東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week3「学習の科学」メモ

インタラクティブティーチング」ようやくweek3に追いつきました。(でももう既にweek4が始まっていますが…)

week3のテーマは「学習の科学」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。
●モチベーションについて、学習行動に焦点を当ててシンプルに構造的に説明されているのでスムーズに理解できた。

●「やる気」を「行動」に移す鍵となる要素のひとつが「結果予期」と「効力予期」であるとしたら、どうやればこのふたつを高められるか、自身でコントロールできるかがポイントになりそう。また「環境」を整えることも大事だと思うので、このあたりのポイントを研修でアクションプランを実行に移すための方策を考えてもらうときのヒントとして活用してみたい。

●特に「効力予期」あたりはバンデューラの「自己効力感」の研究が基本になっていると思われるため、参考として関連文献などに目を通しておかれるといいと思う。

cf.自己効力感とは
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/pe_dpt/mizuochi/sposin-e/kojin/shin/1page/1.html

●熟達のところで、「専門家は細かいスキルに刻むのが苦手な人が多い」とあったが、まさにその通り。わかる人にはわからない人の気持ちがわからない。これは職場でも「仕事ができる人にはできない人の気持ちがわからない」という同様の現象が起きて、できるリーダー/マネージャーが部下を潰しそうになることがあるのを思いだした。

●フィードバックのところが若干薄いような気もしたが、教室での授業前提ということを考えるとこのボリュームでもやむなし、といったところか。
企業人にはDHBR(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー)のこのあたりの記事が参考になるかもしれない。

フィードバックをうまく機能させる4つの要締

フィードバックにつきまとう「5つの脅威」を和らげる方法

●スキル編、今回もとても実用的な内容。「教員はアナウンサーなどのプロではない」「「正しい話し方」「美しい話し方」ではなくて「伝わる話し方」を目指す」「・前に飛ばすこと ・沈黙を恐れず間を取ること ・口を縦に大きくあけること」など、すぐに実践できそう。

●ストーリー編、今回は熱いお二人の取り合わせ。
渋谷先生の「一歩ずつ一歩ずつ」へのこだわりは医療という責任ある立場におられる方ならではのものかもしれないとも感じた。学生を巻き込んでコンテンツの質を高めていくというのもすばらしい。

●上田先生のお話は「パッション」という精神論的な部分と「理論/学問との接続」というロジカルな話がきれいに結びついていて、とても納得感の高いものだった。

●「活動→モデル化・抽象化→応用」をしていれば「社会に行ったときにどんな分野でも役に立つ」というのは、昨今よく言われる「大学教育が何の役に立つのか」という疑問への回答のひとつになっていると思った。

●上田先生のインタビューの中で中原先生が紹介されていた学芸大・高尾先生の『Give your partner a good time』という言葉はとても印象的だった。

●余談かつ勝手な想像だが、上田先生のお話は相当編集されているのではないかと思う。もしそうだったら、カットされたところを番外編としてどこかで公開していただけるとうれしいなあと上田先生ファンとしては思ったり。

●次回Week4は「90分の授業をデザインしよう」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(単なる羅列で長いです。すみません)

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◆Week3 学習の科学
3-1. イントロ

3-2. ナレッジ(1)モチベーション(1)

目的
学びの促進に関わる「モチベーション」「熟達」「練習とフィードバック」について理解する

到達目標
1) モチベーションの維持・歓喜の鍵となる「価値」「予期」「環境」のそれぞれについて説明できる
2) 学生の熟達およびその支援方法について説明できる
3) 効果的な練習とフィードバックについて説明できる

1.モチベーションとは

望ましい状態や結果に達するために人が行う個人的な投資(Maehr & Meyer, 1997)

学生が行う学習行為の方向・強度・持続性・質に影響をおよぼす

モチベーション理解の枠組み

目標の主観的価値
予期
環境

予期→
モチベーション → 目標に向かう行動 → 学習と成果
価値→
環境

(Ambrose et al, 2010 改変)

目標の主観的価値
その人にとって その目標がどう重要であるか?

