PRESIDENT 2015年6.29号掲載の新潟・三幸製菓さんの採用方法は常識を疑う「オリジナル正攻法」

PRESIDENT 2015年6.29号は特集「1億貯まる生き方」の文字が大きく踊る表紙だが、実はここにとても興味深い記事があった。
P.134〜136に掲載されている「職場の心理学 [362]●井上佐保子 一流大学生に人気、地方中小企業の17種類採用法」だ。以前吉野のワークショップでご一緒したライターの井上さんが取材して書かれている。

これは新潟の製菓メーカーである三幸製菓さんの新卒採用について取材して書かれたものだが、これが実に詳しく、また三幸製菓さんがどういう意図で現在のような採用手法を取るに至ったのかがわかりやすく書かれている記事だった。三幸製菓さんは「おせんべい採用」「遠距離採用」など風変わりな採用手法を取ることでよく記事になっているのを見たが、今回の記事はコンパクトにかつ丁寧に過去の経緯や目的も含めて書かれた記事だった。

採用責任者である杉浦氏の「母集団はたくさんいらない。応募者=採用数でもいいくらい。」「ソーシャルメディア採用に絞ったら、似たような内定者になった。多様性が足りない」といった課題意識からの試行錯誤を経て、今年度の「日本一短いES(エントリーシート)」(なんとメールアドレスだけ!)そしてエントリー後は質問に答えることで自分に合った採用方法をいくつかレコメンドされる、amazonもびっくりの採用サイトとなっているのだ。

そしてこの採用には最近話題の「採用学」の横浜国立大学・服部先生ががっちりタッグを組んでいたのだった。

詳しくはぜひ本誌を手に取ってお読みいただければ。

6/26追記:
PRESIDENT ONLINEに掲載され゜お読みいただけるようになりました。

一流大学生に人気、地方中小企業の「17種類採用法」

そうした中、地方にありながらも独自の採用を打ち出すことで、リクナビなどのいわゆる“就活ナビ”を使わず、国内外から優秀な人材を集めることに成功している地方企業がある。

「雪の宿」「チーズアーモンド」などで知られる新潟の米菓メーカー三幸製菓だ。おせんべいに対する愛を語る「おせんべい採用」、新潟出身者以外が新潟好きをアピールする「ニイガタ採用」。勉強一筋の学生向けの「ガリ勉採用」、最終面接まで一度も会わず、スカイプで面接をする「遠距離就活」。三幸製菓が打ち出したのは、これらのユニークな選考方法から自分に合った方法を選び応募してもらう、その名も「カフェテリア採用」だ。

現在進行中の16年卒の採用では、独自の採用スタイルがさらに進化している。メールアドレス入力だけの「日本一短いES(エントリーシート)」でエントリーすると、「35の質問」という独自の適性検査へのリンクが送られてくる。これに回答すると、「おとまり採用」「考えな採用」「わんこ採用」など、17種類もの選考方法から、応募者に合った数種の選考方法を会社側からお勧めされる、というものだ。

厳しさを増す新卒採用市場において異彩を放つ三幸製菓の「採用イノベーション」はどのようにして生まれたのか。そこには、採用難時代を生き残るヒントが隠されていた。


参考リンク:

三幸製菓採用facebookページ

本日発売の雑誌、PRESIDENTでカフェテリア採用を取り上げていただいています!わたしたちがなぜこのような採用手法に至ったのか、経緯や想いを、とてもきれいにまとめてくださっています。なんとなくおもしろそうだなぁ、とご応募いただくことも多いカフェテリア採用ですが、その背景にはどんな考えがあるのか、ご理解いただけるのではないかと思います。
取材に同席していなかった私は「こんなに…?!」と驚いたほどの丸裸っぷりですのでぜひご一読ください!

「負け組なりの採用戦略がある」。新潟の米菓メーカーがスカイプ面接 三幸製菓(広報会議)

「雪の宿」などで知られる新潟市の米菓メーカー・三幸製菓は、2006年から地元中心の採用活動をやめ、全国メーカーとして大都市圏中心の採用に転換した。今では、10~15人の採用者のほとんどが東京・大阪・名古屋などで採用した人材だ。

「それまでは、『どうせ新潟本社の企業。全国で採れるわけがない』という負け組の考えがしみついていた」と人事担当の杉浦二郎氏は話す。01年に中途入社し、06年から採用を任された杉浦氏は、企業の知名度・ブランドがないことが最大の課題だと痛感した。学生向けにアンケート調査を実施した結果、ライバルメーカーの知名度は8割近いのに対し、三幸製菓はわずか2割程度だったのだ。そこで、「イメージがないならば、採用活動を通じてつくっていこう」と考えた。しかし、当時は十分な予算がなかった。

予算獲得のため、杉浦氏は経営陣と今後どのような会社でありたいのかを話し合った。「あくまで"新潟の"会社なのか? それとも、全国に販売網を持つ企業として、全国メーカーでありたいのか?」と。答えは、「全国で勝負したい」。他メーカーとの知名度の差を数値で示し、「同じ予算で採用活動を成功させることはできない。他社は採用予算に加え、普段から商品の宣伝広報に投資し、社名を認知してもらう努力をしている」と訴えた。その結果、現在の採用予算は、当初予算の10倍程度に増えている。

「採用学」の視点から探る、これからの新卒採用の方向性
第3回 採用と育成の連関:データに基づき採用と育成をつなげる
服部 泰宏 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院 准教授(jin-jour)

杉浦 多様な人材を採用するためには、アセスメントの軸も多様にすることが必要だと考えていて、それを一つの選考スタイルで行うことは不可能であると考えています。そこで、「カフェテリア採用」として、五つの独自の選考スタイルを用意しました。それは、「遠距離就活」「出前全員面接会」「ガリ勉採用」「ニイガタ採用」「おせんべい採用」です。

服部 なかなか個性的なスタイルのようですね。具体的にはどのようなものなのでしょうか。

杉浦 まず「遠距離採用」は、遠距離の人なら、最終選考まで全てweb上で行えるというものです。学生・企業双方にとって効率的な採用活動ができるようにと実践しています。次に、「出前全員面接会」は、学生自ら5人仲間を集めて会場を準備してもらえば、当社の担当者がどこにでも面接に向かうという選考です。この方式では、選考を行う時点で人を巻き込む力、調整能力、段取り能力を見ることができます。「ガリ勉採用」は、とにかく学生時代は勉強しましたという人を採用する選考です。就活巧者ではなく、やるべきことに全力に取り組み、その継続力と集中力をシンプルに評価したいということで実施しています。「ニイガタ採用」は、新潟に縁もゆかりもないけれどなぜか新潟が好きという人を採用する選考です。地方企業であるという発想を逆転させ、地方だから働きたいという思いにストレートにぶつけるものとして行っています。そして最後が、「おせんべい採用」です。おせんべいへの愛を、それも普通のおせんべい好きではなく、みんなが"引く"くらいのレベルの人にプレゼンしてもらうことで選考を行っています。

プレジデント2015年6/29号

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三幸製菓 雪の宿サラダ 24枚×12袋

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プレイフル・ラーニング

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東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」番外編:最終課題&修了証

MOOC講座の最後を飾る(?)最終課題についても、記録として書いておこうと思う。

最終課題は(1)自分のレポートの提出、(2)他の受講者(5名分)のレポートの採点、(3)自分のレポートの自己採点 というステップになっている。レポートにはルーブリック(評価基準)が最初から提示されていて、ルーブリックを参照しながら自分のレポートの執筆と他者の採点をやることになる。ルーブリックを使ったことのない私にとっては学んだことをすぐ試してみる機会になるというわけだ。

レポートの課題は以下のような内容。

【スキル・セッション】
印象に残ったセッションを1つ選択し、1)学習した内容を明示するとともに、2)その内容に関する自分の感想や意見を追加・補足してください(350〜450字の間におさめ、末尾に文字数を明記すること)。

【ストーリー・セッション】
印象に残ったセッションを1つ選択し、1)学習した内容を明示するとともに、2)その内容に関する自分の感想や意見を追加・補足してください(350〜450字の間におさめ、末尾に文字数を明記すること)。

【総合レポート】
これまで受けてきたあるいはご自身の行ってきた授業の問題点を明らかにし、それを解決する具体的な方法あるいは方針を、本講座で学んだことを用いて説明してください。 また、選んだ方法が問題解決に役立つと考える根拠をわかりやすく説明してください。さらに、本講座で学んだことをふまえ、これから行いたいと考える授業について述べて下さい(700〜900字の間におさめ、末尾に文字数を明記すること)。

課題に取り組む際には、作成の指針として上記のルーブリックをダウンロードし、参照しましょう。レポートの記入欄は一つしかありませんので、各課題がわかるように見出しを付けて下さい。スキル・セッション、ストーリー・セッションに関する課題は選択したセッションがわかるように冒頭に明示して下さい(ただし、見出しおよび選択セッションは字数に含みません)。

トータル8週間の講座だったので、初期に受講した内容はもう既に忘れてしまっており、自分で書いたこのブログをもう一度参照して内容を確認した。こんな形で役に立つとは、書き始めた時は予想もしていなかったが、記録はとっておくものだ。

このレポートをどうにか書き終え提出すると、PCの画面には次々と相互採点用の他の方のレポートと評価入力欄が表示されてくる。その採点をしながら、ふとあることに気がついて戦慄した。

ひとつめの課題って「スキル・セッション」についてだったけど、私もしかして「ナレッジ・セッション」について書いてなかったか?

自分の手元に控えておいたレポートを見たら、しっかり「ナレッジ・セッション」について書いていた。もう提出済、戻らない。あああ。うっかりにも程がある…。とは言え、私が採点しているレポートも二つが混在しているので、間違えたのが自分一人でなかったというのがせめてもの救い。このパートは0点でも仕方ないなあ、と腹を括った。(全体の中では7点分なのでそれほど大きな比率ではないのが救い)

がっくりしながら採点を終え、最後に自己採点。最初のパートをどうしようか迷ったが、混在していたことに途中で気がついて対象が違っていても関係なく採点したので、同じ基準でやろうと範囲違いによる減点はせず、コメント欄でその旨を注記した。いい年してうっかりミスにも程がある、と落胆。入試だったら無得点になるミス。

その後マイページを見たら、成績がついていた。

うっかりミスをした小テストの分が減点されているけど、最終レポートは満点をいただけた模様。追加でいただいたコメントも概ね好評でありがたい。(このあたりの詳細はgaccoのマイページから見ることができるようになっている。)

そして、こちらが2/13に発行された修了証。担当教員の署名入り。

ようやくこれで約3カ月間の苦闘(?)に一区切りついたことになる。実際最後まで受講してみて、MOOCによる学びの特徴や課題を自分なりに感じることができ、講義内容もさることながらそこが大きな収穫だったと思っている。

最後に、中原先生を始めとするスタッフの皆様、とても濃密な講座を提供いただき、本当にありがとうございました。

ネットで学ぶ世界の大学 MOOC入門

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オープンエデュケーション

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反転授業が変える教育の未来――生徒の主体性を引き出す授業への取り組み

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東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week8「キャリアパスを考える2〜ポートフォリオの利用〜」メモ

インタラクティブティーチング」いよいよ最終のweek8となりました。長かったような、あっと言う間だったような。そして、今回は通常の小テストの他に「最終課題」があります。スキル・セッションについての課題、ストーリーセッションについての課題、総合レポートの3つのレポートを書き、他の5名の方のレポートを予め渡されているルーブリックに基づき採点して自分のエッセイも自己採点する、というステップを全部クリアしないと課題完了と見なされません。この相互採点がけっこう時間がかかりそう、ということで早々に自分の課題を提出されている方が私の周りで続出していて、早く手をつけないと、と心中焦っております…。〆切は2月2日(月)9時00分。頑張らねば。

week8のテーマは「キャリアパスを考える2〜ポートフォリオの利用〜」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

●ナレッジ編は、「構造化アカデミック・ポートフォリオ」Structured Academic Portfolio(SAP)の内容と記入方法、そしてその意義についてのものだった。
定義として「大学教員としての活動について、それらの統合および展望も含めて構造的に内省を行い、その記述を根拠資料によって裏付けた、厳選された文書」とあるが、「構造的」であることと「根拠資料によって裏付けた」というところが特にポイントではないかと感じた。単なる思い込みではなく、実績やデータを具体的に整理した上で「なぜこの手法を使っているのか」を考察することで「自分にとっての意義」を見出してくるという点で優れたツールだと感じた。

