分の仕事の周辺がどのように機能しているかに関する知識は重要だ。

また、「営業」(セールスの意味での「営業」)の方法と考え方は、同業種の中でも会社によって意外に大きく違うものだ。「営業」は、あらゆるビジネスの推進エンジン的な役割を果たすものなので、自分が直接関わらない場合でも、今の勤務先の営業ノウハウを知っておくことは、次の職場でも大いにためになることがある。

プロジェクトを立ち上げるとか、そういう企画的なことだけが「自分の売り」になるのではなく、むしろ仕事というものの構造をしっかり知っていることが、結果的にはどこに行ってもとまどわずに地に足つけて仕事ができる力になる、ということ。