「プレイフル・ラーニング」 上田信行・中原淳 編著 三省堂

昨年12月に刊行されたこの本は、一言で言うと、「学びのデザイン研究」の歴史と現在、そして未来を、上田信行先生という超アーリーアダプターである人物を主人公として、中原淳先生が描いたもの。上田先生の存在なくしてこの書籍は存在し得ないし、同様に中原先生の労作なくして世には出なかった。

「学びのデザイン研究」とは何か。「『学びの場/学びの機会を創り出すこと』を主眼とする実践的な研究とお考えください」という中原先生の定義にしたがって、まずはそう捉えていただきたい。

本書は三章構成になっていて、第一章は「プレイフル・ラーニングの旅」これが歴史である。第二章は「プレイフル・ラーニングへようこそ 経験のREMIX unconference@neomuseum ルポ」これは2012年に実施された実験的ワークショップの記録、つまり現在、そして第三章は「プレイフル・ラーニング 旅のあとさき」と題した対談録。上田先生、中原先生に加えて、神戸大の金井壽宏先生も加えた3名による「経験のREMIX」を終えた直後のリフレクションと学びのデザインについての今後の考察がなされている。

まえがき「プレイフル・ラーニングの旅へ出かけよう」で中原先生は問題意識を次のように提示されている。ここ数十年で「学び」や「教育」の言説空間において起きた三つの大きな変化 「オルタナティブ」(既存のものとは別の)「インタラクティブ」(双方向性)「アマチュア」(教育の非専門家)がもたらした教育の非専門家による学びの場の創出。
それは「ワークショップバブル」と呼ばれるような様相を呈していると同時に、「クオリティが玉石混淆である」という憂慮すべき事態も産んでいる。(「ワークショップ疲れ」「ワークショップ中毒」といった負の側面)

ところで「ワークショップ」という言葉を上田先生が使い始めた20年前には、この言葉は「作業場」という意味しかなかった。その上田先生「プレイフル・ラーニング」(楽しさの中にある学び)という思想のもとに実践を積み重ねて磨き上げてきたのが「ワークショップ」というものであると言える。

そういうことから、中原先生は本書の目的をこのように書いている。

本書の目的は、様々なオルタナティブな学びの場づくりの実践を繰り返してきた、上田信行さんの実践の歴史、彼が影響を受けてきた理論や思想の歴史を紹介することで、クオリティの高い、革新的な「オルタナティブな学びの場」をつくりだすために必要なことを紹介することです。もちろん、オルタナティブな学びの場づくりやワークショップには、多種多様な理論的源流がありますので、ここで紹介しうるのは、あくまで上田さんの実践やプレイフル・ラーニングを裏打ちする理論群です。

 本書の趣旨をひと言で述べるならば、「オルタナティブな学びの場づくり」は、「プレイフル・ラーニングの創発する場所である必要がある」、ということであり、「プレイフル・ラーニングを生み出すためには、本書で紹介する理論・思想を押さえておく必要がある」ということです。「よい理論ほど実践的なものはない」といったのはグループダイナミクスの祖 クルト・レヴィンです。骨太の理論・思想は、素晴らしい実践を生み出す土壌です。

また、対象者としてこのような方々を想定している。

本書は、ビジネス、教育の現場などでラーニングデザインを実践している人、あるいはラーニングデザインに興味がある人を対象にしています。

 上田さんのプレイフル・ラーニングの歴史を追いつつも、ラーニング理論についての基礎も学べるようになっているので、ワークショップ等の、いわゆる「場づくりの実践」をなさっている方にはぜひ読んでいただきたい内容です。

 とかく、ワークショップに関する本は、いわゆるHow toや技法の紹介、ないしはワークショップ批評にとどまる傾向があります。それもワークショップデザインにとって必要なことではありますが、一方で忘れ去られがちなのは、その背後に横たわる理論的背景・思想的背景です。そうした内容について常に意識的である必要はないのですが、ある程度のことができるようになったあとは、ぜひ意識しておいておくとよい内容です。

表面的なノウハウだけでなく、その根底に流れる考え方=理論をまずは理解した上で、本来の「オルタナティブな学びの場」を創り出そう。そういう主旨の書籍であると言える。

第一章の「プレイフル・ラーニングの旅」。これがまず圧倒的だ。1970年代から2000年代にかけて、学びのデザインの研究がどのように変遷してきたかが、上田先生の半生にまさに重なっており、半生記であるとともに見事に教育デザイン史ともなっている。

詳細は本書に当たっていただきたいが、キーワードを挙げてざっくり要約するとこうなる。

◆1970年代:「教えることのデザイン」(効率的かつ魅力的に知識を伝達できるか)
・セサミ・ストリートとの出会い
・米国の教育格差問題 低所得者層への教育支援 視聴覚教育(テレビ)
・教授設計理論(ADDIEモデル 等)
・プロトタイプ→リバイズ

◆1980年代:「学びに没頭する環境のデザイン」(どのように知識を構築するか〜「教授」から「構成」へ)
・デバイスの変化(テレビからコンピュータ)
ピアジェ構成主義とパパートの構築主義
・動機論(「ものの見方」が「やる気」を変える キャロル・ドュエック)
・環境を変えることでポジティブな方向に変えることはできないか