●SAPチャートのプロセスは、実はキャリアデザイン研修の中で実際に行われている手法とも共通点が多く(スキルの棚卸し→価値観の確認→ビジョンの設定→具体的行動目標の設定)、ブレイクダウンのやり方など参考になるところが多かった。これを使うには、そもそも「○○の仕事の要素」の定義から始まるので、企業の場合は各社での職種(ファンクション)の定義などがあればそれを入り口にするということもできるかもしれない。いろいろ検討ができそうなツールである。

●ストーリー編では、吉見俊哉先生のこういった言葉が非常に印象的だった。

・大学が人生の通過儀礼からむしろキャリアとかビジョンの転換のメディアになるべき
・(これからの大学教員の姿は)ある種メタメディア 世の中にあふれているメディアに対してもうひとつより信頼度が高い そしてより創造的な役割を果たしうるようなメディアになることによって 21世紀型の教師と学生の知の共同体を作っていくような作用
・役に立つことと役に立たないことの両方が重要 役に立たないけれども価値があるということは必ずある(=リベラルアーツ) リベラルな知の基盤がないと実用的に役に立つ知というのは生まれない
・このリベラルな知と役に立つ知のダイナミックな関係というものをつくっていける

キャリアの転機を「18才 30前後 60前後」と挙げられていて、このあたりに大学(院)に入学してくるというのは、実は現実そうなり始めているところであり、ぜひ大学教員の役割として「転換のメタメディア」ということを各大学では明確に位置付けていただけると、社会人としてはありがたい。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

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8-1. イントロ
8-2. ナレッジ(1)構造化アカデミック・ポートフォリオ

目的
教育と研究についての活動を俯瞰し、大学教員としてのキャリアパスを展望する

到達目標
1)構造化ポートフォリオと作成の意義を説明できる
2)SAPチャートの意義と全体構成を説明できる
3)SAPチャートの具体的な作成ステップにしたがい自分のチャートを作成できる

1.構造化アカデミック・ポートフォリオとは

Structured Academic Portfolio(SAP)

大学教員としての活動について、
それらの統合および展望も含めて構造的に内省を行い、その記述を根拠資料によって裏付けた、厳選された文書

内容
本文と根拠資料の2部

教育
研究
サービス(社会貢献+管理/運営)
統合

2.作成の意義

・よりよいキャリアパスを考える機会となる
・これまでの活動を整理できる
・目標を定められる
・資料が整理される

3.作成の方法

1)SAPチャートを作成する
2)SAPチャートの内容の一つ一つを文章化する(スタートアップシート)
3) 2)で作成した文章を再構成し、(他者のサポートも適宜得ながら)推敲を重ねる
4)記述に応じた根拠資料を添付し、一つの文書として整える

8-3. ナレッジ(2)SAPチャート作成の意義

1.チャート作成の意義

◇チャートの特徴

教育
実際の教育活動から順番に挙げていく
そこからどういう方法を具体的にしているのか
その方法をなんで取っているのか どうしてそれが自分にとって大事なのか
その全体としての今後の目標

研究
リサーチテーマについてまず挙げる
その研究テーマごとのメインアウトカム 実際の研究の成果 研究費の獲得
研究力の向上のための努力 その研究所を使っている技術
研究目的 意義 それをなぜ自分が研究しているかという哲学
全体を見渡したときのゴール

サービス
社会貢献活動として何か行っていること

統合
三者の連携
お互いに何か寄与している点はないか
全体を見渡してそのコア 自分の一番大事な方針 生き方 自分の一番の活動の原動力

◇チャートの意義
・よりよいキャリアパスを考える機会となる
・これまでの活動を整理できる
・目標を明確に定められる


2.チャート作成にあたって

3.作成〜作成目的

◇作成の準備
・SAPチャートをA3以上の紙に印刷します
・できれば、ふせんを用意(50mm*15mmのものを2色以上、3M社製 700RP-GKがおすすめ)

◇作成の基本
・各エリアにふせんを貼って整理していく
各ふせんには、1枚に一つのキーワードもしくは短文を記入
・「これまで・今のこと」と「これからのこと」は、ふせんの色を変える

◇留意事項
・オプション項目あり
【斜線の項目】
大切な項目だが非常に時間がかかる項目。時間のあるときに取り組みましょう。
【白い項目】
ふりかえりにはそれほど重要でない項目あるいは人によっては該当事項のない項目

4.まとめ

・SAPチャートは、SAPの構造を可視化し、作成のガイドとなる
・SAPチャートは、単体でキャリアパスを考えるツールとして機能する

8-4. ナレッジ(3)SAPチャートの作成〜教育〜

◇手順

1.「TEACHING FACT」に、あなたの教育経験(非常勤講師、TA、研究室内での後輩指導など)を書いてください
・担当科目があれば、科目名
・TAについても担当科目や職責
・過去3-5年を対象とします(以下同じ)

2.(オプション項目)「EFFORT」にあなたが行った/行っている教育力向上のための努力を書いてください

3.「METHODOLOGY」に、「TEACHING FACT」で書かれた教育経験において
・用いている方法
・心がけていること を書いてください

例)授業冒頭に小テストを行う
ピア・インストラクションを用いている
受講者の名前を覚える
新聞記事など身近な話題を題材とする

4.「METHODOLOGY」に、「TEACHING FACT」で今は用いていないが、
・これから用いたい方法
・これから行いたいこと

を書いてください

5.「STRATEGY」に、「METHODOLOGY」で書いた方法を用いている/用いたい理由を簡単に書いてください

例)反復することで学習内容の定着をはかる

6.(オプション項目、でも重要項目です)
「PHILOSOPHY」に、「STRATEGY」で書いた方針を用いている/用いたい理由(もし既に明確にお持ちであれば)自分なりの教育の理念を書いてください

7.「GOAL」に、「TEACHING FACT」「METHODOLOGY」「STRATEGY」(「PHILOSOPHY」)を見直して、今後達成したい教育に関する目標(新たな手法を用いたい、非常勤講師をしたい、ワークショップに参加する など)を書いてください

◇まとめ
教育活動から出発をして、今実際に行っていることについてまず振り返り、そのやっている活動を見て それをなんで行っているのかという方針について考え、時間のあるときになぜその方針を取っているのかという自分の教育理念を抽出。最終的にそれと現在とのギャップを考えながら目標を立てる こういうプロセスで教育全体を振り返っていただいた

8-5. ナレッジ(4)SAPチャートの作成〜研究〜

リサーチテーマからスタートして具体的な部分を振り返っていく
そして同じくリサーチテーマから今度はその意義とか目的とか理念とかゴールというどんどん深い考えの方を深めていく抽出

◇手順

1.「RESEARCH THEME」に、
あなたの研究テーマ
・これまで、あるいは今取り組んでいるテーマ
・これから取り組みたいと思っているテーマ
の二種類について挙げてください(ふせんの色を変えてください)

2.「MAIN OUTCOME」に、
「RESEARCH THEME」で挙げた研究テーマに関する主な業績(論文、学会発表など)を書いてください

3.(オプション項目)
「BUDGET」に、
これまで獲得した研究資金(日本学術振興会特別研究員奨励費、研究助成金など)を書いてください

4.(オプション項目)
「SKILL SET」に、
ご自身が持っている研究を行う上で有用な知識・技術・技能を書いてください。
(MAIN OUTCOME」で挙げた研究業績で用いている手法や研究を遂行する上で使っている手法について考えるとよいでしょう)

5.(オプション項目)
「SKILL SET」に、
これから身につけたい研究を行う上で有用な知識・技術・技能を書いてください。
4.のふせんの色と変えてください。

6.(オプション項目)
「EFFORT」に、
あなたが行った/行っている研究遂行能力向上のための努力(研究会への積極的な参加、新たな手法獲得のための練習)を書いてください。

7.「VALUE」に、
「RESEARCH THEME」で書いた研究テーマの目的や意義を書いてください。

8.(オプション項目)
「PHILOSOPHY」に、
なぜあなたは「VALUE」で書いたような目的または意義を感じて、その研究を行っているのか、を書いてください

9.「GOAL」に、
「RESEARCH THEME」および「MAIN OUTCOME」(「BUDGET」「SKILL SET」「EFFORT」「PHILOSOPHY」)を見直して、今後達成したい研究に関する目標を書いてください。

8-6. ナレッジ(5)SAPチャートの作成〜サービス・統合〜

1.作成〜サービス

◇手順

1.(オプション項目)「SERVICE」に、
・社会貢献活動(ボランティア活動、NPOへの参画、公開講座担当等)
・管理運営業務(各種委員会委員等)

を書いてください。

2.作成〜統合

オプション項目だけども非常に重要な項目
中央にある教育と研究とサービスがお互いどのように寄与し合っているか
お互いどのように役立っていたり連携したりしているかという部分を書く

◇手順

1.(オプション項目)「INTRGRATION」(中央の矢印のあるエリア)に、
「EDUCATION」「RESERCH」「SERVICE」の関係について考え、互いに寄与あるいは貢献をしていることについて書いてください。

例)授業における教育方法としてとりいれた手法が、研究における課題発見にも活かされた

2.(オプション項目)「CORE」に、
「INTEGRATION」に書いたこと、あるいは「EDUCATION」「RESERCH」「SERVICE」それぞれで書いたことをふまえて、それらの活動をする上で一貫してあなたが持っている姿勢、態度(あなたのコア)を考えて書いてください。

3.(オプション項目)
「ACADEMIC GOAL」に、
これまでチャートに書いたことをふまえて、長期的な目標を書いてください。

4.(オプション項目)
「ACADEMIC GOAL」に書いた長期的な目標を達成するためのマイルストーンになるような、短期的な目標を書いてください。

3.補足

1)オプション項目となっている重要項目は、ワークショップなどでメンターのサポートを得ながらの作成をおすすめします。
2)このチャートは、SAP本体の作成の概観図となります。

◇SAPの一般的な構成

はじめに
教育
理念
理念を実現するための方針・方法
経験
教育力向上の努力 #
目標

研究
研究の意義・目的
代表的な研究
知識・技術・技能 #
獲得した研究資金 #
研究力向上の努力 #
目標

サービス #

統合
教育・研究・サービスの統合 #
自分のコア
目標

おわりに

#はオプション項目

チャートで振り返ったのとは逆

4.まとめ

SAPチャートは、これまでおよび現在の活動を俯瞰・構造化し、今後の目標を設定しつつ、キャリアパスを考える方法のひとつである

8-7. 振り返り

作ってみて→これまでバラバラになっていたことを統合して考えることができた
チャートを作ったことで要素要素が全部可視化されて関係性がわかった

8-8. スキル:まとめ:失敗を恐れるな

自分が持ち味だって思ってるものと自分がダメだと思っているものが実は全く逆だったりすることがある
価値観の逆転
何回もフィードバックしてやっていく

失敗の連続 失敗が逆にチャンスになる

8-9. ストーリー(1)大学の歴史から大学教員のこれからを考える

東京大学大学院情報学環 東京大学副学長 吉見俊哉教授
http://www.yoshimi-lab.jp/biography.html

高等教育全般のお話

「大学とは何か」岩波新書
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1107/sin_k600.html

『大学はいま、十数年にわたる大改革を経て、様変わりすると同時に、かつてないほどの困難な時代を迎えています。現在の危機は何に起因し、これから大学はどの方向へ踏み出していくべきなのか―。学生や大学関係者のみならず、多くの市民がこの答えを求めているのではないでしょうか。いま必要なのは、「大学とは何か」という理念的で根源的な議論のはずです。本書は、社会学者の著者が真正面からそれに取り組んだものです。

 本書では、大学を〈知のメディア〉として捉え、中世ヨーロッパにおける誕生と死、近代国家による再生、明治日本への移植、そして戦後の再編という大きな歴史のなかに位置づけ直します。そして、そうした歴史的把握を通して、大学の理念の再定義を試みるという大胆で挑戦的な論考です。この新書をきっかけに、大学に関する本質的な議論が深まることを期待します。』

