フランスの出生率が上がっている理由

企業側の努力を施策として進めていただくのはもちろんやぶさかではないが、最近少子化対策ネタを見る度「大きい会社に勤める人は恩恵に預かれるけど、そうじゃない多数の会社に勤める人や自営業者はどうすればいいんだろう」という違和感がどんどん大きくなってきていた。そこに見つけたのがこの記事。
社会分析的ブログ: フランスに学ぶ少子化対策
フランスでなぜ出生率が高い(1.89)のかという考察だが、たとえば所得補助系の施策としては

1. 妊娠&出産手当(妊娠5ヶ月〓出産)……すべての費用について保険適用
2. 乳幼児手当(妊娠5ヶ月〓生後3歳)……子ども1人あたり約23,000円/月※
3. 家族手当……子ども2人で約16,000円/月,1人増えるごとに約20,600円/月追加※
4. 家族手当補足……子ども3人以上の1人ごとに約15,000円/月
5. 新学期手当(小学生〓)……約29,000円/年
6. 産後の母親の運動療法……保険全額支給
7. 双子もしくは子ども3人以上など……家事代行格安派遣(1〓2度/週)
8. 片親手当……子ども1人で約76,000円,1人増えるごとに約19,000円/月
9. 不妊治療……人工生殖にも保険適用(4回まで)

とこれだけ揃っていて、『子どもが3〓4人くらいいれば,「小学校教諭の月給程度」の手当が出るという(伝聞)。』ということらしい。さらに付け加えると「1人子供を生むと,手当てのほかに,年金受給に必要な労働期間が2年短縮され」るとも。また支出の抑制としては

まずフランスでは,学費がタダ同然である。幼稚園(これらこちらでは義務教育である)から大学まで,学校にかかる費用といえば,主に給食(cantine)やクラブ活動(atelier bleu)くらいであろう。「教育費」ではなく「教育関係費」がほとんど(なおフランスの文房具はアホほど高い。が,教科書はすべて貸与なので無料である)。

ちなみにフランスでは大学間格差が建前上ないことになっており,したがってみな居住地の大学に入ることになっている。この事実が実は2つの出費に利いてくる。まず,受験の過当競争がないため「(進学)塾」が存在しないこと。学校外で勉強する必要のある子は家庭教師をつけたりするようだ。が,特に困っている子以外はそういうのも要らないようである。むしろ芸術関係やスポーツなど,別の習い事をしている子が多いようだ。もう一つは,みんな地元の大学に入るため,下宿をする必要がないということだ。塾に行かない,下宿をしないという2つの意味において,上の制度が親の出費を低く押さえることに利いているのである。

これを具体的な数字で見ると

さて今般問題の大学授業料という点で見れば,日本では大学に入ると,学生1人につき,いちばん安いはずの国立の場合でも今年から535,800円/年になるので,4年間で2,143,200円の支出はまず確定である。しかも下宿などすることになれば,さらに支出は増える。

仮に大学の学費が無料ということになれば,907万円というところからこの214万円が引かれることになる。つまり693万円。ちょっとましにはなる。これが仮に地元の国立に行けば,576万円引く214万円で,362万円まで落とせる。ここまできてはじめて状況として(金額としてではなく――たぶん金額もそれくらいかかるのだろうということで)フランスと互角になる。現在の907万円では,その2倍から3倍の水準だということになる。

日本が企業努力に任せようとしている一方で、フランスはここまで国として腹を括っているということだろう。もちろん税金をどうするのかという原資の問題があるが、それは配分の話だ。重要だと思うことにお金をかける。シンプルにそういうことではないか。