◆1990年代:「他者とのつながりと空間のデザイン」
・学習における「他者」の存在意義→発達の最近接領域→憧れの最近接領域
・コミュニティの中での他者との「協調学習」
・ネオミュージアムの建設→空間デザインされた「プレイフル・ラーニング」

◆2000年代:様々な実践(境界を超えた「モード2」の科学)
・ラーニングデザイン、メディア、アート
・同業者を超えた異業種とのコラボレーション

かなり盛りだくさんの内容だが、時系列に上田先生の体験を追いながら自然と読み進められ、それぞれ年代別に中原先生の「振り返りとまとめ」が書かれているので理解しやすい。

第二章の「経験のREMIX unconference@neomuseum」は、私も参加しているイベントである。吉野の宿坊・竹林院とネオミュージアムを舞台とした、壮大なワークショップの「実験」だった。
一言で言えば、竹林院に集まった120人が小グループに分かれて「これまで」「いま」「これから」を考えるワークショップの出し物をその場で考え、翌日ネオミュージアムでそれを実践する、というもの。例えてみれば、一晩で初対面の人間をグループ分けをして文化祭の出し物を考えさせて翌日文化祭をして解散する、といったこと。

そんなこと本当にできるの?やっつけになるんじゃないの?と思われる方が多いだろう。
これができたのだ。しかも非常に満足度高く。プレイフル・ラーニングを地で行ったような一泊二日だった。

勿論そこには用意周到な「デザイン」がなされている。具体的に何が準備されていたのかは、昨年終了後に中原先生がブログでまとめられたものに尽きるかと思う。

Unconference(ユーザー参加型・学び系イベント)をデザインする際の3つのポイント(私感雑感)(nakahara-lab.net)

1.レディネスの確保
  1.1.初期期待をあげる事前課題
  1.2.ソーシャルメディアを使った事前コミュニティづくり

2.フレームワークの提示
  2.1.コンセプトとパッション
  2.2.テーマの理解を得ること
  2.3.ルール
  2.4.グルーピング
  2.5.デッドラインの明示

3.「学びの縁日」のデザイン
  3.1.同時多発性
  3.2.擬似的競争 ゲーミフィケーションの応用

これが具体的にどのように提供され、参加者は巻き込まれて行ったかは、ぜひ本書でご確認いただきたい。わざわざ冬の吉野まで出かけて行く物好きの集団とは言え、ここまでのワークショップを実現するのは生半可なことではない。周到なデザインがあってこそ、人は「自由」になれるのだということを身をもって体感した時間だった。

ひとつ付け加えると、曽和先生の「リアルタイムドキュメンテーション」あっての成功、ということ。その日に起こったことをずっと撮影し続け、それを終了直前に5分のムービーに編集して参加者全員で見直すことによるリフレクション効果の大きいこと!体験をもう一度目で取り込み直して、この二日間は決して忘れられない時間になった。

第三章は三人の先生の口調も思いだしながら読んでしまい、私は客観的な評は正直書きにくい。個人的には帯にも使われている金井先生の「僕はもうゾクゾクしましたね。10年に一度くらいのインパクト」という言葉がとても嬉しかった。(金井先生は本当に楽しそうだったのだ)
「ワークショップと日常」「学びはアウトプット」「アイスブレイクと言わずに氷を解かす」「振り切る勇気と思い切り」等々興味深い話題が次々と語られる。このように言語化されたエッセンスを少しずつ自分たちの学習デザインに取り込んでいけたらと考えている。

理論と実践を両輪として、これからも「オルタナティブ」「インタラクティブ」「アマチュア」な学びの場を提供して行ける、そんな人間になりたいと思う。

巻末で中原先生が紹介しているリルケの詩のように、もうしばらくは安易に答えを求めず、「問い」を生きていきたい。

今すぐ答えを捜さないでください。
今はあなたは問いを生きてください。

プレイフル・ラーニング

プレイフル・ラーニング

「経営学習論」中原淳 著

東京大学中原淳先生からご恵投いただいた最新著作「経営学習論」。発売日にお届けいただいておきながら記事を書くのが非常に遅くなったことに大変恐縮しつつ、書評と言うのはあまりにおこがましすぎるので、覚え書きを兼ねた読書メモを書かせていただく。


本書は、中原先生がこの10年間の間に取り組んでこられた「働く人の学習」についての研究の今の時点での集大成であり、これまで日本ではなかった「経営」視点での「学習」についての理論と実践研究をまとめたものである。これまで働く人の学習や成長といったテーマについては、主に組織心理学や経営学の人的資源論で取り扱われてきたが、心理学は個人の心理に、人的資源論ではマネジメントの一環としての「人的管理」にそれぞれ視座を置くこともあり、統合的に「経営」視点での人材育成について納得のいく分析がされていたとは言いがたくなっていた。「理屈ではそうかもね、でも現場はそんな簡単なものじゃないんだよ…。」そんな言葉に跳ね返される思いを感じた研究者は少なくないのではないかと勝手ながら推察する。
そこに新たな切り口を加えたのが中原先生だった。教育学という、一見学校のみで完結しているかのように思えていた分野の視点から、「大人の学びを科学する」というテーマで切り込んで来た。人材育成の重要性が叫ばれ、生涯学習がうたわれる時代、これはまさに学術の立場からも実践の立場からも必要とされている視点であったと言えよう。


