薬物常用者には刑罰より支援を

ボーダーレス化する薬物乱用の実態 再犯を防止するには依存症の治療が最重要」(nikkeibp.jp SAFETY JAPAN2005)より。

この数字はちょっと衝撃的かもしれない。

日本にはおよそ200万人の覚せい剤乱用者がいるとされている。これは全国の20歳以上の男女2000人に対し、「あなたのまわりで覚せい剤を使用している人を知っていますか」というアンケートの回答から得た数の比率を日本の総人口に当てはめたもの

1億に対して200万人。ということは、2%。100人に二人は覚醒剤常用者がいるかもしれないのだ。
アジア太平洋地域アディクション研究所事務局長 尾田真言氏へのインタビューを中心に記事は進む。

 「警察は多額の費用をかけて薬物の犯罪者を捕まえていますが、捕まえた後は裁判にかけて刑務所に入れるだけ。その間、何の治療も行われません。さらに、覚せい剤であれば初犯者は判で押したように懲役1年6カ月、執行猶予3年という判決が下ります。つまり逮捕されてから執行猶予で釈放されるまでの数カ月間、薬物の使用をやめるためのきっかけが一切与えられないのです」

と言う現状から、薬物犯罪者たちを「依存症患者」としてとらえた治療の必要性を訴える。

そうした事態を打開するために尾田氏らが参考にしているのが、1989年にアメリカのマイアミで始まった『ドラッグ・コート』と呼ばれる制度だ。薬物によって逮捕された人(暴力犯罪者はのぞく)は刑罰か治療かを選択。治療を選んだ人は、1〜3年かけて普通の社会生活を営みながら治療プログラムを受けるという制度だ。

この結果、「マイアミではドラッグ・コート修了者の再犯率は年平均わずか6%であるという」。
治療の中心となっているのはグループセラピー。国内の事例としては、以前も記事で紹介した川越少年刑務所ですでに取り組まれており、効果も出ている。(「川越少年刑務所法務教官 篠原康夫さんasahi.com

ただ、難しいのは、篠原さんも言っているが、強制では効果が出ないこと。本人がその気にならないと難しいのだ。そういう意味で尾田さんの言う

 依存症回復には、「もう自分ではどうにもできないから助けて欲しい」という「底つき」の状態に早く到達させることが大切である。そこまでいかないと、本人がリハビリ施設に行く気を起こせないのだ。

ということを周囲もわかっていないと、無意味な支援をしてしまう恐れがある。
薬物だけでなく、アルコールやギャンブル等の依存症はすべて基本は同じなのだろう。

尾田さんが代表を努めるアジア太平洋地域アディクション研究所(略称アパリ APARI)のウェブサイトはこちら。「薬物依存症などの、様々なアディクション(病的依存)問題に関する調査・研究」「 薬物依存者やその家族に適切な回復プログラムを提供し、再発予防、回復支援、社会復帰をサポート」「それらを支える人材育成」を行っている。