希望学宣言シンポジウム
行ってきました。
#所感
希望というキーワードで社会の今を見ていく、貴重な取り組みだと感じた。
企業内キャリアカウンセリングの世界でも、「希望と現実の間で動けない」クライアントが多い。彼らがどう希望を「修正」していけるのか、どのようなアプローチが考えられるのか、ぜひ考えていきたい。
データ分析では、「周囲からの期待」と「希望の有無」に相関があったというのが「そうきたか!」という感じ。希望は関係性の中から生まれる、ということ?
玄田さんがブログ「玄田ラヂオ」で「満員御礼」と書かれているようにホールはほぼ満席。学生さんから高齢の方まで、年齢層も広かった。
「育て上げネット」の工藤理事長もブログで「希望学宣言フォーラムを聴講してきました!」と書かれていた。あの中にいらしていたとは。エントリ内で書かれている、希望が「便利な言葉として氾濫している」というのはとても納得。
「希望」って「夢」よりもっと主体的な関わりと時間軸のある「望み」というイメージなんだけど、個人的には。というような、自分にとっての「希望」って何?ということを徹底的に話してみる、まずはそこから始まるような気もしている。
以下開催概要と印象に残った部分のメモ抜粋。
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日時:2005年7月15日(金) 14:00〓16:30
会場:東京ウィメンズプラザ・ホール
出席者:( )内は専攻
東京大学社会科学研究所
所長/教授 小森田秋夫(ロシア法・東欧法)
助教授 佐藤香(計量歴史社会学・教育社会学・社会調査)
客員研究員 山田昌弘(家族社会学・感情社会学・ジェンダー論)
※東京学芸大学教育学部教授
教授 中村圭介(労使関係論・人事管理論・作業組織論)
教授 広渡清吾(ドイツ法・比較法社会論)
助教授 玄田有史(労働経済学)
助教授 永井暁子(家族社会学)※当日欠席
教授 橘川武郎(日本経営史・エネルギー産業論)
教授 仁田道夫(労使関係・労務管理の調査研究)
助教授 中村尚史(日本経済史・経営史)
プログラム
1.挨拶/小森田秋夫
2.希望学宣言!/玄田有史
3.データが語る希望の在り処〓希望と現実に関するアンケートから/佐藤香
4.対談:絶望の淵で語れよ、希望/山田昌弘、玄田有史
(休憩)
5.公開討論:希望学がめざすもの
★メモ
■希望学宣言!/玄田有史
年初に寝ていて唐突に思い浮かんだ言葉が発端だった。
「社会において希望は前提だった。しかし、その前提は揺らいでいる」
ニートとは「働くことに対して希望のない存在」。
根源的問いかけ:
○希望とは何なのか?
→ひとことで言えなくても、それについて語り合うことはできるはず
○社会は希望をどう変えるのか?
○希望は社会をどう変えるのか?
「希望を社会科学する」
○希望を、個人の性格、感情としてだけでなく、社会の原動力・産物として、考察
○データや記録など、社会に表現された客観的な事実を重視
○分野を超えた「対話」による発見と展開
→大学に閉じこもらない
希望のパラドックス(逆説):
「目的ではなく、プロセスとしての希望」
〓具体的に求めれば求めるほど得られなくなる。
〓けれど希望を持たないと得られない幸福がある。
希望を持つことで変わる
考え方→行動→社会との関わり
希望学の手法:
3年間の研究期間で
○調査・研究・分析
○「希望サロン」開催
→学外に場所を借りて少人数で「希望」について語る場所
いろんな人の知識や経験を聞かせてもらう
○一般向け書物の刊行
○その他
希望学の目指すもの:
○「希望」を語る共通言語の構築
→風通しのいい議論をしたい
○個々が希望を考え、行動するための、事実に基づくヒントを提示
→具体的に考えるきっかけ
○希望学から見た社会政策の提言
お願い
「希望について教えてほしい、学ばせてほしい」
■データが語る希望の在り処〓希望と現実に関するアンケートから/佐藤香
<性格や気質との関連>
性格や気質と希望には統計的な関連性がある
「希望がある」ことに対して
○プラスに有意だった項目
・独立心が強い
・チャレンジ精神がある
・好奇心が強い
・地道にするのは苦手
○マイナスに有意だった項目