「組織社会化」「経験学習」「職場学習」「組織再社会化」「越境学習」の5つの領域から、これまで中原先生が「主に日本企業に勤務するホワイトカラー中核人材の能力形成についての探求」をされてきた内容を包括的に論じ、なおかつ今後の研究課題として「グローバル化に対応した人材育成の模索」について提示している。こういった領域をここまで一冊でまとめあげたものは、不勉強であるかもしれないが私は他を知らない。「ホワイトカラー中核人材の能力形成」に携わる仕事をしている人、そういったことに興味を持つ人は、その学術的裏付けが一冊にまとまっている「リファレンス」として、ぜひ本書を手元に置いてほしい。


本書は一言で言えば「学術書」、「“企業・組織に関係する人々の学習”を取り扱う学際的研究の総称」としての、いわゆる「経営学習論」に関する学術書である。「経営学習論」という研究領域の全体像を提示し、読者にはこの領域で研究を志す大学院生レベルの人々を想定して大学院授業のテキストできるように書かれているとのことなので、調査研究の手順や分析結果など、ふだん研究になじみのない方にはハードに感じられる記述も多いと思われる。しかしそういう方にはこの本は有用でないということは決してなく、最低限各章の最後にある「小括」をお読みいただければ、その章で説明された理論や概念、そして研究の結果と考察についてわかりやすくコンパクトに書かれているので、まずはそこに目を通し、興味を持ったキーワードなどをページを遡って探す、というやり方で肉付けをしていけるのではないかと考える。


個人的に特に興味を持ったのは、「経験学習」を通した能力向上の年代別・職種別の違い、また「越境学習」で取り上げられた「社会関係資本」との関係の部分である。


■「経験学習」を通した能力向上の年代別・職種別の違い
有名なコルブの「経験学習モデル」(具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験)が循環モデルとしても業務能力向上に対しても有意な結果が出ているのだが、それが年齢別・職種別にどのような差異があるのか分析している。結果としては

・1年目から2年目は「具体的経験」からのみ「能力向上」に統計的に有意なパス
・3年目から9年目はすべての要素から「能力向上」に統計的に有意なパス

というもので、2年目までの時期は「具体的経験」が「能力向上」に重要であること、また3年目以降は各要素をバランスよく経験していくことが重要となるということがデータでも明らかになっている。
また、職種別の違いとしては、「研究開発職」「営業職」「スタッフ職」の3つの母集団で分析したところ、

・「研究開発職」は「能動的実験」と「具体的経験」が「能力向上」に統計的に有意なパス
・「営業職」では「具体的経験」と「抽象的概念化」が「能力向上」に統計的に有意なパス
・「スタッフ職」は「内省的観察」と「具体的経験」がそれぞれ「能力向上」に統計的に有意なパス

というもので、職種によって能力向上に正の相関を持つものは違っていた。
スタッフ職はルーティンワーク的な業務が比較的多いと考えられるが、それらの業務に関しても内省的観察を行うことで能力向上につながりうる、というのは、これも実業務の世界を思いだすと納得できる結果である。

このような年齢別・職種別の「経験学習」の「利き所」の違いを念頭において研修プログラムを創っていくことが、これから人材開発部門には求められているのだろうと強く感じた。


■越境学習と「社会関係資本」との関係
社会関係資本」とは、「信頼感・規範意識・ネットワークなど、社会組織における集合行為を可能にし、社会全体の効率を高めるもの」と定義されている。ひらたく言うと「つながりの力」ということかと理解している。今回は、どういった社会関係資本が越境学習に影響を与えているかという調査がされた。社会関係資本をいわゆる世間一般の「一般的社会関係資本」と、職場などの限定された範囲の「特定的社会関係資本」に分け、分析したところ、一般的社会関係資本は統計的に有意な正の影響があるという結果があった。このあたりの結果は当たり前といえば当たり前で、オープンにつながりを持っている人はどんどん社外に出かけて越境学習をしているというのは充分ありうる姿だ。しかし現在の結果だけでは因果関係はわからないことと、他に影響を与える要因も存在しうると思うので、引き続きの研究を期待したい。


また、印象的なフレーズとして、メタ認知に関する下記記述を挙げたい。

メタ認知に関しては、様々な定義があるが、その概念を構成するロバストな2軸はモニタリングとコントロールである。すなわち、自己の認知に対する認知と、それに基づく評価が存在し、それを踏まえて、自らの認知過程に新たな目標設定をし、統制を行う。」

近年キャリアを考える上でメタ認知が重要な要素になっていると感じており、ワークショップなどでもそのようなことは話したりしているのだが、メタ認知というとつい前者の「モニタリング」だけをイメージしてしまっていた。しかし実際はコントロールも組み合わさって初めて本当に効果的になるのだ、と、本書の記述を読んで考えを改めた次第である。


