篠〓武久(2004)「非就業・非在学・非求職中の若年無業者(NEET)に関する一考察―日本版総合社会調査(JGSS)から見るNEET、失業者、就業者の比較―」

今週H-Yamaguchi.netに掲載されたエントリ「ニートに就職支援ってどうよ?」で紹介されていた論文。基礎データとして押さえておくため読んでみた。
ニートと失業者で有意な差が出たのが「15歳時の親の収入」と「高収入を求める」。ニートは前者が「中企業」「官公庁」が多いのに対し失業者は「大企業」でそれぞれ有意、また後者はニートはマイナスに有意であるのに対し失業者はプラスに有意。ニートのサンプル数が少ない(26人)というのが統計的にどうなのか、統計はきちんと勉強していないので正直よくわからないのだが。
その上で、ニートが積極的に求職活動しない理由のひとつは、ニートが仕事に対して多くの条件(昇進の機会、仕事と家庭の両立など)を設定していることにある、と結論づけている。そしてニートを就業に近づけるためには彼らが仕事に設定している条件の緩和が必要である、と。失業者向けに実施するような就業支援だけでは不十分である、と提言。そしてなによりそういったサポートを受けようとする意欲を高めることが重要であると。
しかし何が彼らの意欲を高めることができるのだろう。地域の働きかけなのか。
地域が「ニート」を救う 玄田 有史(東大助教授)(asahi.com)

 現代は高度情報化社会と言われるけれど、案外「実感」できる情報は少ない。自分の目で見たり、自分の手で触れたりと、五感で体得した情報が足りない。それは自分の足で歩いてはじめて手に入る情報だ。その意味で、実際に自分が活動できる地域のなかで得た情報は貴重となる。そこで本当の情報を身につけ、人は生きる自信を獲得する。
 だからこそ、ニートやひきこもりのように、生きづらさを感じている若者を、大人たちは地域の仕事や活動へと、積極的に受け入れてほしい。自信が持てなくてニートとなった若者を救い出せるのは、「大丈夫、自分もやれば何とかなる」と心の底から実感させてくれる、地域の力だ。
 地域の力が不可欠なのは、何も若者対策だけではない。少子化に本気で歯止めをかけるなら、子育ての負担をすべて母親に負わせることなく、地域で見守る姿勢がいる。老人を孤立させないのも、地域に生きる人たちの連携だ。