大学が生まれたのはだいたい12世紀から13世紀のヨーロッパ
教師と学生の協同組合
ユニバーシティの意味っていうのはそもそもは教師と学生の協同組合っていう意味

中世ヨーロッパでは都市と都市がネットワークでつながれていて先生や学生は旅をして回っていた
旅人っていうのはちょっと弱い立場

支配者からの圧力に対して上位の権力から特許状をもらっているということによって余計な干渉を避けることができた

コミュニティ より普遍的な真理を求めていく
その知識に対する信頼性というのが大学の力を広げていった

16世紀 17世紀 18世紀とどんどん衰退していく

宗教戦争
近代の国民国家ができてくることによってヨーロッパが国ごとに分裂していく
大きかったのはグーテンベルク活版印刷
新しい知識が活字という形で同時に何千部何万部刷られて広がっていく
情報へのアクセシビリティがすごく増したことによってわざわざ旅人にならなくても知識が得られる わざわざ大学に行かなくたって本をたくさん集めて自分の周りに揃えれば必要な知識はだいたい揃う
一種の情報爆発

大学のプロフェッサーだった人って本当に少ない
デカルトパスカルニュートンといった人たちは教授じゃないけど非常に重要な本を書いた
著者であってその本が出版されてその本がすごく重要だということになって著者としての権威を確立した
そういう著者はアカデミーの会員になっていて王侯貴族から庇護を受ける
これが一番偉い知識人で大学の教授って言うのはどっちかっていうとちょっと下 普通の人

その後大学は忽然と復活する 19世紀を通じて知の中枢機関になっていく
転換をした一番大きな力というのは国民国家
ドイツを中心に近代の国民国家が発達してきて 国民国家というのはエリートが必要
エリートを選んで育成して中枢につけていくような機関として大学は復活してきた
選抜であると同時に養成機関
ドイツからイギリス、日本
あるピラミッドがそれぞれの国においてできてくるというプロセスに入ってくる

19世紀から20世紀の半ば過ぎは国民国家という枠組みが世界中に広がっていくプロセス
大学の数も増えたし仕組みも広がっていった
今日本に800近くの大学があるが戦後は50も大学はなかった
その後どんどん大学が増えてる
アメリカ 2700
中国 1700
世界中で1万近く 大学生の数を考えると数千万人いることになる

(中原先生:先生の目から見て大学はどういう状況になっているのか)

20世紀終わりから21世紀にかけて
グローバル化 国家という枠組みよりグローバルな仕組みの方がより強い力を発揮するようになる
デジタル化 情報化 重要な知識やいろいろな情報を得るのにわざわざ大学の図書館に行かなくても、大学の先生に習わなくても得られる
→大学の地位、位置が揺らいでいるのが現在

そのときに大学はどこに行くべきか

大学が人生の通過儀礼からむしろキャリアとかビジョンの転換のメディアになるべき

高校から大学に入るときに入試 大学から社会人に移るときに就活→通過儀礼に入る入り口と出口

あるところに所属していれば次の道が開ける社会において可能だった

今はもっと流動的で複雑になってきている 国の殻、組織の殻が壊れてきている 社会そのものがフレキシブル、流動的に成り立つようになってきている

人生で3回大学に入れるような

18才 30前後 60前後

人生のビジョンとキャリアを転換していくメディア 媒介装置になっていくことができるか

何となく考えてきたんだけれどもそれが現実味を持ってなかったことをもっと現実にしていくという媒介作用

(中原先生:これからの大学教員ってどういう資質、あり方、仕事の仕方が求められるようになるのか)

大学教員もある種のメディアになるべき

学生たちは非常に多様化してくる
18才 30前後 60前後 大学に入って新しい知を求める そこで一緒にコラボレートする 一緒に学んでいくような場が大学の中に生まれてくるとそういう人たちをどうやっていい形でつないでいくか どういうつなぎかたをすれば一番創造的なのかってことを考える役割 これが大学教員がになうべきもの
知のファシリテーターのような役割

大量の知識に比較的容易にアクセスできるようになっている
どういう情報が信頼できるか
選別しながらその情報をどういうふうに理論化していったり分析していったりすると新しい知が生まれてくるかについての方法論 メタなレベルでの認識論がものすごく重要になってくる

大学教員 ある種メタメディア 世の中にあふれているメディアに対してもうひとつより信頼度が高い そしてより創造的な役割を果たしうるようなメディアになることによって 21世紀型の教師と学生の知の共同体を作っていくような作用

(中原先生:クリエイティブなコンフリクトを起こしつつ新しいものを生み出していく、あとはいろんな知識があふれている時代の目利き)

大学の根本は変わらないんじゃないか
ひとつは大学の学びが成り立つためには教師と学生の信頼関係
もうひとつは役に立つことと役に立たないことの両方が重要 役に立たないけれども価値があるということは必ずある(=リベラルアーツ) リベラルな知の基盤がないと実用的に役に立つ知というのは生まれない
このリベラルな知と役に立つ知のダイナミックな関係というものをつくっていける
このふたつは変わらない それがどういう形を取っていくのか

ものすごく環境が変わっている中で学問の根本であるような学びの共同性というものを維持していく そのために教師に求められる能力とか役割は変わってる

<メッセージ>
今大学教員を目指している人たちは本当に大変
才能って執念
自分はこの道を進むんだということを諦めないあるいは逃げない
その先にきっとみなさんを待っている大学生たちがいる

才能とは執念だと思い続けながらあなた自身の執念を持ち続けてほしい

                                      • -

大学とは何か (岩波新書)

大学とは何か (岩波新書)

アカデミック・ポートフォリオ

アカデミック・ポートフォリオ

東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week7「キャリアパスを考える1〜大学教員としてのあり方〜」メモ

インタラクティブティーチング」week7、今回は配信開始直後に講座を視聴し、早々にテストに進んで受講メモまでまとめることができました(やればできる!)。気がつくと残り1回。名残惜しい気がします。

week7のテーマは「キャリアパスを考える1〜大学教員としてのあり方〜」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

●大学の現状などは大学教員の友人たちから(かなり生々しい話も含めて)いろいろ聞いていたり、日常追いかけることが多い話題なので、おさらいとして拝聴。(ただし印象論ではなく数字などのデータで押さえておくことは重要)

●「大学教員には、教育、研究、管理運営、社会貢献の4つの職責があり、おかれた状況によってそれらのバランスは変化する」「教員として求められることが変化してきている」という説明を聞き、自分自身が学部生として在学した時代の記憶は過去のこととして置いておいた上で現状を正しく認識し、これからのあるべき姿を考えるべきだと改めて思った。

●「キャリアパスを考えるツールとしてのポートフォリオ」が具体的にどんなものになるのか、本業からの興味として次回に期待したい。(大学教員に限らず考え方を応用できそうなので。)

●スキル編のテーマは「クラスルームコントロール」。ひとつひとつの具体的アドバイスが非常に実用的だと感じた。

特に

・目線によるコントロールで「私はあなたを認識してますよ」というサインを出し続けること
・学生の反応に敏感であるために、講義の前に集中して、自分の内面に目を向ける時間を取るということ
・相手の反応を見るの、自分の表情が相手に移っているか、息が自分と相手がシンクロしているかどうかということがポイントになるということ
・全員が非協力的な場合でもこちらが粘り強くリアクションを求めていく、挙手は有効であること


こういったあたりはすぐに実践で活用できそうである。

●ストーリー編は、少し前はワークショップ論、最近ではMOOCでおなじみの東大・山内先生。MOOC・反転授業の歴史と意味合い、それを踏まえた大学の今後の役割について、コンパクトにわかりやすくお話いただけた。

以下特に印象に残った言葉。

・元々存在していたオープンコースウェア(OCW)とMOOCの違い
「(OCWは)あくまで授業資料を公開してる。授業そのものをオープンにしてた訳じゃない。それに対してMOOCは実際に掲示板でディスカッションしたりテストで評価したり最後合格したら修了書も出るということで、非常に授業に近い形の教育サービスがオンラインで無料で公開されたというところに非常に大きいポイントがある」

・大学はどんな風になっていくのか、という問いに対して
「何を教えたっていうよりもどういう人が育っているかということがすごく問われる時代になってくる」

・受講者へのメッセージとして
「学習者に対しちゃんとインタラクティブに支援をしてアウトカムも保障するっていうときに一番大事なのは、学習者をみとること」
「何か育ててるプロセスそのもの、何か変化していくことがその場で見えてくるわけだから、実はインタラクティブティーチングって楽しい。楽しめばそんな苦にもならない。その楽しさをわかってもらうことがすごく大事」

●次回Week8は「キャリアパスを考える2〜ポートフォリオの利用〜」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

                                  • -

7-1. イントロ
7-2. ナレッジ(1)変わりゆく大学

目的
大学教員として今求められることを理解し、そのあり方について考えることができる

到達目標
1.日本の高等教育の概要を説明できる
2.大学教員としての責務を4つ挙げ説明できる
3.現在の活動の俯瞰と今後の展望をおこなうツールとしてのポートフォリオの特徴について説明できる

1.日本の高等教育

高等教育機関
・国公私立大学(大学院含む)
・短期大学
高等専門学校
・専門学校

文科省が調査しているのは大学・短大・高専

大学数 782

国立 86
公立 90
私立 606 私立77.5%

学生数 286万人
教員数 18万人

全入時代
大学への進学希望者が進学先を選り好みしなければ、どこかには入れる状態

大学進学率 約50%
1990年から比べると約2倍

OECD平均 62%

大学が多すぎるという議論があるが、進学率という観点から見るとそうとも言い切れない

現代の大学をとりまく環境の変化
進学率上昇、技術進歩、教育への関心の高まり

大学が対応すべきこと
・多様な学生&学生の質的変化
・学習環境の変化、多様性
・説明責任、質保証

現代の大学は質的な変化を求められている

7-3. ナレッジ(2)大学教員のあり方

1.大学教員という仕事

教育
研究
管理・運営
社会貢献

所属機関、専門領域、キャリアステージによって四者のバランスは異なる

これまでは研究重視でした

<今求められていること>
教育者としての資質とその質保証も
教員自身がACTIVE LEADERであること

・ファカルティ・ディベロップメントの義務化(←法令で義務化されている)
・多角的評価
・採用時の判断方法の変化

大学教員には、教育、研究、管理運営、社会貢献の4つの職責があり、おかれた状況によってそれらのバランスは変化する
教員として求められることが変化してきている


7-4. ナレッジ(3)目指す大学教員像を考える

1.大学教員をめざす

1)これまでの活動の振り帰りと俯瞰・構造化
2)目指すものの明確化
3)長期・短期目標の設定

2.キャリアパスを考えるツールとしてのポートフォリオ

・対象とする活動全体を多角的に俯瞰する
・根拠に基づいた記述を行う

高等教育におけるポートフォリオ

作成目的
学生 学習の定着、学修成果の可視化 (ラーニング・ポートフォリオ)
教員 改善、多角的業績評価、情報共有 (アカデミック・ポートフォリオ)
職員 改善、人材配置 ex.愛媛大学 (スタッフ・ポートフォリオ)
機関 説明責任、評価 (機関・ポートフォリオ)


教員の作成するポートフォリオ
ティーチング・ポートフォリオ
・アカデミック・ポートフォリオ

振り返りのツールとしての特徴
・振り返りを促す構造と作成方法(業績の単純な集積ではなく、俯瞰と構造化)
・文書やチャート等にまとめて可視化

キャリアパスを考えるツールとして
・現在の活動の整理、価値づけ、構造化、可視化
・理想とする状態の明確化
・長期・短期目標の設定
・改善への気づき


7-5. ナレッジ(4)ディスカッション:理想の大学教員像

目標
大学教員としての活動のうち理想とする「教育」と「研究」の関係について考える

Question
あなたの理想の教育と研究の関係をどのように考えますか?二者を円に見立て、両者の大きさのバランス、重なりに注意して描いてみましょう


7-6. 振り返り
7-7. スキル:応用編2:質疑応答(2)