あと、細かいことだが、分析結果でいくつか性別が要因として統計的に有意だったものがあったが、(たとえば p.83 表3-2「OJT指導員の行動が、新規参入者の能力向上に与える結果」とか、p.140 表5-6「成功体験談の線形階層モデル」 p141 表5-7「失敗体験談の線形階層モデル」)特にその点については言及がされてなく、どういうものだったのかが気になっている。本書に書き切れなかった分析がもしあるようなら、ダイバーシティという観点からも知りたいところである。


先日知人と会話していて、世の中の変化と企業組織の変化、それに伴う自分の仕事の変化を世の中のホワイトカラーたちはどうとらえているのか、何がどう変わってそれに対してどうしなければいけないと思っているのか、経営側と従業員側の意識にギャップがあるように感じるがそれは具体的に何なのか、といったことが話題になった。何かが変わってる、それに対して何かをしなければいけない気がする、でもどうしたら。
「何が変わっているのか」という問いに対しては別のアプローチを試みるとして、「どうしたら」というところについて、「ホワイトカラー中核人材の能力形成」がどのような場面でどのような要因に影響されながら進んでいくのかということについてのリファレンスブックとして本書を活用しつつ、支援者として何ができそうか様々な角度から考えていきたい。

経営学習論: 人材育成を科学する

経営学習論: 人材育成を科学する

以下、東京大学出版会のページより。

経営学習論 人材育成を科学する 中原 淳
長期化する不況の下,日本企業の人材育成は危機に瀕し,再構築のときを迎えている.いまこそ,どうしたら有能な人材を育成できるのかを模索すべきときである.これまでの研究成果を紹介・総括し,さらには独自の実証的な調査データを駆使して,組織経営における有効な人材開発・人材育成施策を展望する.


主要目次

第1章 本書の概観
1 本書の目的/2 本書で用いるデータ/3 本書の構成/4 小括
第2章 経営学習論をめぐる社会的背景
1 「経営課題としての人材育成」をめぐる社会的背景/2 戦略的な「人材育成の再構築」へ/3 経営学習論の青写真/4 小括
第3章 組織社会化
1 組織社会化と学習/2 組織社会化プロセス/3 組織参入時の学習においてOJT指導員が果たす役割/4 小括
第4章 経験学習
1 経験と学習/2 経験学習研究の展開/3 経験学習の実態に迫る/4 小括
第5章 職場学習
1 職場学習の定義/2 職場学習の先行研究/3 職場学習への実証的アプローチ/4 小括
第6章 組織再社会化
1 2つの組織再社会化/2 中途採用者の組織再社会化/3 小括
第7章 越境学習
1 越境学習/2 越境学習の深層に存在する主要な社会的ニーズ/3 越境学習の実態に迫る/4 越境をめぐる社会的実験/5 小括
第8章 今後の研究課題:グローバル化に対応した人材育成の模索
グローバル化と人材開発/2 結語

【ご案内】第1回Tsuku-場フォーラム「組織の中で自分らしくあるために」(10/8)

昨年から活動している筑波大学大学院カウンセリングコース・キャリア・プロジェクト(通称TCCP)で、10月にフォーラムを開催いたします。

今回は名古屋大学の金井篤子先生をお招きして「組織の中で自分らしくあるために」をテーマに講演頂く予定です。またディスカッションの時間もご用意しています。金井篤子先生はワークライフバランス、とりわけワークライフコンフリクトから起きるキャリアストレスなどについて論文を多く発表されています。

どなたでもご参加いただけますので、少し先の話になりますが、ご興味のある方は是非お申し込みください。※申込多数の場合は抽選とさせていただきます。

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◆名 称: 第1回【Tsuku-場】フォーラム

◆日 時: 2012年10月8日(祝)13:00−17:00(開場12:30-)

◆場 所: 筑波大学 東京キャンパス 文京校舎 134室
      http://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_access.html

◆講 演[テーマ] 組織の中で自分らしくあるために
[講演者] 金井篤子氏(名古屋大学大学院教育発達科学研究科 教授)
 博士(教育心理学) 臨床心理士
http://www.educa.nagoya-u.ac.jp/faculty/kanai/

【研究領域】
働く人々のメンタルヘルス(精神的健康)を支える理論とシステムの研究を中心として、過労死、ワーカホリズム(仕事中毒症)、職務ストレス、キャリア開発、ワーク・ライフ・バランス、キャリア・カウンセリングなど研究を行っている。

【主要論文・著書】

金井篤子 2000 キャリア・ストレスに関する研究―組織内キャリア開発の視点からのメンタルヘルスへの接近― 風間書房

金井篤子 2002 キャリア・ストレスとワーク・ライフ・バランス 日本労働研究雑誌,503,54-62.

金井篤子 2008 職場の男性 ワーク・ライフ・バランスに向けて 柏木恵子・高橋恵子(編)日本の男性の心理学 もう一つのジェンダー問題 有斐閣 Pp.209-226

Atsuko Kanai 2009 “Karoshi (Work to Death)” in Japan. Journal of Business Ethics, 84(2), 209-216.

