太陽が東→南→西へと移動することを知らない受験生たち

リクルートの「キャリアガイダンス.net」に掲載されている、河合塾講師・飯田高明さんのエッセイより。

 先日、衝撃的な出来事があった。「太陽の移動方向」が鍵を握る入試問題の解説をしたときに、太陽が東→南→西へと移動することを知っていた塾生があまりにも少なすぎたのだ。これは入試以前の問題である。少なくとも、理系生には太陽の移動方向くらい知っていてほしかった。塾生に「学校で習ってないの?」ときくと、
「習ったけど忘れた」
「覚えてない」
「東西南北の位置がよくわかんない」
「まさか自分に必要な知識とは思わなかった」……。
私は非常に驚いた。驚きすぎて呆然となっていたところ、塾生の一人が
「それってそんなに驚くことなの?」……。
何と答えてよいか分からなかった。

つまり、「知識を覚えるという癖を身につけていない」ということらしいのだ。もちろんこれは「ゆとり教育」の生んだことである。その結果、親や教師の世代の「勉強とは覚えること」という常識が通用しない受験生達が生まれているという。
「覚える癖を身につけていない受験生」はいったいどうやって受験勉強をするというのか、“親や教師の世代”の私にはさっぱり見当がつかない。しかも、来年からは新過程最初の受験生がやってくるという。事態は一層悲惨になるということか。