テーマ
クラスルームコントロール

Q.リーダーの見分け方

A.リーダーは常に全体を気にしている。座り方で言うと斜め。体の開き方。
クラスが始まる前にリーダーを観察しておく 一番アクションや声が大きい 一番目線が向かってる人間 難しいときは講座に入ってお互い話し合ってもらってその時の雰囲気で見る

Q.全員が非協力的な場合はどうするか

A.そういったときもこちらが粘り強くリアクションを求めていく
挙手は有効。どちらかに必ず手を挙げてくださいと
そこから徐々にみなさんの気持ちをほぐしていく

一人目を味方につけてネットワークを作っていく

最初に絶対手を挙げさせる 参加させる

Q.リーダーの周りにいる人の発言を引き出すには

A.リーダーの顔色を気にしているので難しい場合もある
目線で安心させる リーダーに発言されてしまっているメンバーに目線を移して安心させる
休憩中 リーダーと離れた瞬間にちょっとした声かけをしてあげる

Q.物理的に教員が学生に近づくのが難しい場合は

A.目線によるコントロール
3列目と思ったときにしっかり3列目を見る
歩くというのは行動だけど、歩く意識が空間を作る
自分もこの空間の中に存在するんだという意識を持ってもらう

私はあなたを認識してますよというサインを出し続ける

Q.学生の反応のチェックの仕方

A.体の向き 自分に好意を持っているのかネガティブなのかが伝わってくる
目線の合う合わない 表情 微妙なサインを感じられるマインドにしておくのが大事
講義の前に集中して、自分の内面に目を向ける時間を取る

ひとつ鉄板を持てるとやりやすい

どん引きを恐れない→「すばらしいサイレントムービーを見ました」

大事なのは自分の表情が相手に移っているか
息が自分と相手がシンクロしているかどうか

Q.寝てる人がいるとき、ガヤガヤしているとき

A.「最後までおしゃべりしている人は講義に協力していただきます」というと静かになる
必ずそういう人たちにもスポットを当てて参加しやすいような状況に持ってくる
こういったアクティブ・ラーニングをするときは、全員がここに参加しているんだというモードをどこまで作れるか


7-8. ストーリー(1)MOOCと反転授業−大学はどうなるか

東京大学大学院 情報学環 学際情報学府・教授 山内祐平先生
http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/profile.html

専門→高度に情報技術が発達した場所での学習

MOOCの発展
2011年の秋にスタンフォード大学の教授たちが自分たちの授業をネットで公開したらどうなるだろうって実験した

人工知能のコースの授業で世界中から16万人集まって400位以内にスタンフォードの学生が一人も入らなかった

教育がオンラインを使えば国境を越えるというのがわかったので2012年の春にCourseraとかUdacityとかそういうものが立ち上がってきた

テニュアポストを投げ打って教授たちが作った
社会的使命 大学レベルの知恵をこれぐらい世界中の人が求めてるんだって

コーセラのパートトランスカンファレンスに行ったとき非常に印象に残ったのはみんなミッションって言ってる
宗教的なバックボーン ある意味使命感
大学っていうのは社会の中に位置付いていて社会で求める知をみんなで分かち合おうっていう やっぱりこれがMOOCの一番根本にある考え方だと思う

(中原先生:それ以前にもネットで授業を出しましょうみたいな話があったと思うけど、それとMOOCとの違いは?)

2000年代初頭にMITがオープンコースウェアっていうのを始めて、授業映像とかシラバスとかテストみたいなものをネット上に公開するみたいなことを10年以上やってきた
あくまで授業資料を公開してる
教育サービスである授業そのものをオープンにしてた訳じゃない
それに対してMOOCは実際に掲示板でディスカッションしたりテストで評価したり最後合格したら修了書も出るということで、非常に授業に近い形の教育サービスがオンラインで無料で公開されたというところに非常に大きいポイントがある

履修証は大きい

スタンフォードの教員がベンチャーとして立ち上げるときにスタンフォードはむしろ反対した 大学は証明書を出すっていうのが大学の仕事だと思ってるんで 教員とか企業が出すものじゃないっていうふうにたぶん思ってた

(中原先生:反転授業ってどういう経緯で出てきた言葉なのか)

反転授業って言うのはflipped classroomとflipped teachingの訳

今までの普通の授業 授業中に基本的な知識を習得した上で応用的な問題演習みたいな話は宿題でやってきてくださいっていう

これがネットで学ぶことが民主的にがーッと広まっていったので今まで教室でやっていた基本的な知識を習得する部分は自宅でオンラインで予習してきてくださいと 難しい応用課題は一人でやってたけど本当はお互いに助け合ったり先生がヘルプに入った方がよりよく学べるはずなのでこっち側を教室に持ってこようってことで教室の役割と自宅の役割がひっくり返るので「反転授業」って言われるようになった

基本的には応用的な課題をインタラクティブでやるということになる

(中原先生:こういう時代になると大学の役割、大学は今後どうなっていくのかっていうのが大学人としては気になるところなんですがそれはどうですか)

ひと言で言うとオンラインの学習がどんどん広がっていくとオンラインでできることはオンラインでやって 対面の特性が一番生きることを対面でやって そういうある種ハイブリッドサービスにだんだんなっていくんじゃないかと思います

で知識習得寄りのところはオンラインである程度できるので すごいコストのかかる対面は対面じゃなきゃできない 非常に密度が高くってかつそういうので初めてできるような たとえば物事を深く学ぶであるとか新しい付加価値をつけるような創造力をつけるとかそういう今社会で求められている高次な能力育成の方にシフト

でもそういうことをやろうとしたら知識も必ず必要なので知識習得が要らなくなるというわけじゃなくて それはある程度オンラインでやってといった形でだんだんサービスがハイブリッドになっていくんじゃないかと思います

(中原先生:大学といってもいろんなところがありますが、こういう総合研究大学みたいなのはどんな形式になっていくんでしょう やっぱり探求とか研究中心に?)

探求、研究っていうときにいままでだと専門でコースがバッシリ決まってた そういうのよりはもう少し自由度があって 例えば別のオンラインプログラムとか別の体験プログラムである程度の単位をとってくるとかカリキュラムがだんだんフレキシブルになっていって最終的には4年間かけてそれなりの人を育てられるかどうかっていうところがすごく問われるようになるんじゃないか 何を教えたっていうよりもどういう人が育っているかっていうことがすごく問われる時代になってくるんじゃないか

まさに達成度 アウトカム評価っていわれる そっちが重視されるようになる

(中原先生:そういうときに大学教員の役割というのは変化していくんでしょう)

大学教員のすごく大事な側面として専門性があるってことがある それは絶対これからも大事にしていく必要があるけど 今までは専門性があればそれをきちんと説明できればティーチングになってきたけどこれからは自身の専門性プラスインタラクティブに学習を支援することができる で学びをみとってその人のアウトカムにつなげることができるっていうもうひとつの専門性がある つまり専門性が二重になるっていうことが大学教員だけでなく教員全般で非常に重要になってくるんじゃないか

インタラクティブティーチングって小学校の先生はこの専門性ってすごく問われるところだと思うけど、大学の教員も小学校の先生並みのそういう能力を求められるようになってくるんじゃないかな

<メッセージ>
学習者に対しちゃんとインタラクティブに支援をしてアウトカムも保障するっていうときに一番大事なのは 学習者をみとることだと思ってる 学習者が今どういう状況でどういう手だてを打てばどういうふうに変わるかってことをきちんと見てちゃんと判断してちゃんと手が打てる しかもそれが短期的なことだけじゃなくて3年間4年間積み上げていくってことが大事
すごい大変だと思うけどこれってけっこう楽しい
何か育ててるプロセスそのものなので 何か変化していくことがその場で見えてくるわけだから 実はインタラクティブティーチングって楽しい そうやってインタラクティブティーチングすることを楽しんでもらうって大事かなと思ってて 楽しめばそんな苦にもならない その楽しさをわかってもらうことがすごく大事

大学教授という仕事 増補新版

大学教授という仕事 増補新版

大学教育を変える教育業績記録

大学教育を変える教育業績記録

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

10年後の教室

10年後の教室

反転授業

反転授業

東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week6「学びを促す評価」メモ

インタラクティブティーチング」week6をテスト〆切(1/11)に間に合わせるべく年明けに視聴し、受講メモまでまとめることができました。そして今日から講座はweek7が始まり、ようやく徐々に追いついてきた感じです(いやもっと早く取りかかろうよ、というツッコミはご容赦を)。

week6のテーマは「学びを促す評価」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

●企業研修ではあまり「評価」というのは厳密にはやられていないと思うので、今回「評価」の意義や要素から、具体的な手法まで体系的に知ることができるよい機会となった。(企業で「評価」というとどうしても「業務の成果評価」の方がなじみがあるような…)

●ルーブリックは名前だけ耳にしたことはあったが、体系的に学んだのは今回が初めてだった。「プロジェクトパフォーマンスを評価する課題における評価軸の可視化」という意味では、新規事業企画の評価などにも応用できるのではないかと思った。あとルーブリックを使うと受講生同士のピアレビューなどもやりやすくなると感じた。

●ただしルーブリックの質に左右されることと、ある程度の質を求めるとすると作成時間がかかりそうなので、そのあたりの担保をどうするかが課題になりそうである。(おそらくすでに研究されているのだろうとは思うが)

●スキル編の質問のほとんどが「声」に関することだったのは興味深かった。講師のお二人も言われてるが、「声」を「喉で出す」ものだと思っているとコントロールしにくいが、全身を使った表現のひとつだと考えるといろいろ工夫ができるのではと思う。自分自身が演劇経験者で今能楽を習っており、声のトレーニングを定期的にやっていることになるからあまりそこでは悩まないのだが、確かにそういったことをやっていない人が多数派であり、日常の中で「声」を通すというのは機会が少ないのだろうなあと思う。

●ストーリー編で入江先生が

「俯瞰する目がないと学部生に教えられない。自分が専門分野の細いところにはまりかかってたのがちょっと引き上げてもらってる感じ」

と言われていたのが印象的だった。何より理研の研究者から大学教員という立場になって、授業について苦労することもあるけどとても楽しそうにお話しされているのがいいなあと感じた。

●またもうひとつのストーリー編の加藤さんは、自分と同じ企業研修のフィールドの方なので非常に納得感を持ちながらお話を聞いていた。

「いかに最初みんなが「ちょっと話してみようかな」っていう場作りをしていくかっていうのが僕らプロの勝負。最初の1時間がもう決定的に大事」

というのはもう本当にそうで、そこが一番の勝負どころだと私も思って日々格闘している。

●もうひとつ、加藤さんが

「自分ごとにしていくっていうプロセスが本当に大事だと思うので そこで僕が待てるかどうか」

と言われていた点も非常に響いた。特に私のジャンル(キャリアデザイン)は自分ごととして自分とコミットしてもらわないと「絵に描いた餅」にしかならないから、「信じて待つ」というのを心の中で念仏のように唱えていることもままある。

●次回Week7は「キャリアパスを考える1〜大学教員としてのあり方〜」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

                                  • -

6-1. イントロ
6-2. ナレッジ(1)評価の目的

目的
学生の学びを評価するための基礎知識を得て、評価の意義を理解し、活用できるようになる

到達目標
1)評価の意義について説明できる
2)総括的評価と形成的評価の特徴について説明できる
3)評価の“評価”について重要な観点を説明できる
4)ルーブリックの基本構成を説明できる
5)ルーブリックの作成手順を説明できる

1.評価の意義

学生
到達度の把握
学びの支援

教員
学生の理解度の確認・支援
改善

機関
質保証
説明責任

いわゆる「成績」だけはでない、多様な意義がある

2.総括的評価と形成的評価

・総括的評価(Summative)
達成された学習成果の程度の把握を目的とする
合否判定

・形成的評価(Formative)
学習プロセスの改善を目的とする
学習活動の逐次修正につながるフィードバック

形成的評価→プロセスの途中で順番にアドバイスしていくイメージ

一般的な特徴
形成的評価 総括的評価
目的 学習途上の改善 達成された成果の測定

機能 優れた点、改善点などの 合格水準判定
フィードバック

時期 学習中 学習終了後

成績評価 含めない 含める

範囲 狭い 学習内容のみ 広い 発展課題も含む

・評価は、学生のためだけでなく教員、機関にとっての多様な意味がある
・形成的評価は学習の改善を促す


※参考
Beating 第35号
2007年度Beating特集「5分で分かる教材評価講座」開講!
第1回:そもそも評価とは?なぜ必要なの?「形成的評価と総括的評価」
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/035.html