◆参加費: 1000円(当日受付でお支払いください)

◆お申込: 申込システム「こくちーず」よりお申込ください。 
 http://kokucheese.com/event/index/46326/

◆申込期間:9月3日 ※定員150名(申込多数の場合は抽選といたします)
     ※9月7日までに受講票をお送りいたします。

◆問合せ: TCCP事務局(tccp_info@human.tsukuba.ac.jp)までお願いいたします。

※本プロジェクトは、平成24年度『筑波大学社会貢献プロジェクト』として採択されています。(詳細はこちら)

女性が学ぶ社会心理学

女性が学ぶ社会心理学

  • 作者: 宗方比佐子,森久美子,金井篤子,坂田桐子,中村和彦,佐野幸子,鈴木淳子,松浦均
  • 出版社/メーカー: 福村出版
  • 発売日: 1996/06/01
  • メディア: 単行本
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ジェンダーを科学する―男女共同参画社会を実現するために

ジェンダーを科学する―男女共同参画社会を実現するために

「青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム」10期生になった

自分の人生をふりかえると、だいたい5年ごとに新しいことをしている。キャリアカウンセラーへの転身、大学院進学、そして今回。特に5年ごとに決めてやってるわけではないのだけど、自分でもそのくらい間があくと「何か仕込まないと」「何か変えないと」と無意図的に動き出しているのかもしれない。

というわけで、4月から青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムの10期生として学び始めた。

このプログラムの目的は公式サイトにこのようにある。

専門性や複雑性が増していく社会の中で、縦割りが進みすぎて風通しが悪い組織、コミュニケーションがとりづらい個人が生まれてきています。

一方で、社会と自分の関わり方に関心を持たず、内向きで、依存的な「思考停止社会」が顕在化してきています。

これらの問題に立ち向かうため、私たちは、学校教育の知識獲得型の学習だけではなく、協働で意味を構成する学習(社会構成主義学習観)に基づいた教育の場面が、地域コミュニティやさまざまな組織などで展開されるべきだと考えました。

そのためには、「協働で意味を構成する学習の方法」としてワークショップを企画運営する人材の育成が必要であると考え、ワークショップデザイナー育成プログラムを立ち上げました。

そして、育成する「ワークショップデザイナー」をこのように定義している。

ワークショップデザイナーは、人と人とのコミュニケーションの場面を生み出していける専門家として、「共に」活動することを楽しめる資質を持ち、コミュニケーションを基盤とした知識や技能を活用する参加体験型活動プログラム(ワークショップ)の専門職です。

ワークショップデザイナー育成プログラムでは、ワークショップデザイナーの専門性を「コミュニケーションの場づくり」と位置づけ、ワークショップの企画・運営、コーディネート、講師ができるようになることを目指しています。

つまり一言で言えば、「コミュニケーションの場作りの専門家」。これをe-learningと対面教育120時間で学ぶ、かなり本格的な講座だ。

なぜこれを受けようと思ったかというと、自分がやってることが自己流「ワークショップ」ではないかと前々から思っていたからだ。キャリアデザインの研修ということで、10年前から社内研修を企画して実施しているが、ではなぜ「ワークショップ」なのか、何をもって自分が「ワークショップ」をやっていると言えるのか、「ワークショップ」を成立させるために必要な要素はなんなのか、といったことを考え、知りたいと思った。

そしておそらく一番の引き金になったのは、以前もご紹介した西村佳哲さんの「かかわり方のまなび方」。ファシリテーターとしての「あり方」について様々なファシリテーターの先達と語り合い、考えていく。その中でワークショップの系譜などについても紹介されていて、こういうものを体系的に学ぶ機会があればぜひ参加してみたい、と思い、青山学院大学のこのプログラムを思い出した次第。

3月に願書を出し、4月に選考会に参加して、どうにか無事受講できることとなった。4月からe-learningが始まり、5月12日から集合講座もスタート。様々なバックグラウンドの人達が集まって、7月まで濃密な時間を過ごすことになりそうだ。

どんなことをやっているか、記録も兼ねてまた適宜書いていきたいと思っている。

かかわり方のまなび方

かかわり方のまなび方

慶應MMC夕学五十講・西村佳哲さん「かかわり方のまなび方」メモ

ノートに取ったメモをほぼそのまま書くので、箇条書きだらけで本人以外には意味不明かと思いますが、ご容赦を。

                                                • -

日時: 2012年4月26日(木) 18:30〜20:40
会場: 丸ビル7階 丸ビルホール(千代田区)
講師: 西村佳哲先生(リビングワールド代表)
テーマ:「かかわり方のまなび方

自分が「生きて・いる」ことを、他者とのかかわり合いを通じて感じられる時、人は安らぎや力を得ていると思います。ワークショップやファシリテーション、あるいはインタビューの仕事を通じて、僕はそのありさまを見て来ました。説得や牽引が上手い人より、人の話をきける人が多いことの方が、創造的で健やかな社会の実現に繋がると思います。
かかわり方の技術とセンスについて、報告させてください。

内容メモ:

大学で教え始めてからの一連。
大学の教員は教員免許のない人が大半
教える素人


いい授業 →内容・メッセージ
→器・かかわり方


課題例「あなたの座る」をデザインしてください
答えを与えるのでないかかわり方 教え方


自分がmanageしてる人ができないことができるようになるにはどうしたら。

「子どもを産んだ森川さんが座るもの」妊婦の森川さんが毎週通ってくる。どんどんお腹が大きくなるのを見て、「この人が座るもの」を考える。

環境・ワークセッティング

IDEOの「スパゲッティ・キャンティレバー」30分間でスパゲッティで構造体を作る

出席してきたワークショップに「もやもや」→あれは本当に「ワークショップ」だったのか?