・優柔不断だ
・いい加減だ
※「楽天的」なことは、希望とは統計的な有意性は見られなかった
<希望がある人とは>
[性格や気質]
独立心が強い人 チャレンジ精神がある人
好奇心が強い人 地道にコツコツするのが苦手な人
[個人の属性]
若い人
[周囲との関係]
子どもの時に家族から期待されていた人 友達の多い人
[経験]
子どもの頃に希望する職業があった人 挫折を経験している人
※性別や結婚しているか、子どもの時に裕福だったか、楽天的な性格か、現在高収入かどうかなどは関連がなかった。
■対談:絶望の淵で語れよ、希望/山田昌弘、玄田有史(発言一部抜粋メモ)
山田教授はどういった流れで「パラサイトシングル」から「希望格差社会」を書くに至ったのか?(玄田)
もともと専門は家族社会学。パラサイトシングルへのヒアリングを行っている内に、フリーターが多いことに気付いた。フリーター100人にインタビュー。彼らは夢は持っているけれど実現に向けてない。やっていることと見ている夢が違う。夢に向かって具体的に何をやっているか?と質問すると答えられない(山田)
その頃ヒントになったのが村上龍の「希望の国のエキソダス」。その中で村上龍は「希望とは努力がむくわれると感じる時に生じる・感じる状態」と書いている。そして90年代から希望を感じさせなくなる社会環境となっているのではないかと。
フリーターは今の仕事はむくわれていない。それを補償するものとして「夢」を
持っているのではないか。(山田)
希望がある時にはわざわざ希望について語られない(山田)
先程の調査結果から、挫折している人の方が希望を持っているということを考えると、「希望学」って「挫折学」をやろうとしている?「絶望」を伴うからこそ「希望」?(玄田)
絶望は努力が無駄になるもの。挫折は違うと思う。(山田)
挫折を修正。相手の挫折を否定せずどう関わっていくか。たとえば、野球選手を目指してリトルリーグから中学校・高校とずっと野球部でがんばってきた青年が限界を悟ってあきらめ、でもどうしたらいいかわからないでいた時、その話を聞いた大人が「ところでどうして野球をやろうと思ったの?」と原点を尋ねたら、「芝生がとてもきれいで、こんなところで野球できたらいいなと思った」と言う答を聞き、「じゃあ芝生ってどうなの」「芝生の会社に知り合いいるよ」と言う形で仕事が決まった例がある。他人がどう関わっていくかだろう。(玄田)
周りの人に自分の努力が評価されること。周りにどういう人がいるかが重要な気がする(山田)
苅谷教授によると、教育の現場では安易な希望が氾濫している。希望と現実社会を折り合わせるのが本来の教育ではないか。(玄田)
希望を持つ→そこからどう修正する
希望を種(seed)にする
どういうプロセスをたどったか?(玄田)
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希望学関連記事
* 2005年7月9日『読売新聞』(夕刊)「『希望』というの名の学問」(PDF)
* 2005年6月18日『朝日新聞 be』掲載 「希望の未来は何色か」玄田有史(asahi.com該当記事へリンク)
* 2005年5月17日号『週刊エコノミスト』フラッシュ!
「エコノミスト賞 3年ぶりに授賞式 三品和広、玄田有史両氏に」
* 2005年5月11日『朝日新聞』「『希望』は人生に不可欠?」玄田有史(PDF)
言及エントリ:
●シンポジウム希望学宣言に行った(stonco606の日記(仮))
#「weak ties」はパクリというより上手に広めてくれた、という感じが個人的にはします。
●希望学(Better Planet.)
#そうそう、T○Sのシールがあるテレビカメラが入ってましたね。ニュースで放送されたのかな?
9/15追記:「玄田ラヂオ」で、「全内容を希望学のホームページにアップしました。」とのお知らせあり。
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/declaration.html
また、「9月17日(土曜)18時〓19時にBS〓i 「荻野アカデミア 希望がみえない」で、シンポの内容が一部紹介されるそうです。」とのこと。