「資格中心思想」から抜け出そう

@IT自分戦略研究所の記事「転職では資格が落とし穴になる」より。
資格へのこだわりゆえに転職がうまくいかない二つの事例を紹介している。

■資格の落とし穴1:資格だけがアピールポイントだと→資格だけのアピールがマイナスポイントに
「アピールポイントのほとんどが、資格取得に関することに終始していたため」不合格が続いた方の事例。
面接官のコメントとしてはこのような意見が。

取られた資格というのは、確かに弊社でもニーズの高い資格です。ただし、あくまで面接時の評価ポイントとなるのは即戦力としての実務経験であり、“資格イコール即戦力”とは結び付けません。

『ヘルプデスクという業務経験から何を学んで、どのように当社の業務へ貢献していただけるか?』という点が一番聞きたいところでした。(中略)正直なところ、実績・スキル共に不足しているのは職務経歴書よりわれわれも認識しているため、そのギャップをどのように現場でキャッチアップしていこうと思っているのか……。そのあたりをお聞かせいただければポテンシャルにて十分(採用の)可能性があったと思うのです。が、『資格を持っているので(業務経験がなくても)大丈夫です』の一点張りでは、ほかに人物的なものを含めアピールポイントはないのか、ということになり、結局のところ不採用とさせていただきました

資格は単なる「必要最低限の知識を身につけている」という通行手形であって、何でもかなえる打ち出の小槌ではないのだが、往々にして「これだけの資格を取った自分は報われて当然」と考える人がいる。これでは採用する側からすると不安で仕事を任せることは難しいだろう。
またこういった意見も。

持っている資格は、難易度的に会社を辞めるまでして取るほどのものではないし、もし必要であれば入社後に会社の制度で取得いただくことも可能なので、ほとんど評価ポイントにはなりませんでした

その資格の社会的価値を客観的に判断しておくことも必要だということ。自分にとっては苦労して取った資格でも、他人からは同じ価値で評価されるとは限らない。

■資格の落とし穴2:資格取得が目的化→自分のキャリアパスに本当に資格は必要か

スキル不足(この場合経営に関する知識)を補うために資格取得が必要

資格取得のための時間捻出が必要

時間に余裕のある仕事に転職

というロジック、よく見ればそもそも「資格取得が必要」のところからすでに「本当?」と思うのだが、本人煮詰まっているとなかなかその矛盾に気付かない。そういう意味でキャリアカウンセラーなどの第三者と会話することは重要だ。
結局この方の場合は

思い描いていた「資格取得によるスキル習得→キャリアアップ」という図式を「実務経験を積める会社へ転職することによるスキル習得→キャリアアップ」へと置き換えてみた

ということで現実的な解決ができた模様。

これらの事例を踏まえた上で記事中で提案されている「資格への考え方」は「目的を明確にしたうえで資格を取ろう」を大前提として、

(ア)基本は「実務経験>資格」であるということ
(イ)何のための資格かを再確認すること
(ウ)転職と資格取得のタイミングを確認すること

をポイントとしてあげている。

資格そのものを否定するつもりは毛頭ない。しかし転職とまでいかなくても社内での異動を希望する人から「資格を活かせる職場に行きたい」という言葉を聞くことがしばしばあり、しかもその資格は現在の業務とは直結しないもの(社会保険労務士コーチング、産業カウンセラー等)が多い。はっきり言ってそういう資格を直接「活かせる」職場など、ない。「手に職」のつもりで取った資格だとは思うが、それだけで異動できるような、そういうスキル「のみ」を求める職場は現実ないのだ。

他には「TOEIC900点なので、英語を活かせる職場に」というバージョンや、「社外留学でMBAを取得したが、今の仕事では活かせない。経営戦略に携わる職場に」というバージョンもある。スキルとあなた自身とどちらが主人公なの、と言いたくなる。資格やスキルはあくまでプラスアルファであり、芯になるのは「何をやるか」であることを見失わないでいただきたいと、こういう相談を受ける度にいつも思う。まあ、そういう質問をするとたいていは「考えていませんでした」「それがわからないんです」という答が返ってきて、だから資格にすがろうとするのだとは思うのだが。原点に戻って考えよう。