草分けの人たちは運動・課題の伝達方法としてワークショップをやっていたのではないか

オープンエンドといいつつ「正解」がある


同じ答えにあたかも自分が考えたかのように誘導 タウンミーティングやらせと同じ、いややらせはまだ自覚があるがワークショップでの誘導はいいことをしているつもりになっているのでたちが悪い


ワークショップ?→教室?
         体験型講習会?
         よくできたエクササイズ?

ファシリテーション」より「アジテーション」。


ワークショップ
workshop
工房・作業場


高田研(都留文科大学)
ハーバード大学 ジョージ・P・ベイカ
「47ワークショップ」(1905)
ジョン・デューイ
シカゴ大附属小「実験学校」(1896〜1904) 今で言う総合学習
アメリカ社会の工業化
19世紀後半→20世紀前半

オフ・ブロードウェイ

ワークショップ ファクトリー
workshop factory
工房・作業場 工場

「ファクトリーじゃなくて」という期待

20%イコール80%の法則(パレートの法則)
(重要な2割に8割の成果が含まれる)


早い段階の失敗は取り返しがつく→早く手をつけてね


ひとつの正解
ex 1+□=10

多様な納得解
ex □+□=10


時代が変わりファイルシステムが売れなくなっている
A4クリアフォルダが売れる(コクヨ)


“可能性が形になることを助けるかかわり方とは”

ファシリテーターは何をしているのか?

facilitator
facilitation
「facilis」 + 「ate」
容易に する


ファシリテーターになれる人 なれない人
「プロセス(過程)の話をする人はなれると思います」(西田真哉)


例えば、スターウォーズを見ながら「カメラ何台で撮ってるんだ」と思えること
うまくできてるものほどわからない


示す→崩す→戻す


観察=「観て」「察する」


“今、ここで何が起きているのか?”をとらえる能力


最近やってるのは「インタビューの教室

『二日間にわたり、「きく」ことを通じて二人の間に起こることを確認し、互いに試み合える空間をつくります。
「きく」には、聞くも、聴くも、訊くも含まれます。

僕、西村佳哲がインタビューの最中になにをしているのか? を一つのサンプルとして提示しながら、参加する一人ひとりが、自分の「ひとの話をきく感覚と技能」を吟味する時間をつくり出したいと思っています。』

もっと人の話がきけるようになりたい

いいインタビュアー 引き出すのがうまい?問いかけがうまい?

inputの帯域が貧弱な人はゆたかなoutputは出せない


黒澤明
セザンヌなどの画家は、自分の目に見えてるものが再現しきれてないから半年でもずっと描き続ける→見えてるものが違う 「まだ」だと思える感受性

センス=sence 感受性がいい


「きく」力


しゃべったり話したりできるのはきく人がいるから
きき方によって内容や質の激変が起きる


話してみる→外に出してみる→プロセスが生まれる
人の話をちゃんと聞ける人がたくさんいる組織が強い。


きけないとき…
・解決や解消に動いてしまう
・先回りしてしまう(待てない)
・自分のメガネで見てしまう

つまり、自分の軸でとらえてしまうとき


岸英光さんがやった母親グループでのコーチングワークショップ
「自分の3歳の子どもと散歩していて、細い路地に入ったら真ん中で大きな犬が道を塞いでいた。それを見た子どもが固まった。あなたは子どもになんて語りかける?」
→子どもは固まっただけ。「どうしたの?」→こわい→「それだけ?」

子どもの中に入っている感情はひとつだけではない


丹念にその人の中に入ってるもの、抱えてるもの、味わい 色合い を見ようとする


「最近やる気がないの」と話す妻に解決策を言ってしまう自分は、やる気のない妻を見るのがつらいから。それは自分の軸。


聞く→聴く→きく
訊く


実は「聞く」「聴く」「聖」は同じルーツの言葉 神事にたずさわること holyなこと


そもそも言葉は音が先にあってあとで文字をあてはめたもの


「も」ふくらみ 「な」しぼみ といった音の感じ

「きく」強く受け入れてより一体になる 物事の本質をとらえる(やまとことば)


聞く 聴く
効く
利く … ex.利き水、利き酒


上手い質問を繰り出す→聞く、訊く
相手の話を十分に受けとる→きく(利く)

人の見え方が変わる、かかわり方が変わる

はたらき、仕事の質がかわってゆく


人がどういう風に見えるか
どういう存在として見るか


見え方、見方のバージョンアップが必要
人間がどんな存在としてみえているか?(みるか?)


どういう風にサポートしていくか
どういう風にその場にいるか?