『学習科学とテクノロジ』
 三宅なほみ・白水始(著) 放送大学教育振興会

ほんのさっくり「学習科学」 -「学習科学とテクノロジ」(三宅なほみ・白水始)から
(tate-lab)
http://www.tate-lab.net/mt/2010/08/ls.html


6-3. ナレッジ(2)評価を設計する際のポイント

1.評価の方法

←筆記 単純 実技→

選択回答式問題 断片的評価(活動観察)

自由記述式問題 実技テスト 面接、口頭試問

パフォーマンス課題 小論文、作品制作、プレゼン etc

複雑

これらを組み合わせた「ポートフォリオ評価」

2.評価の評価

信頼性 Reliability
妥当性 Validity
客観性 Objettivity
効率性 Efficiency

1)信頼性 Reliability
結果の再現性、テストの精度

同じ集団に同質の試験を何回行っても同じ結果が得られる程度

2)妥当性 Validity
評価方法の適切性

用いる評価方法が測定対象となる能力や行動を測定できているかどうか

3)客観性 Objettivity
採点者間による結果の一致性

採点者が変わっても結果が同じかどうか

4)効率性 Efficiency
評価の時間的、経済的な実用性

実施や採点が容易であるかどうか

・評価方法は多様であり、測定したい対象に応じて使い分ける
・評価方法の“評価”観点としては、信頼性、妥当性、客観性、効率性がある


6-4. ナレッジ(3)ルーブリック(1)

1.ルーブリックとは

プロジェクトパフォーマンスを評価する課題における評価軸の可視化
・レポート課題、演技などの評価しづらいものの評価方法

要素
・課題
・評価観点(課題が求める具体的スキル・知識)
・評価尺度(達成レベル)
・評価基準(具体的フィードバック内容)

定義
ある課題をいくつかの構成要素に分け、その要素ごとに評価基準を満たすレベルについて詳細に説明したもの(スティーブンス&レビ, 2014)

2.ルーブリックの基本構成

要素
・課題
・評価観点(課題が求める具体的スキル・知識)
・評価尺度(達成レベル)
・評価基準(具体的フィードバック内容)

1)課題
レポート、論文、プレゼンテーションなど、教員が学生に期待する「行動」が含まれたもの

課題の明記の意義
・採点時の利便性
・学生の注意をひくことができる

2)評価観点
課題における達成が期待される要素をもれなくあげる

・一般に7個程度まで
・行動の「質」についての記載は含めない ←形容詞の入っていないもの
○「全体構成」 ×「優れた全体構成」
・学生の学習の指針とフィードバックに利用

3)評価尺度
与えられた課題がどれだけ達成されたか表すもの

・1〜5個程度の区分
・使用される標語は明確かつ教育的配慮が必要←やる気を失わせるような文言は使わない
例) 優秀 - 良 - 要再学習
模範的 - 優秀 - 合格圏 - 不合格
卓越 - 有能 - 中間 - 初歩

4)評価基準
評価観点ごとの到達度を具体的に記述する

・最高レベルの評価基準のみを示すルーブリックは「採点指針ルーブリック」
・隣のレベルとの差異を明確に記述
・学生の学習の指針とフィードバックに使用

※参考
ルーブリック - 教授システム学専攻 - 熊本大学

『ルーブリック(Rublic)とは、レベルの目安を数段階に分けて記述して、達成度を判断する基準を示すものである。学習結果のパフォーマンスレベルの目安を数段階に分けて記述して、学習の達成度を判断する基準を示す教育評価法として盛んに用いられるようになった。これまでの評価法は客観テストによるものが主流を占めていたが、知識・理解はそれで判断できたとしても、いわゆるパフォーマンス系(思考・判断、スキルなど)の評価は難しい。ポートフォリオ評価などでルーブリックを用いて予め「評価軸」を示しておき、「何が評価されることがらなのか」についての情報を共有するねらいもある。 』

6-5. ナレッジ(4)ルーブリック(2)

ルーブリックの作成

1)評価観点を定める
2)評価尺度の段階数とラベルを決める
3)評価基準を定める


1.評価観点を定める

課題を出すことで、自分が測定したいものは何でしょう?と自問自答する

評価観点となります

評価観点が十分かどうか、抜けがないかの確認をしましょう

・そのコースの目的・目標を確認する
・(ルーブリックができあがったら)回答案を作り、それを採点してみる

2.評価尺度の段階数とラベルを定める

1〜3が使いやすい
教育的な配慮をして文言を決める

3.評価基準を定める

一番いいもの→一番もうちょっと頑張ってほしいもの→その間のグッドのところ

ルーブリックは基本的に評価観点、評価尺度の、評価基準の順に作成するとよい


6-6. ナレッジ(5)ディスカッション:ルーブリックを使う

ディスカッション:
次のページにアクティブ・ラーニングに関するレポート課題とレポート例、それに採点のためのルーブリックがあります。ルーブリックを活用して、レポート課題を採点してみましょう。具体的には、レポート課題を読み、各観点の該当する評価基準に◯をつける、という作業になります。採点がおわったら、実際の採点作業を通じて感じたことも含め、ルーブリックを使用することのメリットおよびデメリットについて考えてみましょう。
また、改善案がある場合には、掲示板で共有してみて下さい。

ルーブリックの実際の利用
1)ルーブリックを作成し、課題とともに学生に配布する
2)学生はルーブリックをガイドとして利用し(自己採点をして)課題とともに提出する
3)教員はルーブリックに基づいて課題を採点し、ルーブリックとともに返却する
(該当するところに丸をつけたり、下線を引いたりしてコメント代わりにする)

課題:
「大学の授業にアクティブ・ラーニングを取り入れるべきである」という主張に賛成か、反対か。いずれかの立場を選び、根拠となる文献を参照・引用しながら論じなさい。参考文献表を除いて、150〜300字で論じること。

手続き:
採点した経験をもとに、ルーブリックを利用することのメリット・デメリットを考えましょう

教員にとってのメリット・デメリット
メリット
・課題の意図を伝えやすい
・採点がぶれにくく、客観性も比較的保たれる
・採点時間の短縮かつ丁寧なコメントが可能

デメリット
・よいルーブリックの作成が難しい
・ルーブリック作成に時間がかかる

学生にとってのメリット・デメリット
メリット
・課題の意図、評価基準を知ることができ作成ガイドとして利用できる
・学習活動の自己評価が可能となる
・丁寧なフィードバックが期待できる

デメリット
・(ルーブリックがうまく作られていないと)ルーブリックにあらわれた観点のみに注目しすぎてしまう


6-7. 振り返り

6-8. スキル:応用編1:質疑応答(1)

自身、教員として、自身にある質問、悩み、心の部分あるいはスキルの部分そういったところに視点をあてて質問してもらいたい

Q.喉を痛めない声の出し方

A.声帯がぐっと締めつけられるとガラガラになってしまう→のどを開けてしゃべるというのを意識(ex.あくびののど)
リラックスした状態はのどが開いてる→気持ちの上でも「このことを本当に発表したい」「みんなと分かち合いたい」という気持ちになること
響きを意識する 体全部から声、音というのは出ている
響きを意識して自分でその声が嗄れないようなポジションを探してそこで喋るということを意識していく


Q.自分は声が低くて聞き返されることがよくある。声の低い人、高い人で声の出し方で意識するところはあるか

A.自分の声の低さというのは説得力のある声なんだと認識した上で使われると伝わり方が変わってくる

高低よりも明るさ 持ってるものを前に届けるというイメージを持つだけでもだいぶ変わる
明るさは表情 低い声になってるなと思ったら目を開けてみて

声は全身で出している

Q.緊張して声が震える、足が震えて止まらなくなる、動き出しができない

A.カッコつけると緊張する→まず今の自分ってどういう自分なのかを素直に受け止める
自分をオープンにして素直にその場に立つということから始める
震えたりするのも隠さずに素直に臨んでいく

カッコつけずに素直にやる

Q.効果的に身振り手振り 基本的な動作の仕方

A.手に何か積み木のようなものを持っていると意識をして使っていく

Q.自分の個性や持ち味をどうやって見つけていったらいいのか

A.大切なのは自分がいったい何を伝えたいのか 何のために人前に立っているのか


6-9. ストーリー(1)研究の駆動力にもなる「おもろい教育」を目指し
東京大学大学院理学系研究科・入江直樹准教授
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/hassei/irie/

専門→生物学 動物がどんなふうに進化するか してきたか 人間ってなんでこんな形をしているのかという研究
進化の過程と体がどういうふうに作られていくのか

進化発生学、科学英語

進化発生学 今年19名 学部生3年生

「ここがわかってないですよ」というのを伝わるように心がけている
全部わかってることを話しても面白くない

教科書のこの部分だけは勉強しといてくださいと言って小テストとかをして知識確認は一応する
それをできるだけまとめられるようにクエスチョンベースでの小さな項目を授業内で組んでいく

エスチョンについてみんなで議論する すでにわかってることなら当てながら答えてもらう

議論は難しい

中原先生:何がわからないのかがわからない 何に関心があるのかというのがいまいちわからない

東大に来る前は理化学研究所(理研)にいた 東大に移って1年目

中原先生:ご自身の研究にとって教育ってどんなもんですか

自分の研究にプラスになるもの
研究所にいたときは自分の知識を削りながら研究してるような感じ
時間はかなり自由に使えてどんどん自分で勉強進めれるけど
俯瞰する目がないと学部生に教えられない
自分が専門分野の細いところにはまりかかってたのがちょっと引き上げてもらってる感じ

自分は専門家の作法にはまっちゃってるときがあるんで学部生とかのほうが発想が自由

中原先生:最初授業するのに何に苦労したか

授業を受ける学部生の知識がどれぐらいあるのか

中原先生:去年駒場に行って1〜2年生向けの授業をした 院生で扱う授業の三分の一ぐらいにして細かくかみ砕いてやらないと伝わらない


<メッセージ>
これは自分の尊敬する先生が言ってたのが
大学の先生はたしかに忙しいけどduty duty って言い過ぎ
そこから得られる面白い部分、研究に役立ってる部分がいっぱいあるんでやってみたらすごい楽しい
学問分野を育てるやりがい

中原先生:次の時代の学問を考えてる先生は教育にちゃんとコミットしてる

6-10. ストーリー(2)対話を使った組織変革・人材育成
株式会社アクション・デザイン代表加藤雅則氏
http://actiondesign.jp/memorandum/

企業の中でワークショップ
人材育成 人材開発

最近の大きな流れは日ごろ集まれない人が同じ立場で集まって話をする それで学んだことを何かアウトプットにしていくというトレーニン

実際に自分で学んだことをってみて、やってどうだったかをまた持ち寄ってそれでまた発展 企業で言うPDCA これの繰り返しをやるということが多い

中原先生:研修中は何をやってるんですか

僕の役割はファシリテーターという役割 もしくはグループコーチという役割
みんなで話し合って頭の中を整理する 整理するだけじゃなくて 理不尽なこともいっぱいあるので気持ちの整理もする

広げてみる その中で他の人はこう感じてる じゃあ自分はどうだって 自分のことを客観視できる

中原先生:ファシリテーターファシリテーションという役割には他にどんなことがありますか

一番大きいのは場作り ここはどういうことを話していい場所なのか どこまで話すのか 特に企業の場合タブーが一杯あるのでどこまで踏み込んで話していいのか みたいな
あとどういうことを話すのかというのがたぶん一番大事

中原先生:対話をするんでもある意味ルールっぽいことをきちっと言って設定

トーンアンドマナーというか どういうトーンでどういうマナーでやるかっていう

いかに最初みんなが「ちょっと話してみようかな」っていう場作りをしていくかっていうのが僕らプロの勝負 最初の1時間がもう決定的に大事

中原先生:みんな学びたくてきてるわけではないし

腕組みして「やってごらん」とかそういう人をいかに「ちょっと面白いかな」「ちょっとやってみようかな」と いかにそこに早くもっていけるかっていう そこは自分の全経験をかけて勝負しなきゃいけないところになります。最初の1時間は