Q どのような価値を示してあげられるか? ex.自転車に乗る

達成価値 Attainment Value
目標やタスクの習得及び達成

内発的価値 Intrinsic Value
タスクを行うことそのもの

道具的価値 Instrumental Value
他の重要な目標を達成するためにこの目標やタスクが役立つか

まとめ:
モチベーションは学びのカギ
モチベーションを高める要因のひとつである「目標の主観的価値」には
達成価値
内発的価値
道具的価値

がある

参考
Understanding Motivation and Schooling: Where We've Been, Where We Are, and Where We Need to Go
Maehr, Martin L.; Meyer, Heather A.
1997-12
http://deepblue.lib.umich.edu/handle/2027.42/44456


3-3. ナレッジ(2)モチベーション(2)

予期
目標や結果に対して、「自分は達成できるか」という自分なりの予測

Q. 高い予期を持ってもらうためにどのようなことをしてあげられるか?

ポジティブな結果予期
特定の行動が望ましい結果をもたらす

効力予期 cf,バンデューラ
自分は望ましい結果に向かって行動できる
→この信念を持てるかどうか

環境
協力的環境であると感じられることにより、価値・予期との相互作用によってモチベーションが強化される

Q. 協力的環境としてどのようなことが考えられるか?
仲間 熱心さ

3.教授者にできること

学生が高い価値を見出せるよう、目標や活動を定め、示す

・学生の予期を高める
・モチベーションを支える協力的な環境をつくり出す

教授者によるサポート

参考
効力予期
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/pe_dpt/mizuochi/sposin-e/kojin/shin/1page/1.html


3-4. ナレッジ(3)熟達への道

1)熟達する

特定の分野における高度な能力の獲得

部分の各スキルの獲得

スキルを統合する

スキルを適時に使える

専門家の盲点

無意識的無能 → 意識的無能 → 意識的有能 → 無意識的有能
↑ ↑
受講している学生 熟達者

(Ambrose et al, 2010 改変)

専門家は細かいスキルに刻むのが苦手

教授者にできること

部分スキル獲得→部分スキルの特定 部分的スキル獲得の練習デザイン/実施
スキル統合 →スキル統合の練習デザイン/実施
適時に使える →多様なコンテクストの提示によるスキル応用の促進

3-5. ナレッジ(4)練習とフィードバック

Q. ある知識やスキルの習得の場面において効果のあがった練習

効果的な練習とは
・具体的な目標設定
・適切なレベルのチャレンジ
・十分な練習量(時間/メニュー)

効果的なフィードバックとは

フィードバック
ある行動について与えられるその現状および将来の指針となる情報

Q. 役に立ったフィードバックは?


効果の高いフィードバック
・学生を学習させたい重要な知識スキルに集中させる 的を絞って
・学生がフィードバックを活用する可能性が最も高いタイミングと頻度で与える 早い/多いほどいい
・フィードバックに続く練習の機会と連動させる

注意点
タイミング
一般に早いほど良い 一般に頻繁であるほど良い

が、学習を妨げないフィードバックのタイプと頻度は目標による

3-6. ナレッジ(5)ディスカッション:部分スキルへの分解

目標
大きなスキルを部分スキルに分解することが出来る

課題 手続き
・小さい子に自転車の乗り方を教える
・「不自由無く乗れる」までを部分的なスキルに細かく分解してふせんに書く
ex. またいでサドルに腰掛ける
・全体で一枚の紙にまとめる


ひとつの目標に対して刻んだスキルをデザインしていく

3-7. 振り返り

3-8. スキル:導入編2:伝わる喋り方

声について

多くの人の悩みのポイント
・発声の問題
・滑舌の問題

教員はアナウンサーなどのプロではない

「正しい話し方」「美しい話し方」ではなくて「伝わる話し方」を目指す

伝わる→「伝わっているかどうか」相手の反応を見る

伝わっていなければもう一度丁寧に話す

話すこと 書くこと この違い

声を飛ばす方向性をつける

発声と発想はつながっている

間を取る(相手の反応を待つ)

早口問題→口をなるべく縦に大きくあける

ポイントまとめ
・前に飛ばすこと
・沈黙を恐れず間を取ること
・口を縦に大きくあけること


3-9. ストーリー(1)栄養学を教える−一歩一歩学びをつくる

女子栄養短期大学
渋谷まさと先生
http://www.eiyo.ac.jp/teachers/teacher.php?teacher_id=64

渋谷先生が映像の中でお使いになっているスライドとそれをもとにした教材の一部
http://physiology1.org/doc/chapter.php?Id=1072


生理学
人のからだが正しく動いている
医療における基礎分野

栄養士の養成学校

解剖生理学

なるべくかみ砕く
イメージをそのまま学生さんに伝える

授業 1回50人
「一歩ずつ一歩ずつ」

生命科学教育シェアリンググループ
教員として私が知っていることを教育の現場にシェア
学生さんの意見 疑問 感想
君がひっかかったことに後輩がつまづかないようにできるためにはどうしようか 一緒にやろう