                                • -

Q&A

となりのトトロ」を見て絵コンテを描く
電気ドリルを外から見て部品点数を想像→分解

つくり手の側に行って見る

気持ちよかった講演会→構造を考える

                                • -

インタビュー時はメモをとらない
記録はレコーダー任せ
キーワードだけ残してあとで戻ってくる
なるべく考えないできく
その言葉が入ってきた時に自分がどんな感じだったのか、体できく

                                • -

会議が時間のうばい合いになる時
ミーティングの最初に今日取り扱いたいことをホワイトボードに時間入りで書き出す
時間が足りなければどうするか話し合って決める
→健全なオープンカードな運営ができる。

                                • -

話を聞いてもらうとき大切にしてること

自分の実感をないがしろにしない ちゃんとつながってる
持ち場を離れてしゃべるとあとでつらい気持ちになる すべりやすくなる
「しゃべったつもりになってる」

インタビュー時
もっと正確に知りたいので確認する。もっとこの人を知りたい。結果としてついてきている態度。

この扉何ですか?
立体物に見えてくる
感じた違和感なども尋ねる。

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事務局レポート
「センス」とは、プロセスを見ること。 西村佳哲さん

かかわり方のまなび方

かかわり方のまなび方

ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム イノベーションセッション「仏教用語をマネージメント用語に置き換える」受講メモ

先日お手伝いをしたジャーナリスト・エデュケーション・フォーラムで、受付が落ち着いたあとの午後のセッションを一部聴講することができ、私は興味があった僧侶の方のセッションを聞いてきた。
以下メモ(長文注意)

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【ジャーナリスト・エデュケーション・フォーラム 仏教用語をマネージメント用語に置き換える 受講メモ】

・日時:2012年3月3日(土) 14:45〜15:35
・会場:東海大学湘南キャンパス14号館
・講師:松本圭介さん(浄土真宗本願寺派光明寺僧侶/蓮花寺佛教研究所研究員/米日財団リーダーシッププログラムDelegate
プロフィール:1979年北海道生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。ブルータス「真似のできない仕事術」、TokyoSource「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)など。
Twitter:@0tera

【概要】
温故知新。先人の思想や学問を学びなおし、新たな道理や知識を見い出し自分のものにすること。大量の情報に囲まれた環境のなかで、ひとつの言葉の意味を考えることをはじめませんか? 人がより良く生きるための指針を示す仏教のことば。企業や個人が、波乱の現代を生き抜くために必要なマネージメント能力。仏教用語とマネージメント用語の共通点を探り、それぞれの言葉の理解を深めていきます。

【内容メモ】
インドでMBAを取得。学んだ内容を広げようとしたが「お寺の経営者」「お寺のマーケティング」などというと受け入れられないので変換をした。(マネジメント用語を仏教用語に置き換える)

もともと寺の家ではなく、大学の同期の小池龍之介さんの紹介で光明寺
熱意で押し切りそのまま住み込み 「お給料はいりません」と言ったら最初は本当になかった(笑)


Kamiyacho Open Cafe お寺カフェ
http://www.komyo.net/kot/
カフェで過ごすようにお寺で過ごしてほしい


お寺に来てほしい→実際どんな感じできてもらえばいいのか?
カフェという行動パターンのフレームを借用する


Pricing Strategy "Pay as you want" ←つまり「お布施」


来た人に聞く場 お寺にどうなってほしいのか?
input-outからoutput-inへ


店長さんは元ニートで気づいたら今はお坊さんになっていた。そんな彼に人生相談をする人が増えてきた。寺ヨガやコンサート。読経や法話を合間に挟むと受け入れられた。


ライブ合間に講話 最後に全員読経


お寺を「場」としてとらえる 仏教を中心にするのではない
仏教は成果を出すツール
ドラッカー「非営利法人はChange agent 人や社会を変えていく」
まさにお寺は「Change agent」
人において成果を出していく
オルタナティブな文化の発信地 気づきを得てもらうというのが「お寺の価値」


築地本願寺LIVE「他力本願でいこう」
他力イコール阿弥陀如来の力。他力本願とは阿弥陀如来の力に任せるという意味。
浄土真宗では大事な考え方。 京都の本願寺の許可を取るため反対できない名前にした


2003年の英語版MovableTypeでブログを作った
住職はソーシャルメディアの恩恵を一番受けている
いつ檀家さんから連絡が入るかわからないのでお寺をあけにくい
TwitterFacebookで繋がった
地域、宗派を超えたつながりができる


iPhoneアプリ「雲堂」ソーシャル座禅アプリ
http://www.higan.net/feature/2011/02/undo.html

世界の坐禅仲間とツナガル

 坐禅は独りではできません。古来より山奥に籠り、志を同じくする仲間が雲のように集い、実践し、伝わってきました。それをいつでもどこでも世界中と縁を結んで坐れるようにしたのが、最先端のクラウドコンピューティングクラウドとは日本語で「雲」。ネット上のクラウドが一人一人の坐禅道場になります。
 「undo」では、今私たちが生きているこの瞬間、世界でどれだけの人がiPhoneの前で坐禅をしているのかが一目でわかります。世界の中で志を同じくしている人がいる繋がりを感じながら、ご自分の坐禅ライフを楽しんでください。

Podcast「ノド仏は第二頸椎!」
http://www.higan.net/nodobotoke/

ワークショップ「釈迦に説法」
[内容例]あなたはお寺経営を専門とするコンサルタント
クライアント寺院の住職にカタカナを使わずにマネジメントを理解してもらうには?