みんな本当に忙しい中で 細分化された中で高速回転で仕事してるのに 急にポンと日常から引き離されて研修だって言われると ある種どのリズムでやっていいか戸惑うんだと思うんですよね

今日は何させられるんだ 何する場なんだっていう困惑みたいなのが多い 特に偉い人になればなるほど

中原先生:発言を促してもうんともすんとも言わない人もいるのでは

いますね だからそういう人はたぶんその人が考えているであろうことを代わりに僕がちょっと言語化するっていうのは結構大事かなと思っています

たとえば「今日こんなに忙しい中に何のためにいるのかって つい思っちゃいますよね」っていうのを このあたりに吹き出しが出てるようなのを代わり言語化してあげるとみんなニヤッとします

「ああそういうの一応わかってるんだな」ってなるとちょっと溜飲が下がるというかガードが下がってちょっと前向きになってくれるかなという気がします

タブーに踏み込む
反応があれば場は進行する 反応がないのが一番困る

収集つかなくなるとき 時に発散系 いろんな話が出てくるのはいいんだけど でどうするのよ、みたいなはてなマークが出るとき

そういうときって 僕が何か見えてるときは「皆さん本当はこうしたいんじゃないんですか?」ってスパンと言えるときもある 感度がいいときは
感度が悪いときは相談しますかね 「皆さんどうしたいですか?」って そうするとそれなりに経験がある人だから「こうしていきましょうよ」とか こっちがいいこと言わないといけないという呪縛から離れると意外と面白い声が参加者の中から出てくる

自分たちでやることを自分たちで決めさせたい

僕は当事者じゃないから 外部の人間 ファシリテーター 支援者としていて やるのはやっぱり彼らなので彼らの手に戻したい

自分ごとにしていくっていうプロセスが本当に大事だと思うので そこで僕が待てるかどうか

「こうしたらいいじゃん」って誘導したくなるときもある でもそれだったらコンサルタント 僕はコンサルタントじゃなくてファシリテーターでありコーチなので

読まれ始めたら「読んでるでしょうみなさん」と言語化してチャラにしてもう一回そこから建て直してリスタートするみたいなのはすごくやる
ある程度組織の中で熟練者ですからオチを見つけたらそこに向かって予定調和的に最後集まってくるんですね そこはなるべく蹴散らしたい

中原先生:インプロのようなファシリテーション どうやったらうまくなる

自分の身体感覚としては合気道がすごく参考になっている
相手の力を使って投げる 相手と一体化して展開していく
場をいかに創造、一体化して場の一部として自分が使えるようになると動かせるか コントロールを手放せるようになる

僕自身がせっかちなところがあり つい参加者の人が考えてることを追い越しちゃう
先のこと言っちゃうとか「こうでしょ」とやっぱり言いたくなる ある意味答を言いたくなる だけどできればそれをなるべく言わないで待つ
参加者の人が自分で起き上がってくる、立ち上がってくるまで待てるかっていうのが筋トレが必要だった部分

中原先生:積極的に関わるために受動的な関わり方を必要とする

追い越さないというのがとても大事だと思う

<メッセージ>
人の可能性を信じて関わるかどうかすべてににじみ出る
スタンス 立ち位置 あり方
人間観 それが出る

大学教員のためのルーブリック評価入門 (高等教育シリーズ)

大学教員のためのルーブリック評価入門 (高等教育シリーズ)

大学教員のための授業方法とデザイン (高等教育シリーズ)

大学教員のための授業方法とデザイン (高等教育シリーズ)

東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week5「もっと使えるシラバスを書こう」メモ

インタラクティブティーチング」week5は年内に視聴を終えてあったのですがまとめきれず、記事にするのが年明けになりました。(でももう既にweek6が始まっていて、こちらのテスト〆切は1/11です。何だか自転車操業的な…)

week5のテーマは「もっと使えるシラバスを書こう」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

シラバスは自分が学部生だったころはきちんと意識したことがなかった(「講座概要」程度のものしかなかったような記憶)ので、今はここまで重要なツールになっているのかという点にまず驚いた。

シラバスの項目などは企業研修とも共通するものが多く、目的と目標の違いやそこに使われる用語、構造の可視化など実務で参考に出来る部分が多かった。

●「評価についての留意事項(目標を評価する、評価対象は測定可能なものとする等)」は、企業研修では受講生に対する評価という意味合いよりも講座そのものを評価するのに当たって事前に決めておくべき項目を設定するのに役立ちそうだと感じた。

●スキル編の学生の「リアクションを生み出す」ために「目の動き→体の動き→手を挙げる→声を出させる」といった手順をふむ、というのは自分自身実際にやっており、なるほど理に適ったやり方だったのだと再確認できた。(「逆回し演技」は少々くどい感じがしたが)

●ストーリー編のお二人の先生の話は(これまでのストーリー編もそうだったが)「大学教育とは何か」「大学とはどういう場なのか、どういう場であるべきなのか」というそれぞれの先生の哲学が伝わる、非常に興味深い内容だった。またお二人とも授業の始めで「この授業はこういう考え方でやる」というグラウンドルールをきっちり明示し、学生に「学習者が自らの学びに対して責任を持つ」「そのために教員は全面的に支援する」ということを伝えていることも重要であると感じた。

●ゴチェフスキ先生の「知識はGoogleで調べたらわかる。音楽史でなぜこの作曲家が重要なのか、出てくる出てこないということをどういう基準で誰が決めたか、そういうことを考えるのが大学」という言葉が特に印象的だった。また1年をかけて実施する他大学の学生を交えた授業もいかにも「大学ならでは」の知的価値にあふれたものになっていると感じた。

●山邉先生の言葉で「自分がよかれと思うことを学習者に押しつけるのでなく、目の前の学習者がそれぞれの文脈でどういった学びを必要としているかを丁寧に読み取って、そこを支援していくという意味でのプロフェッショナリズムを発揮するといい」というのは、学校教育のみならず企業研修でも同じことが言えると思った。

●次回Week6は「学びを促す評価」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

                                  • -

5-1. イントロ

5-2. ナレッジ(1)もっとある!シラバスの役割

大阪大学教育学習支援センター准教授 佐藤浩章先生
http://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/org-ja-ja/sato

目的
学生の学習を促進するためにもっと使えるシラバスの書き方を学習する

到達目標
1)シラバスの定義と多様な役割を説明できる
2)適切に目的と目標を設定できる
3)効果的にスケジュールをデザインできる
4)グラフィック・シラバスの意義と活用方法を説明できる
5)適切に評価方法を書ける

1.シラバスとは何か?

定義
各授業科目の詳細な授業計画(中略)
学生が各授業科目の準備学習等を進めるための基本となるもの。また、学生が講義の履修を決める際の資料になるとともに、教員相互の授業内容の調整、学生による授業評価等にも使われる。
(文部科学省答申用語集, 2008, p.4)

アメリカでは、教員と学生の契約書とされている例もある。
授業内容の概要を総覧する資料(いわゆるコース・カタログ)とは異なり、科目の到達目標や学生の学修内容、準備学修の内容、成績評価の方法・基準の明示が求められる。

役割
(主として学生)
1. 授業選択ガイド
2. 契約書
3. 学習効果を高める教材
4. 教員と学生の関係作りのツール
5. 授業の雰囲気を伝える/知る

(主として教員)
6. 授業全体をデザインする
7. カリキュラム全体に一貫性を持たせる
8. 教育業績のエビデンス

※2 4 5 は学生・教員共通

シラバスは「0回目の授業」
ぜひ取ってみたいな、と思わせるようなシラバス

2.シラバスの項目例

○授業題目 キーワード ○目的 ○到達目標 授業概要 学習方法 ○スケジュール 時間外学習に関わる情報 受講条件 ○成績評価法 受講のルール 教科書 参考書 教科書、参考書に関する補足情報 事前学習に関する情報 オフィスアワー 連絡先 参照ホームページ

シラバスの役割
選択ガイド以外の多様な役割

効果的な作成と活用により学生の学習をもっと促進することが出来る

5-3. ナレッジ(2)目的と目標の設定

適切に目的と目標を設定できる

1.目的とは
この授業の存在意義
学生からの「なぜこれを学ばなければならないのか?」という問いに対する答え

2.目的の書き方

・学生を主語にする
・「〜するために」を入れると良い
・総括的な動詞を用いて表現する

「授業の目的」に使用する動詞の例

修得する 身につける 理解する 創造する 位置付ける 価値を認める 知る 認識する など

3.目標とは
・授業終了後に学生に出来るようになっていてほしい能力(Goal, Learning Outcomes)
・目的を具体化したもの 対応関係
・観察可能な行動(動詞)で記述
・成績評価と一致させる
・具体的な記述で学生の自学自習を促す

4.目標の書き方
・学生を主語にする
・ひとつの文章にひとつの目標 箇条書き
・評価基準を明示
・現実的かつチャレンジングなレベルに設定→ジャンプすれば届く距離
・知識(認知的領域) スキル(精神的領域) 態度(情動的領域)に分けて書く

認知的領域(Cognitive Domain)
精神的領域(Psychomotor Domain)
情動的領域(Affective Domain)

使う動詞(認知的領域)
列記(挙)する 延べる 推論する 記述する 説明する 分類する 比較する 対比する 類別する 弁(識)別する 関係付ける 予測する 具体的に述べる 結論する 同(特)定する 公式化する 一般化する 指摘する 選択する 使用する 応用する 適用する など
(日本医学教育学会,2007)

使う動詞(精神的領域)
測定する 実施する 模倣する 熟練する 工夫する 触れる 行う 調べる 操作する 挿入する 準備する 手術する 視診する 聴診する 触診する 打診する など
(日本医学教育学会,2007)

使う動詞(情動的領域)
協調する 配慮する 参加する コミュニケートする 討議する 尋ねる 示す 見せる 助ける 感じる 行う 相談する 寄与する 反応する 応える など

まとめ
目的とは?→授業の存在意義
目標とは?→授業終了後に学生にできるようになってほしい能力

※参考:ブルームのタキソノミー(分類学
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/2Block/04/04-1_text.html

教育の目標とする領域を「あたま、こころ、からだ」 の3領域(認知・情意・精神運動領域と呼ぶ。KSA (Knowledge, Skill, Attitude)と略されて用いられる場合もある)


5-4. ナレッジ(3)授業スケジュールのデザイン

1.授業概要・スケジュールの書き方
<授業概要>
授業で扱う内容を大まかに記述する

<スケジュール>
・日付、各回の内容の概要、課題などの情報を示す
・授業時間外の学習/課題がある場合は明記(学習の自己管理能力を育成する)
・表を使うと見やすい
・複数回をまとめて区切るユニット制は有効

2.スケジュールに関するFAQ
・毎回計画が立てられない場合はどうするの?
→可能な限り具体的に記述
ex.第2-5回 学生のニーズに合ったテーマでグループディスカッション

シラバスどおりの授業が良い授業なの?
→原則変更はしない(シラバスは契約書でもある)
変更時は通知を徹底/差替え版を配布
・スケジュールをデザインするにあたって最も重要なことは?
→目的・目標が達成され、学生の学びが促されるかどうか

まとめ
良いスケジュールとは?
・各回の内容が具体的に書かれている
・内容が体系的である
・他科目と調整されている
・学生の現状を把握している
・学生の効果的学習を促進している

5-5. ナレッジ(4)授業の構造の可視化

1.授業の構造の可視化の意義

初学者と熟達者の知識構造

初学者→知識少ない バラバラ
熟達者→知識多い 構造化

知識はあってもどれが適用されるのかなかなかわかってくれない→初学者が陥る問題

2.テキスト・シラバスの限界

大学教員(熟達者) (テキスト) 学生(初学者)

構造化された知 → 脱構造化された知 → 構造化されない知

構造化された知をテキスト・シラバスは伝えにくい

大学教員(熟達者) (グラフィック・シラバス) 学生(初学者)

構造化された知 → 構造化された知 → 構造化された知

3.グラフィック・シラバスとは?

