労働政策フォーラム開催報告「 ニート ― 若年無業者の実情と支援策のあり方を考える ― 」

ニート問題を語ろうとする人は必読のレポートでしょう。
小杉さんの調査分析とパネルディスカッション。

ニート状態を経験した 50 人の若者にインタビューをしたのですが、中学のときから学校に行かなくなった人や、大学を卒業・就職してからニートなった人など、ニートになる時期はさまざまです。彼らを表すキーワードとして、「刹那を生きる」、「つながりを失う」、「立ちすくむ」、「自信を失う」、「機会を待つ」という5つがあります(表参照)。必ずどれかに分類できるということでなく、複数の要素が重なり合っている場合も多いと思います。

工藤さんNPOを運営する上での苦労していること。

ニートの人の働く場所を確保することです。そのためには地域の協力が必要です。地元の立川市は企業との架け橋になってくれていますが、他の自治体にも広がればいいと思います。最近、大企業から寄付のお申し出があるのですが、もちろん寄付は大変ありがたいけれど、何よりも必要なのは仕事を体験できる場所なんです。お金だけではニートから脱却させることはできないところに難しさがあり、これからも地道な活動が必要だと感じています。

長須さんの「キャリア教育」への懸念と実感。

キャリア教育の概念が、最近、極端に仕事に偏る傾向にあると感じます。しかし、本来、キャリアというものは仕事だけではありません。生き方そのもの、どこに誰と住んで何を大切に生きるか、ということが仕事の前にあって然るべきです。もちろん、仕事が決まれば、それに合わせたライフスタイルもあり得るという逆の考え方もあるでしょうが、基本的に仕事だけではありません。インタビューした岩手県ハローワークのベテラン相談員によると、若い人で仕事を継続できる人は、生活全体の中で仕事というものを捉えることができる人だそうです。仕事ができないとダメな人間、正社員に採用されないのは自分に欠点があるから、などという考え方を助長させないためにも、職業・仕事で自己実現を目指す教育のあり方には疑問を感じます。私は、好むと好まざるにかかわらず、与えられた場で、与えられたことを遂行するという、社会的に無名な一人の人間として人生を送るのが一般的な生き方だということを教えていきたいと思っています。

自分自身も含めて、「生活全体の中で仕事というものを捉える」ことができている人たちが果たしてどのくらいいるのか。そういう意味でも、ニートという存在は決して遠いものではなくて、「もう一人の自分」と捉えていいものだと感じている。