「売り手市場」なんて噂に振り回されないで

少しでも「いい会社」に入りたい学生と、「いい学生」を採りたい企業の思惑は当然合わないわけだが、これが実態か。
【就活のウソ】大手は売り手市場じゃないYOMIURI ONLINE:2008/01/18)

 「売り手市場」「大手に行けるチャンス」と言われるが、2007年卒の内定率(10月1日時点)は、1998年卒より5・5ポイント低い68・1%にとどまった。2極化が進み、内定を多数取る学生がいる一方、まったく取れない学生もいる。企業側も規模による格差が広がり、08年卒の求人倍率は、従業員1000人未満企業の4・22倍に対し、1000人以上企業は0・77倍と、大手への就職の厳しさは変わっていない。

 夢が破れた学生は、以前なら中堅・中小にチャレンジしたが、最近は留年して再度挑むケースも多い。完全に、全体の雰囲気に流されて現実を見失っている。

それをあおっているのも実はマスコミだと思うのだが、それはともかく。

 国内で新卒を定期的に採用する会社は3万社あると言われているが、一部の学生は、自分の知っている50社程度で就活をしている。3万社と50社とでは、自分の適性に合った会社が見つかる確率は全然違う。

いや、それはたしかに正論だが、50社回るのだってかなりしんどいのではないか。それともこの数は就活学生にとっては「あたりまえ」の数字なのだろうか。そういえば先日会った学生さんもプレエントリーシートは150社登録したと言っていた。

 先入観を捨て、合同説明会や業界研究セミナーなどの機会を使って知らない会社を回りたい。ある技術では世界一とか、日本より世界でよく知られている―― といった企業がいくらでもある。企業を多く回ると、一つとして同じ会社がないということが分かる。就活が本格化する2月からは、1日5社程度行くのが普通だ。2か月間、毎日7社を回った学生もいる。

ここまで行くと、なんだかまるで四国八十八カ所巡りを見ているような気持ちになってしまう。本当に数だけがモノを言うのだろうか。


私が就職活動をしている人たちに何か言えるとしたら、「これが人生の終わりではない」ということだ。ここで人生の何もかもが決まってしまう訳ではない。むしろ、ここからが始まりなのだから、完璧な環境を与えてもらうことを求めると苦しくなる。労働基準法違反とか、セクハラパワハラなどのハラスメント、明らかに求められる能力が不足している場合を除けば、「ああ、ここでなら一緒に仕事できるかも」と思えるところで働いてみるのが一番だと思う。
それから、入社後の夢をいろいろと描くのは、入社のみが目的になるよりずっといいと思うのだが、その夢は必ず修正しなくてはならなくなる、ということも覚えておいてほしい。夢そのものだったり、夢に至る過程だったり、人それぞれ修正の幅は大小あるが、誰もがほぼ必ず「修正」はしなくてはならないということが経験的に言えるから。

就職は受験とは違う観点で選択しなくてはならない、きわめて難易度の高い活動だ。だからこそいろんな人の話を聞き、いろんな人の力を借りて、自分が働くことになる場を広く探索してほしいと思う。