・授業における重要概念間の系統性・関係性を図示化したフローチャートダイヤグラム(Nilson, 2007:06)
・コンセプト・マップ(概念地図法)と呼ばれている学習指導法(Navak, 1996)をシラバスに応用したもの。知の構造を分かりやすく示すことができる。
・知識の組織化・構造化に有効

学習者の注意喚起、概念理解促進、記憶の定着のために有効

5.グラフィック・シラバスの活用方法

・初回ならびに毎回の授業で提示する(コースの俯瞰)
・授業の単元が進むごとに要素を付け足していき、最終回で全体像を完成させる
・授業の中間段階、あるいは最終段階で学生に作成させる(学習成果の確認)
・(教員にとって)コースデザインのツール

5-6. ナレッジ(5)評価方法の書き方

1.なぜ評価情報を書くのか?

「第二十五条の二  大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
2  大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする。 」(大学設置基準)

「学習に最も強い影響を与えるのは評価方法であろう。試験の質問項目・レポートの課題に何を選ぶのかということが、学生の学習に強い影響を与える」
(Entwistle, 1996, p.97)

2.評価に関わる情報の書き方

明記すること
・成績を評価する方法
・成績評価の配分割合
・評価の採点基準
・テストやレポートの内容、提出期限

具体的に書けば書くほど学生はやるべきことが明確になる

評価についての留意事項
・目標を評価する(原則全て)
・評価対象は測定可能なものとする
・具体的に書く(評価情報が学習を制御する)
・目標に対応した方法を選択する

3.目標に対応した評価方法

<認知的領域(知識)>
知識・理解→ 客観試験、論述試験
思考・判断→ 口頭試験、論文、レポート

<精神運動的領域(スキル)>
運動技能・操作技能→ 定地試験、シミュレーション、観察試験
コミュニケーション→ 口頭試験、観察試験、相互評価
アカデミックスキル→ 論文、レポート

<情動的領域(態度)>
態度→ 実地試験、シミュレーション、観察評価
意欲・関心→ レポート、ポートフォリオ、相互評価、心理テスト

4.評価情報の例

出席点は評価の対象にしないところが増えている
受講態度 対応する目標ない

5-7. ナレッジ(6)ディスカッション:目標を設定してみよう

「ダメな目標」を改善

進め方:目標の書き直し
1)この目標の問題点をできるだけ書き出しましょう(1分)
2)グループ内でシェアしましょう。白紙の上部に問題点を張り付け、同じものを重ねます(3分)
3)グループ内で目標の改善案について議論し、改善された目標を白紙の下部に書きます(10分)
4)グループごとに発表(1チーム1分)

「理解する」は目標ではNGワード

5-8. 振り返り
5-9. スキル:交流編2:リアクションを生み出すために

授業の導入部で学生のリアクションを引き出すためのウォームアップをしていくことが重要

しぐさ
目線を動かすようなジェスチャー

動き
学生の意識を誘導する動き

挙手
段階的に聞いていく
教員が手を挙げて動きを誘発する

声を出させる
「せーの」
ウォーミングアップになる

目の動き→体の動き→手を挙げる→声を出させる

5-10. ストーリー(1)大学教育と大学生の日独比較

東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻
ゴチェフスキ ヘルマン(ゴチェフスキ ヘルマン) GOTTSCHEWSKI Hermann [1963] / 准教授 Associate Professor
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/research/faculty/list/ics/f002246.html

専門:音楽学

ドイツのアシスタント ゼミはできる
講義は教授資格を持った人
ただし講義は単位にはならない
聞きたい人しか来ない
自分の最初の講義は一人しか残らなかった
学生は成績がつかないけど先生は成績がつく
25年間同じ授業をする先生もいた
日本の大学で一番びっくりしたのが、講義をやって試験をやらないといけないこと

<ドイツと比べて>
学生が若い
ドイツは高校卒業するのが19〜20才 実際大学に入るのは22〜23才

日本では何か学べるということを期待している
学部生に教えるときまず最初に大学は学ぶところではないということを言う
大学では学び方を勉強する

音楽史が存在してそれを学ぶことができるというのは間違った考え方
私たち学者は音楽史を作っている
知識はGoogleで調べたらわかる
音楽史でなぜこの作曲家が重要なのか 出てくる出てこない どういう基準で誰が決めたか そういうことを考えるのが大学

<アジアの大学と東大の学生が交流しながらやる授業>
韓国 ソウル大学 延世大学
台湾 国立大学

テーマ:リスニング 歴史的 文化的 どのように変わってくるか

準備1年
テーマに対してアブストラクトを出してもらう→優秀なアブストラクトのみ受け入れる
メーリングリストを作る→自己紹介
アブストラクトをシェア 書き直す
近いテーマでグループ (日韓台混ぜる)
ゼミが始まる1カ月前にフルペーパーを英語で出してもらう
全ての他の16人の学生が書いたペーパーを読む
質問する義務 自分のグループに入ってる人には2〜3個用意
東京でグループ内ディスカッション 一人45分

学生の感想「また参加したい」 4回中4回全部参加しているリピーターがいる

<メッセージ>
自分が本当に興味があることをやって下さい
自分が本当に興味を持たないと人も興味を持たない
そういうものがなければ、大学の教員になるという希望が間違っているかもしれない


5-11. ストーリー(2)学生とともに創る授業

教養学部 山邉 昭則

専門→教育学(科学史から)

<学部の授業>
アカデミックスキルズ 初年次教育
学期ごとにテーマを変えてアクティブ・ラーニング

ex.国際問題について
問題発掘 所在の精査 解決法
problem based learning(問題解決を最終的なゴールとする)

研究倫理 サイエンスコミュニケーション
project based learning
社会発信をしてインタラクティブに社会の方々の声も引き取ることができるような出題

Q.グループ学習中先生は何を?
できるだけ観察(介入は2割以下がいいという研究結果もある)

プロとして適切に介入すべきところは介入

学期の最初に大きな枠組みは何度か繰り返し示して、ここからはみ出るような議論はここではしません、とあらかじめ明示

枠組みの中であればどういうトピック、テーマ設定でもいい
ある程度の自由度 各班のバランス
週ごとに冒頭に前回までの取り組みを共有

<学部生に教えるコツ>
学習者中心の教育を徹底的に意識する
学習者が自らの学びに対して責任を持つということを口頭で言う
最大限サポートする

ダイバーシティ
科類、学年、男女をバランス良く配分

別の価値観の人たちと出会って学び合うことで新しい自分の価値観を作ることができた

コンフリクトを含めて学びであることをきちんと学習者に伝える

こういうやり方は10年ほど前から考えてた
イギリスの医療者の教育「インタープロフェッショナルエデュケーション」
従来は縦割り チーム医療とのギャップ
それぞれの学科の子が学びの初期段階で同じテーブルでひとつの症例に対して専門性を活かした意見を言い合って問題解決

初期段階で自分と学術的な思考が異なる人たちといかに連携して問題解決に当たるかということのベースレジデンスを作る上で重要

<メッセージ>
いろんなつまづきがある
そういった時には、自分自身が学習者中心の授業を、教育を、果たしてできているのかということを自らに問うことで明らかになる課題、発展的に開発すべき課題、つまづきの理由などが明らかになる

自分がよかれと思うことを学習者に押しつけるのでなく、目の前の学習者がそれぞれの文脈でどういった学びを必要としているかを丁寧に読み取って、そこを支援していくという意味でのプロフェッショナリズムを発揮するといいのではないか

教育者も学習者によって成長させていただいている

※参考
新しい時代のリベラルアーツ(東京大学科学技術インタープリター養成プログラム:連載エッセイ『インタープリターズ・バイブル』)

大学教員のための授業方法とデザイン (高等教育シリーズ)

大学教員のための授業方法とデザイン (高等教育シリーズ)

東大駒場連続講義 知の遠近法 (講談社選書メチエ)

東大駒場連続講義 知の遠近法 (講談社選書メチエ)

東大MOOC「インタラクティブ・ティーチング」week4「90分の授業をデザインしよう」メモ

インタラクティブティーチング」ようやくweek4を終えてまとめることができました。(でももう既にweek5が始まっています。年内最後のテスト〆切は12/28です…)

week4のテーマは「90分の授業をデザインしよう」です。

以下、まず気になったポイントと感想を。

●今回の「クラスデザイン」の内容については、ADDIEモデルを始めとしてなじみのある内容が多く、おさらいと理論的背景の確認が主となった。

●ADDIEモデルにしろガニエの9教授事象にしろ、基本を押さえつつセッションごとに「このセッションは何のためにやっているのか」をきちんと意識した上でデザインし、運営することが大事だと思った。

●「クラスデザインシート」も弊社の場合はIDシートが既に利用されており、企業研修に最適化されているためこちらを活用して行ければいいと思う。

●スキルセッションは「学生を巻き込んで授業をしやすい空間 リラックスした空間をなるべく早く作る」ということをどう実施していくかというものだった。このあたり、講師経験者はいろんな自分なりのノウハウを持っていると思われ、それをお互いもっと共有してもいいかもしれないと思った。

●ストーリーセッションのお二人(斎藤先生、苅谷先生)はどちらもとても興味深いインタビューだった。

●斎藤先生が授業で使われたという「新渡戸稲造の「武士道」と武士道に関連する映像」「鈴木大拙の英文と鈴木大拙が実際に英語で説明してる映像」はどういう風に相互作用を持たせたデザインになっているか、興味深く感じたので、実際のものを見てみたいと思った。

●斎藤先生の英語教育に関するコメントで

・経済界の「グローバルな人材を作れ」という要請に対しては、現場では基礎からしっかり教えていかなければいけない
・単純な文法でもいいから言いたいことを言っていくということでは非常にレベルの低いことしか言えない
・だからきちっと文法を教える必要がある
・文法を気にしすぎるから話せないのではなく、気にならなくなるまで徹底的にやってないから話せない

といったあたりは、私自身英文科出身者として非常に納得のいくものであった。
流暢なスピーキングだけに重きを置くだけでは不十分で、高い知的レベルのやりとりをするには「とにかく話せばいい」レベルの教育とは違うのだということを個人的に常々感じていたのでとても腹落ちする内容だった。

●苅谷先生の言われていた「少なくとも目の前にいる学生に対して、教師の側が能動的に働きかける特権を持っている」という言葉、そして「とば口・入り口まではとにかく連れてきてあげる為には教師は工夫が必要」という言葉がとても印象的だった。

●苅谷先生は欧州と日本の「大学」の違いについては下記インタビューでも語られている。こちらを併せて読むと、中で話されていたチュートリアルについて背景含めてよりイメージしやすくなると思う。

大学はなんのためにあるのか/オックスフォード大・苅谷剛彦教授インタビュー(朝日新聞 GLOBE)

●苅谷先生が「大学にしかできないこと」として、「ある概念がどう現実と対応しているか いろんな現実の経験則の中からいかにしてその中から規則性・パターンを見出すか」「抽象化と具象化のいったりきたり」ということを挙げられていて、大学教員を「いかに知的な能力の形成につなげるか伝えられるポジション」と定義されていたのも非常に印象的だった。この「抽象化と具象化のいったりきたり」は大学の中だけで役立つものではなく、むしろ私たちが企業活動の中でより質の高い仕事をしていくためにも大事な知的能力であり、「抽象化と具象化のいったりきたり」をきちんと叩き込まれているのならば大学で学んだことは社会では役立たないなんてことは決してないのだと思う。
(このあたりについて中原先生がご自身のブログ記事で、企業系の話題にともすると蔓延する「経験至上主義」的論調、「現場原理主義的言説」について「そこで求められるのは「抽象化の知性」です」と指摘されていることにも全く同感である)

●私が苅谷先生を知ったのは2001年に出版された「階層化日本と教育危機」という書籍で、この中で先生は「不平等再生産」「意欲格差社会」というキーワードを使いセンセーションを巻き起こしました。ご興味ある方はまずはこちらの解説をお読みいただければ。

論争ウオッチング 苅谷剛彦著『階層化日本と教育危機』(2001年、有信堂高文社)(RIETI)

●次回Week5は「90分の授業をデザインしよう」です。

以下動画を見ながら取ったメモです。(主に羅列で長いです。すみません)

