卒業生の転職も大学が面倒を見る時代

読んでどうにも微妙な気持ちになってしまう記事。

卒業生の転職、大学が支援…求人情報紹介や相談対応(YOMIURI ONLINE:2008/01/04)

 卒業生対象の就職支援を行う大学が次々に登場している。専用の窓口で求人情報の紹介などを行うものだ。バブル崩壊後の就職氷河期に卒業した“ポストバブル世代”の中には不本意な就職をせざるを得なかった人もいる。そんな若者の再挑戦を応援しようという試みだ。

この取り組み自体にどうこう言うつもりはない。93年から約10年間の氷河期と言われる時代の新卒の就職はゼロ採用の企業も多発して非常に厳しい時期が続き、本人達は選ぶ余裕もなかったのは間違いない。そんな彼らの足元を見たような採用だってあったと推測されるし、不況のしわ寄せが若年層を中心とした社会弱者に集中している時期だった。
確かにそうなのだが。

 この窓口は、立教大学の関連会社「立教企画」が2006年10月に開設した。在校生向けの窓口に、就職の相談に訪れる卒業生が増えたため、卒業生専用の窓口を設置した。仕事や待遇の面で悩んでいる卒業生らの相談に応じる。就職や転職を希望する場合は、適性を判断し、履歴書の書き方や面接のアドバイスもする。相談は無料。

 1年間で約300人が訪れ、そのうち約7割が30歳以下だった。特に、大学を卒業して数年以内の「第2新卒」と呼ばれる人たちが多い。同社は人材紹介業の認可を受けており、企業からの求人も増やしたいという。

何に対する違和感だろう。「大学離れできない若者」なのか、人材紹介業の認可を受けてまで取り組む「卒業生も取り込む大学の商売熱心さ」なのか。
もちろん大学が利益目的でそのようなことをしているとは本気で思っていない。彼らだって卒業生からそういった相談が来れば拒めないだろうし、かといって相談対応にかかるコストは誰かが負担しなければ続けていくことはできない。大学のブランドも利用した解の一つが「大学関係法人による人材紹介業」というのは自然な流れだと思う。
確かにそうなのだが。

 早稲田大学(東京)も04年、卒業生を対象にした就職支援を始めた。同大学などが設立した人材サービス会社「キャンパス」で、相談に乗ったり、求人情報を提供したりしている。約1000人が利用登録をしている。仕事面で悩みを持つ人が大半で、カウンセリングで解決することもかなりあるという。同社を通じて転職した人も年間で数十人いる。

 早稲田大学キャリアセンター長の金子博さんは「卒業生の相談に乗るために、専用の窓口を設けた。仕事で悩むことがあれば、母校に来てほしい」と話す。

ここでも人材サービス会社が設立されている。おそらく他の大学でも同様の取り組みが行われていると推測される。記事内では関西大学パソナと提携している事例も紹介されていた。

 日本人材紹介事業協会(東京)によると、職業紹介大手3社が仲介した今年度上期(4〜9月)のホワイトカラーの転職者は、25歳以下に限ると、4151人で、前年同期に比べ78%増えている。

78%という数字だけでは何も言えないが、印象としては単に景気がよくなったように感じられて転職しやすく感じるようになったというだけのようにも思える。

 若者の就職事情に詳しいキャリアコンサルタント上田晶美(あけみ)さんは「卒業生が母校を頼るのは、第2新卒者の再就職を支援する社会の仕組みが十分に整っていないから。生き残りを図る大学側も、卒業生サービスを充実させて大学の魅力を高めたいと考えている。若者の再チャレンジを支援する大学の取り組みは今後も広がるだろう」と話している。

第2新卒者の再就職を支援する社会の仕組み」の問題点もあるかもしれないが、そもそも3年生の秋に就職活動を始めて4年の春に内定が出始める、という今の仕組み自体が、「職を決める」ということに対して機能不全を起こしているとは言えないのだろうか。そこを放置したまま仕組みを作ったとしても、結局は「転職支援会社」が 増えるだけの話だ。

大学としてセーフティネットを用意するのももちろん必要だろう。ただ、やるならば大学ならではのものがあってもいいのではないかと思うだけだ。単なる職業紹介ではなく、卒業生のネットワークを使ったさまざまな職業へのアクセスを容易にして視野を広げるとか、やりようがあるような気がする。もちろん先駆者達はそういったことも実施しているだろうとは思うが、転職マッチングありきの相談事業にだけはしてほしくないと願う。

つらつらと書きながら、私の違和感は「卒業しても学生マインド」というものを醸成しないだろうか、という不安と、「大学の役割って一体何なのか」という根本的な疑問が元になっているような気がしてきた。

第二新卒なんて言葉を誰が作ったのかは知らないが、それを意識して2年目で退職か否かの狭間で悩む人達が多いと感じている。学生から社会人への移行期として、不安定なこの時期の彼らに対する必要な支援は本当に「第2新卒者の再就職を支援する社会の仕組み」なのか。大学に求めるとしたら、「自分にとって大切なことは何だろう」「自分にとって仕事って何だろう」という、むしろ原点に帰った思索を支援することのような気がするのは私だけだろうか。