「私は1メートルの階段を100段にして細かく切っていって誰もがつまづかないで登っていけるようにしたい」

授業の途中で学生同士教えあい→「先生ごっこ
しゃべるのは楽しい
何となくわかった→さらに深く自分はわかった になってほしい

クイズ解こう
とにかくみんな忙しい時間

コンテンツはしっかり作ってあって教え合う→うまくブレンド(中原先生コメント)

初学者が入っていく入りやすさ
お膳立てができたアクティブ・ラーニング

生命科学わかる 面白いじゃん

最初はクイズをたくさん作った

このクイズが解けるためにはどう理解してくれたら解けるのか 印象に残るのか

★受講者へメッセージ
教育ってある意味おもてなし
なるべく分かりやすく伝えたい


3-10. ストーリー(2)学びの転換−プロジェクト・ベースト・ラーニングからパッション・ベースト・ラーニングへ

同志社女子大学現代社会学部現代こども学科
上田信行 教授

project based learning や service learning と言われる授業を上田先生はどのようにやっていらっしゃいますか(中原先生)

パッションを大事にする

「プレイフル・ラーニング」
真剣に何かに情熱を持って取り組むということ それが楽しくて仕方ない

情熱が大事と大学で習っても実際に情熱を持ってやれるかは大分距離がある

経験をしてその経験についてグループでディスカッション
経験について考えることがあって初めて学びって成立する

体験をどう意味づけていくかっていうことをグループでディスカッション

それが大学の授業や背後にある教育学のセオリーなんかとつながっていく そこが面白い

「イベントができればいい」ではなく一番大事なのは抽象化する能力
つまりモデル化する
(アクティビティの順序 どういう構造になっているか なぜそういう構造を使っているのか それがどういう学びと深い結び付きがあるのか)

たくさんやってもあまり意味がない

活動→モデル化・抽象化→応用
問題として前々違うものをやる

社会に行ったときにどんな分野でも役に立つ

今までは最初に理論、モデル、それから応用問題

いっぱい失敗しながらそれに自分で意味づけていく
自分で意味づけていくだけだったら偏りがあるので、今の先端の教育学の考えがどうだろうか?とかそういうことに結びつけていく
そこが実は大学の授業として一番面白いところ

学生の温度差
最初は嫌でも行く
その中でどこが嫌だとかいってみたら結構面白かったとか

崩壊する寸前→乗り越えるドライブになるのが何のためにやるのかとか価値観
やることに意味があると思った瞬間モチベーションが上がる

今回のプロジェクトに対して自分としてどういう意味づけをできてるかの差だけ

joint attention 共同注視
みんなで見るとみんな前を向いてるから横が気にならない

ステージを自分で設定
最初は人が用意してくれたステージ
今度は自分でステージ「こういうことさせてください」
上げていくとオーディエンス多様
オーディエンスに合わせてこの人たちのためにどんなことができるか→モチベーション上がる

ステージが人を動かす

ラーニング1.0 学校型 先生
ラーニング2.0 アトリエ・工房型 ワークショップ プロジェクト型「みんなでものづくり」
ラーニング3.0 ラーニングするラブ
ラーニングするパフォーマンス オーディエンスに喜んでもらう

人間って自分のためってなかなかがんばれない 誰かのために何かする
喜びの循環モデル

(学芸大)高尾先生の言葉 自分のために何か生み出そうとするとクリエイティビティってなかなか発揮されないけど、誰かを喜ばせるとか誰かのために何かを作ろうっていうふうになると自然とアイデアって生まれてくる。そのテーマが『Give your partner a good time』(中原先生))

★受講者へメッセージ
まず自分が楽しんでほしい
先生自身がパワーを持つ

何かやりたいとすればその憧れの人がいる所に近寄ればいい
その場に行きなさい
そこに行くと何か自分の憧れに手が届く (古典芸能の住み込み弟子入りのような)

フィンランドに行ったときも、今ヨーロッパはPBLって言ってももうパッションですよと言われた

パッションとラブとプレイフルラーニングがあればプロジェクト学習できます!

参考:上田先生インタビュー記事
学びはもっと楽しく、ラディカルに。ワークショップの第一人者が考える「ラーニング3.0」

VALUE VOICE vol.03 Chapter1 同志社女子大学現代社会学部現代こども学科・上田信行 教授

[http://www.jcounselor.net/11interview/archives/2013/03/7914.html:title=第79回目(1/4) 上田 信行 先生 同志社女子大学
教育って、楽しくていいんだ!]

上田先生著書 ※「憧れの最近接領域」について解説されています
「プレイフル・シンキング 仕事を楽しくする思考法」

プレイフル・シンキング

プレイフル・シンキング

プレイフル・ラーニング

プレイフル・ラーニング