                                  • -

4-1. イントロ
4-2. ナレッジ(1)クラスデザインの意義とADDIEモデル(1)

目的
学びを深める授業実施に向けてのデザインと意義と方法を理解する

到達目標
1) クラスデザインの意義を説明できる
2) ADDIEモデルを使いデザインの流れを説明できる
3) クラス構成の基本型をガニエの9教授事象を基礎として説明できる
4) デザインシートを使い授業をデザインできる

1.デザインの意義

・授業時間の効率的利用
・教授方法のの計画的利用
・授業改善を行いやすい
・知識・スキルの共有のしやすさ

2.ADDIEモデル

授業設計のためのモデルのひとつ

各要素

分析 Analysis → 設計 Design → 開発 Development → 実施 Implementation → 評価 Evaluation →分析に戻る

◎分析(Analysis)
・クラスデザインに必要な要素の特定
・目標の設定

要素の特定
・学習者の特定や前提知識
・教える内容
・教室環境

目標の設定
・そのクラスで扱う内容を網羅すること
・達成できたかどうかを確認できること

◎設計(Design)
教授内容の設計

設計の内容
・教授方法の質と量
・教授の方法
・ワーク/課題
・構成
・タイムライン

設計方法として
・ガニエの9教授事象
・クラスデザインシート

4-3. ナレッジ(2)クラスデザインの意義とADDIEモデル(2)

◎開発(Development)
デザインにしたがい、実際に使用する教材などを準備する、作成する

提示資料
・プレゼンテーションソフト
・板書用ノート

配布物
参考資料、模型、実物

◎実施(Implementation)
実際の授業の実施

留意点
・デリバリー
・学生の理解度の逐次確認
・柔軟な方針変更

◎評価(Evaluation)
・一連の分析・デザイン・開発・実施の検証
各段階における逐次評価
次につなげる評価

・評価の方法(評価者)
自己評価
学生評価
三者評価

CLOSE THE LOOP

4-4. ナレッジ(3)クラス構成の基本型

・クラス構成の基本型
クラス構成の基本形をガニエの9教授事象を使って説明できる

導入 つかみ、復習、概観 5〜20分

展開 本論1 本論2 ワーク など 50〜80分

まとめ 総括、発展、課題 5〜20分

◎9教授事象とは
・「授業設計理論の父」学習心理学者ガニエが提案
・教員が学習者にできる働きかけとしての9つの観点

1 学習者の注意を喚起する
2 学習目標を知らせる
3 前提条件を確認する
4 新しい事項を提示する

5 学習の指針を与える
6 練習の機会を設ける
7 フィードバックをする

8 学習の成果を評価する
9 学習の保持と転移を促す

◎導入:新しい学習への準備 1〜3
好奇心、関心を呼ぶ
集中力、意欲、期待感を高める

既知の知識、技能と結びつける

◎展開:学習 4〜7

既有事項との関連、類似性に留意しつつ

新規事項の意味づけ、他事項との関連性を意識しつつ

事項の定着
取り出し方と応用

完成、定着へのサポート

◎まとめ:確認と定着・応用 8〜9

新しい事項が定着したかどうかの確認

発展の機会の意識
他の学習への応用

※「ガニエの9教授事象」参考リンク

https://www.isrf.jp/home/column/ando/63_20140818.asp

http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/ksuzuki/resume/books/1995rtv/rtv02.html

※成長するティップス先生 第4章日々の授業を組み立てる
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/basics/design/index.html

4-5. ナレッジ(4)デザインシートの利用

(1)クラスデザインシート作成の意義
・授業計画の構造的可視化
・授業時間の効率的利用
・教授方法の計画的活用
・授業改善を行いやすい
・知識・スキルの共有のしやすさ

(2)シートの構成
コンテンツがリズム良く配置されていく(ガニエの9教授事象を参考に)

◎項目
名前
基本情報
学年
科目名
受講者数
教室

このクラスのタイトル(トピック,テーマ)

 第  回

このクラスの目的
このクラスの達成目標
対応する評価方法

スケジュール
経過時間 所要時間 構成 内容 詳細 方法 学生の活動 使用資料
その他

4-6. ナレッジ(5)ディスカッション:クラス・デザイン演習
課題:クラスのデザイン
WEEK2 で学んだジグソー法について,授業をデザインすることを考えます。以下の
・目的・目標に合った授業をデザインしてみましょう。
・目的 ジグソー法を理解し利用できる
・目標 ジグソー法の特徴を説明できる ジグソー法を利用できる
あなたなら「導入」「展開」「まとめ」にどのような内容を盛り込みますか。以下の枠の中にそれぞれ書き込んでみましょう。必要に応じてガニエの9教授事象を参照してみましょう。
さらには、発展課題として「授業デザインシート」を使ってジグソー法についての授業デザインを完成させてみましょう

手続き:
・各自「導入」「展開」「まとめ」のアイデアを出す
・グループでアイデアを交換し、ブラッシュアップ
・各事項ごとに全体でシェア

※つめこみがちになるけど、どこを削いでいくのか?というプロセスをやってもらうといい

4-7. 振り返り

4-8. スキル:交流編1:まずは自分の緊張をほぐす

【寸劇によるデモンストレーション&ディスカッション】

前にいて反応がいい学生
・あいさつでもう目が合ってる
・うなずきが多い
→大切にする

リーダータイプ・ムードメイカ
・周りの人と感想などをお話ししている
→自分の意見を延べてもらう

ちょっとアンチな空気の人
→最初のうちに声をかける
 なるべく答えやすいクイズにして答を引き出してあげる
  場に参加しやすい空気を作る

こうすることで全員が参加しなければ講座は成立しない、というルール作り

学生を巻き込んで授業をしやすい空間 リラックスした空間をなるべく早く作る

4-9. ストーリー(1) 目で見て、耳で聞く英語教育

東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 斎藤 兆史 / Saito Yoshifumi (教授)

http://gamp.c.u-tokyo.ac.jp/staff/p/saito.html

http://www.p.u-tokyo.ac.jp/gs/c9/staff

元々英語文体論
文学のテキストをきちっと言語学的に読む
→英語教育に応用

教養課程 英語Ⅰ、英語Ⅱ
英語Ⅰ→共通の教科 大人数
英語Ⅱ→comprehension
読み教材と視聴覚教材を一緒に使って英語を教える
ex.
新渡戸稲造の「武士道」と武士道に関連する映像
鈴木大拙の英文と鈴木大拙が実際に英語で説明してる映像

30分程度
5〜10分 30分たって 5〜10分

視聴覚教材の役割
・聞き取りの教材
・字幕で自分の理解度の確認

NHK放送大学で自分がやった放送を使うことも

◎最近の中高の英語教育について
理念と現実の乖離

コミュニティヴな英語運用能力が重要とされてきている
でも現場が変わらない 先生方は混乱

経済界 グローバルな人材を作れ
現場で何をするか→基礎からしっかり教えていかなければいけない

社会の要請と現場で出来ることとの間の距離は非常に大きい

単純な文法でもいいから言いたいことを言っていく
→非常にレベルの低いことしか言えない

だからきちっと文法を教える必要がある

文法を気にしすぎるから話せないのではなく、気にならなくなるまで徹底的にやってないから話せない

日本語と英語はすごく言語的に距離があるためになかなか習得が難しい
大学教育でも昔のような文法・読解というのは敬遠される傾向

一律にとにかく英語で教えなさいというのが指導要領に盛り込まれてしまった
→それはしばりすぎ

◎メッセージ
最近特に授業のやり方や教授法に重点が置かれる
ややもすると教授する内容に対する理解がタブー視され、英語の先生の英語力は問われない傾向がある

英語の先生になるという人はまずは英語を勉強してください
学習者の手本になるような英語を話す訓練をしてみてください


4-10. ストーリー(2) 教え方・学び方の日米英比較

オックスフォード大学 苅谷剛彦教授
http://www.sant.ox.ac.uk/people/kariya.html

◎Oxford大での教え方

チュートリアルという個別の指導法
基本一対一 毎週必ずこれだけのものを読みなさい
10枚くらいのエッセー 議論を書き事前に先生に渡しておいてフェイストゥフェイスで議論
だいたい1時間くらい
Oxfordのフルタイム学生は1日8時間 週5日勉強するのが当たり前

お互いがいかにクリエイティブにあるいは知識に対して新しい価値をどう付け加えたかということについてのディスカッション

いかにしてその知識を使ってある議論を組み立てるか、ということをやる
すごく抽象的な高度なレベルの問題が出される
いかにユニークでオリジナルに、読んだものを使いながらしかもより美しい文章で書かなきゃいけない

アメリカと日本の教育の違い

日本人のコミュニケーションスタイルとアメリカ型のコミュニケーションスタイルが違う
教える場面 学ぶ場面に表れている
アメリカ型をなかなか真似しようとしてもできない

ノローグ型(日本)とディスカッション型(アメリカ)

◎授業の工夫 なぜそのようなやり方で?

とば口・入り口まではとにかく連れてきてあげる為には教師は工夫が必要

◎大学で教える為のスキルはどのように教えられるか

ボランティアで院生向けに教えるスキルを伝えるためのワークショップをやっていた
大人数講義の注意点、シラバスの書き方、成績評価等

実際にやってる人の経験談をもとにしてディスカッション

TAとお昼を食べながら大学教えるってのはこういうことなんだと語ってた
自分のやり方を見せると同時に楽屋話・種明かしをすることで院生たちの教える事に対する意識とノウハウを伝えようとした

◎メッセージ
少なくとも目の前にいる学生に対して、教師の側が能動的に働きかける特権を持っている

大学にしかできないこと

ある概念がどう現実と対応しているか いろんな現実の経験則の中からいかにしてその中から規則性・パターンを見出すか
帰納と演繹という頭の働かせ方
抽象化と具象化のいったりきたり
いかに知的な能力の形成につなげるか伝えられるポジション


※インタビューの中で出てきた「衝撃的な授業内容」について、中原先生がブログで書かれていた記事がありますのでご参考に引用します。

抽象化と具象化のトレーニング!? : 大学にしかできないことは何か? 苅谷剛彦先生との対談をとおして

苅谷先生の授業で、僕が、もう「脳に刻み込まれるほどのレベル」で、20年たっても忘れられない授業の一コマがあります。
 それは、ピエール・ブルデューの「再生産」の中の「象徴的暴力」の概念を教える授業です。人文社会科学の研究において、このあまりにも有名な「再生産」の第一テーゼ、すなわち「教育の暴力性」を教えるために、苅谷先生は何をなさったか。

 それは、下記のあまりにも難解な「再生産」の第一テーゼを、英語で、しかも、自ら突然教室にあらわれ、自ら「苅谷剛彦教授」であると名乗ることなく、これを黒板に書き付けることでした。

「およそ象徴的暴力を行使する力、すなわちさまざまな意味を押しつけ、しかも自らの力の根底にある力関係をおおい隠すことで、それらの意味を正統であるとして押しつけるにいたる力は、そうした力関係のうえに、それ固有の力、すなわち固有に象徴的な力を付けくわえる。」
ブルデュー・パスロン「再生産」)

 誰ともしらぬ人(単なるオッサンかもしれぬ)が、勝手に教壇にあらわれ、この難解なテーゼを、しかも英語で、黒板に書き付けたとき、100人以上いる東大の受講生のあいだに起こった現象とは何であったか? それこそが、「象徴的暴力」の概念の意味を考え得るきっかけなのです。
 そこにあわられた現象は・・・・何ら「根拠なきテーゼ」ーしかも意味のわからない難解なものーを、自らのノートに静かに書き留める、という東大生の集団的行為でした。

 そして、この一斉に発露した根拠なき集団的行為こそが、「象徴的行為」を考え得る最初のきっかけになったことなのです。苅谷先生は問いました。

 君らさ、僕のこと、誰だと思った?
 何も言ってないよね? 僕、教壇に立っていただけれども。
 僕、教師だとも、ひと言も言ってないよね?
 誰も、名乗っていないよね?

 でも、君ら、ノートに書いたよね?
 なぜ、君らは、誰かわからぬ人が、勝手に英語で板書した、意味のわからないテーゼを、自分のノートに書こうと思ったの?
 なんで? 
 そこにはどんな力が蠢いてた???

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