◎言い換え例
CSR企業の菩薩行(全ての衆生の悟りをめざす)
・ニーズ→(思い通りにならないこと)
マーケティング抜苦与楽(菩薩が衆生を苦しみから救い福楽を与えること) 仏の慈悲
・ブランド→空即是色(この世のすべての物質的存在のこと)
・戦略 strategy →方便(悟りへ近づく方法)
CRM対機説法(相手の素質、能力に従って法を説くこと)


最近、「未来の住職塾」という集まりも実施。地方の寺院の若手が集まり参加。お寺は転職などができない、危機感を持つ人も多い。


【参考リンク】インタビュー等

「今やるべきことを、ただやる」(東大な人 UT-Life)

僧職男子に癒やされたい 手料理つきトークやライブ人気(朝日新聞デジタル 2011年12月7日03時00分)

一緒に働きたいと思われるための三カ条(DODA)

025 松本圭介 (僧侶) 前半(Tokyo Source 2006/5/27)

おぼうさん、はじめました。

おぼうさん、はじめました。

「プレイバックシアター」ワークショップ初体験

「自分の仕事を考える3日間」の西村佳哲さんがワークショップやファシリテーションの世界を訪ね歩いて書かれた著書「かかわり方のまなび方」。そちらを読んでいたら、その中にとても興味をひかれるワークショップがあった。
橋本久仁彦さんという方のインタビューで紹介された「プレイバックシアター」。

本の中では

即興の演劇です。「プレイバック(playback)」という言葉のとおり、脚本は一切なしで、テラー(語り手)が口にした話を、目の前で即興で演じるんです。
このワークショップでは参加者はテラーにもなれば、演じる側にもなります。個人的な出来事を何か一つ語る。そしてそれが、目の前で他人によって演じられる。この過程を通じて、テラーは自分の心や気持ちのあり様から少し距離をとって自己認識を深めることになる。また自分の「生きたい」というビジョンがエネルギーを得て、その実現が促進されます。

と紹介されていて、実際に橋本さんがオーストラリアで初めて体験したプレイバックシアターの様子が語られていた。初めてなのにいきなり主役に指名され、言葉はわからないけど即興で周りに合わせながら動いていたら、テラーが感激して彼を抱きしめてきた、というエピソードにとてつもない魅力を感じた。

以前カウンセリングを受けていた時に、サイコドラマをやってそれがとても心に響いて、自分の考え方や行動を少しずつ変えていくきっかけになったことがあったので、演劇の中で表現される物語性の持つパワーの大きさは実感している。だからこそその情景が生き生きと想像されて、非常に興味を持った。

こういう時は縁が重なるもので、たまたま検索して調べていたら「プレイバックシアター・らしんばん」というNPOのサイトを見つけ、そこで直近で「よりみちプレイバック」という平日夜2時間のワークショップが開催されることがわかった。こういう流れには基本的に乗ることにしているので、早速申し込んでみた。

当日集まったのは私を入れて4名。一人はコンダクター(主催者)、あと二人も常連らしく、まったくの初心者は私一人。とは言え一人で初めてのワークショップに参加するのは慣れているので、微妙に緊張しつつスタート。
会場はテーブルをよけて椅子だけになっており、ホワイトボードにはたくさんのカラフルな布がかけられている。さまざまな打楽器も。

概ねこんなメニューで進んでいった。

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・自己紹介(呼ばれたいニックネーム、なぜここに来たか、今の気分)
マッピング(体調と気持ちの高低、演技経験と話を聞く度合の高低)
・ウォームアップ(この日は参加者の一人が気功を伝授)
・エクササイズ(1)
神様がたくさん時間をくれたらどこに行きたいか→東西南北でマッピング
「そこはどんな場所か。誰と何をしているか。どんな香りがするか。そこでお土産をひとつ買うとしたら何か」
をイメージし、布でそれを表現して説明する
・エクササイズ(2)
話し役、聞き役、見守り役に分担
自分が今大切にしている「宝物」を思い浮かべて、それについて話す
聞き役は話を聞いたあと、布を身につけてその「宝物」になったつもりで話し役に話す。
少々会話。最後に一言ずつ言葉を交わして元に戻る。
<休憩>
・プレイバック
テラー1人、アクター2人、コンダクター兼ミュージシャン1名
テラーのストーリーの題名を聞く→テラーは自分の役を誰にやってもらうか指名する→テラー話す→話が終わったらアクターはテラーのストーリーを即興で再現→終了後感想のシェア
・全体の感想シェア

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感想としては、
・演じる方に関心が向いていたが、自分が聞いてもらう場としてものすごく機能していると感じた。自分の心が動かされた体験を全身で聞いてもらい、それを他の人の解釈で目の前で再現されるというのがこんなに気持ちいいものだとは。やってみて初めて気付いた。
・「大切なものを紹介する」ワークは、物だけの話ではなくてその人の生きざまや価値観などさまざまなストーリーが乗ってきてとても面白かった。(私は物からの語りがうれしくて涙が出てきてしまった)
・今回は短時間でお試し編になってしまったが、もう少し長い時間で、多い人数でのものも試してみたいと思った。

頭で考えて文章で書くだけでない表現は、様々な刺激で自分の思考を広げてくれる。そんなことを体で実感した2時間だった。

かかわり方のまなび方

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